問2簡単
静力学平衡の状態にある乾燥空気の気層において、上面と下面の高度差を Δz、気圧差を Δp、平均密度を ρ、重力加速度を g とすると Δp=-ρgΔz の関係が成り立つ。ここで Δz=100 m、気層の気圧の平均値を 500 hPa、平均気温を−23℃としたときの Δp の絶対値として適切なものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。ただし、g=10 m s-2、乾燥空気の気体定数は 287 J K-1kg-1 とする。
本問は、静力学平衡の式を使って、ある高度差に対する気圧差を求める計算問題です。
使う式そのものは問題文に示されているので、あとは数値を入れるだけのように見えます。
ところが、式の中にある密度 \(\rho\) の値だけが与えられておらず、そこをどう埋めるかが本問のポイントになります。
静力学平衡(予備知識)
静力学平衡 とは、大気にはたらく上向きの気圧傾度力と下向きの重力がつり合っている状態のことです。

上図のつり合いを式で表したものが、問題文に与えられている次の関係です。
\(\Delta p = -\rho g \Delta z\)
\(\Delta z\) は上面と下面の高度差、\(\Delta p\) は上面と下面の気圧差、\(\rho\) は気層の平均密度、\(g\) は重力加速度を表しています。
右辺の マイナス は、上へいくほど気圧が下がることを表しています。
例えば、高度差 \(\Delta z\) を上向きに 100 m とると、その分だけ気圧は低くなるので、気圧差 \(\Delta p\) はマイナスの値になります。
てるらんマイナスがついていると、答えもマイナスで書かないといけないのかな?



本問で聞かれているのは \(\Delta p\) の絶対値だから、符号は気にしなくて大丈夫だよ!マイナスは「上に行けば気圧が下がる」という向きの情報を持っているだけなんだ!
気体の状態方程式(予備知識)
問題文で与えられているのは、高度差 \(\Delta z\)、気圧の平均値、平均気温、重力加速度 \(g\)、そして乾燥空気の気体定数 \(R\) です。
つまり、\(\Delta p = -\rho g \Delta z\) の右辺のうち、密度 \(\rho\) だけが与えられていません。
そこで登場するのが 気体の状態方程式 です。
\(p = \rho R T\)
この式は、気圧 \(p\)・密度 \(\rho\)・気温 \(T\) のあいだに成り立つ関係を表しています。
簡単にいうと、気圧と気温さえ分かれば、密度は計算で出せるということです。
本問の解説:気温と気圧の単位をそろえる
(問題)静力学平衡の状態にある乾燥空気の気層において、上面と下面の高度差を Δz、気圧差を Δp、平均密度を ρ、重力加速度を g とすると Δp=-ρgΔz の関係が成り立つ。ここで Δz=100 m、気層の気圧の平均値を 500 hPa、平均気温を−23℃としたときの Δp の絶対値として適切なものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。ただし、g=10 m s-2、乾燥空気の気体定数は 287 J K-1kg-1 とする。
→ 答えは 7.0 hPa です。
計算に入る前に、気温の単位を直しておきます。
状態方程式 \(p = \rho R T\) の \(T\) は、絶対温度(単位は K)で入れる決まりになっています。
問題文の平均気温は −23℃ ですから、273 を足して K に直します。
\(T = 273 + (-23) = 250\ \mathrm{K}\)
ここを −23℃ のまま計算してしまうと、密度がまったく違う値になり、選択肢のどれにも当てはまらなくなります。



うっかり℃のまま入れちゃいそうで怖いよ…



気体定数の単位に K が入っているのが目印だよ!単位に K があったら、気温も K でそろえる、と覚えておこう!
気圧の単位も確認しておきましょう。
問題文の 500 hPa は、1hPa = 100 Pa なので、Pa に直すと 50000 Pa です。
では、ここから答えを求めていきます。
解き方1:密度を先に求める
まずは、状態方程式 \(p = \rho R T\) を密度について書き直します。
\(\displaystyle \rho = \frac{p}{RT}\)
ここに、気圧 50000 Pa、気体定数 287 J K-1kg-1、気温 250 K を入れます。
\(\displaystyle \rho = \frac{50000}{287 \times 250}\)
\(\approx 0.70\ \mathrm{kg/m^3}\)
これで、足りなかった密度がそろいました。
あとは、静力学平衡の式に \(\rho = 0.70\ \mathrm{kg/m^3}\)、\(g = 10\ \mathrm{m\ s^{-2}}\)、\(\Delta z = 100\ \mathrm{m}\) を入れるだけです。
\(|\Delta p| = \rho g \Delta z\)
\(= 0.70 \times 10 \times 100 = 700\ \mathrm{Pa}\)
最後に、選択肢の単位に合わせて hPa へ戻すと、700 Pa = 7.0 hPa となります。



与えられていない値は、状態方程式で作ってしまえばいいんだね!
解き方2:密度を消去する
密度は、答えを出すための途中の値でしかありません。
そこで、\(\rho = \displaystyle\frac{p}{RT}\) を静力学平衡の式にそのまま代入して、\(\rho\) を消してしまう方法もあります。
\(\displaystyle \Delta p = -\rho g \Delta z = -\frac{p\,g\,\Delta z}{RT}\)
この形の便利なところは、気圧 \(p\) を hPa のまま入れると、答えもそのまま hPa で出てくる点です。
実際に、500 hPa をそのまま代入してみましょう。
\(\displaystyle |\Delta p| = \frac{500 \times 10 \times 100}{287 \times 250}\)
\(\approx 7.0\ \mathrm{hPa}\)
左辺の \(\Delta p\) と右辺の \(p\) は、どちらも気圧です。
そのため、\(p\) を hPa で入れれば \(\Delta p\) も hPa、Pa で入れれば \(\Delta p\) も Pa という形で、入れた単位がそのまま答えの単位になります。



この形なら、Pa に直したり hPa に戻したりしなくていいんだね!



単位の直し忘れは試験でいちばん多いミスだから、この形を覚えておくと安心だよ!ただし気温だけは、どちらの解き方でも K にそろえる必要があるからね!
どちらの解き方でも、\(\Delta p\) の絶対値は 7.0 hPa になります。
なお、この結果は「500 hPa 付近では、100 m 上がるごとに気圧が約 7 hPa 下がる」という目安としても使えますので、覚えておくと役に立つかもしれません。
以上より、本問の解答は、7.0 hPa とする 3 となります。
書いてある場所:P43〜45(静力学平衡)
書いてある場所:P71〜74(静力学平衡)
書いてある場所:P50〜51(静水圧平衡(静力学平衡))
書いてある場所:P27(静力学平衡)
書いてある場所:P127〜128(静力学平衡)
大気の構造と流れ(気象庁ホームページ)
書いてある場所:「気温の鉛直分布から見た大気の構造」(上空の大気の重さと気圧・高度の関係)
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
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