【第65回】2026年1月試験(学科専門試験)問5(数値予報プロダクトの利用)

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問5簡単

気象庁の数値予報プロダクトの利用にあたって留意すべき事項について述べた次の文 (a) 〜 (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。

(a) 数値予報モデルで用いられている地形は、モデルの分解能に応じて実際の地形を平滑化しており、数値予報モデルにより予測される風や鉛直流の誤差の要因となっている。

(b) 数値予報モデルで用いられている物理過程のパラメタリゼーションは、それ自身が完全ではなく予測誤差の要因のひとつとなっている。

(c) 全球モデルとメソモデルでは、それぞれの水平解像度や積雲対流の取り扱いが異なることなどが、予測される降水表現の違いの要因となっている。

   





解説

本問は、気象庁の数値予報プロダクトを利用するにあたって留意すべき事項に関する問題です。

本問の解説:(a) について

(問題)数値予報モデルで用いられている地形は、モデルの分解能に応じて実際の地形を平滑化しており、数値予報モデルにより予測される風や鉛直流の誤差の要因となっている。

→ 答えは 正 です。

数値予報モデルでは、大気を格子状に区切り、それぞれの格子について気温や風などを計算します。

そのため、地形についても、格子ごとに標高の値を与えて計算する必要があります。

このとき、モデルで使用される地形(モデル地形)は、実際の地形をそのまま再現しているわけではありません。

モデルの分解能(格子間隔)に合わせて、実際の地形を平滑化して作られています。

つまり、格子間隔よりも小さな山や谷などの細かな起伏は表現できないため、ならされて、実際よりもなだらかな地形になるということです。

下図は、メソモデル(水平格子間隔5km)と局地モデル(水平格子間隔1km)のモデル地形を比較したものです。

メソモデルと局地モデルの地形
気象庁ホームページ「メソモデル・局地モデル」をもとに作成

上図を見ると、格子間隔が細かい局地モデルの方が、山や谷などの起伏をより細かく表現できていることが分かります。

逆にいえば、格子間隔が粗いモデルほど地形はよりなだらかになり、実際の地形との差が大きくなります。

ただし、格子間隔が1kmと細かい局地モデルでも、実際の地形にはさらに小さな起伏があるため、モデル地形と実際の地形を完全に一致させることはできません。

こうしたモデル地形と実際の地形の違いが、風や鉛直流の予測誤差の要因となるのです。

例えば、風が山にぶつかると空気が斜面に沿って持ち上げられたり、山を回り込むように風が流れたりします。

もし、モデル地形が実際の地形と異なっていれば、そこで生じる風や鉛直流も実際とは異なるものとして計算されてしまうのです。

下図は、モデル地形と実際の地形の違いによって生じる誤差の例です。

モデルと実際の地形の違い
気象庁「ガイダンスの解説」をもとに作成

例えば、地点Aでは、モデル地形はなだらかですが、実際の地形には急な斜面があります。

実際には、風がこの急な斜面に沿って流れることで空気が強く持ち上げられ、上昇流が強くなって雨が降りやすくなります。

しかし、モデルでは斜面がなだらかに表現されているため、空気の持ち上げが弱く計算され、実際よりも降水量が少なく予測されることがあります。

また、地点Bでは、モデル地形の標高が実際よりも高くなっています。

標高が高いほど一般に気温は低くなるため、モデルでは実際よりも気温が低く予測されることがあります。

このように、モデル地形と実際の地形の違いは、風・鉛直流・気温・降水などの予測誤差につながることがあります。

(なお、このような地形の違いによる誤差は、同じ地点で似た傾向が繰り返し現れる系統的誤差となることがあります。このため、気温や風のガイダンスでは、こうした数値予報モデルの特性を考慮して補正されています。予報を行う際には、数値予報モデルの結果をそのまま利用するのではなく、モデル地形と実際の地形との違いを理解したうえで、数値予報とガイダンスを適切に使い分けることが重要です。)

てるらん

格子間隔をもっと細かくしていけば、地形による誤差はなくなるのかな?

てるるん

格子を細かくすれば、実際の地形をより詳しく表現できるようになるよ!でも、局地モデルのように格子間隔を細かくしても、実際の地形にはさらに小さな山や谷などの起伏があるから、地形による誤差を完全になくすことはできないんだ。だからこそ、モデル地形と実際の地形には違いがあることを理解して、数値予報の結果やガイダンスを上手に利用することが大切なんだよ!

したがって、数値予報モデルで用いられている地形は、モデルの分解能に応じて実際の地形を平滑化しており、数値予報モデルにより予測される風や鉛直流の誤差の要因となっていますので、答えは 正 となります。

本問の解説:(b) について

(問題)数値予報モデルで用いられている物理過程のパラメタリゼーションは、それ自身が完全ではなく予測誤差の要因のひとつとなっている。

→ 答えは 正 です。

数値予報モデルでは、大気を3次元の格子に区切り、格子点ごとに気温・風・水蒸気量などの物理量を計算しています。

しかし、実際の大気中では、小さな積雲や乱流といった、モデルの格子間隔よりも小さなスケールの現象( サブグリッドスケールの現象 )が存在しています。

こうしたサブグリッドスケールの現象は、モデルの格子の中に埋もれてしまうため、格子点の値として直接計算することができません。

サブグリッドスケールの現象
気象庁「令和7年度数値予報解説資料集」をもとに作成

しかし、モデルの格子間隔より小さな現象であっても、大気の状態に与える影響は無視できません。

例えば、積雲の中では水蒸気が凝結することで潜熱が放出されます。

また、乱流によって、熱や水蒸気などがさまざまな方向に運ばれます。

このような現象は、大気の温度や水蒸気量などを変化させ、数値予報の計算結果にも大きな影響を与えます。

そこで、格子間隔より小さな現象そのものを直接計算するのではなく、その現象が格子スケールの大気の状態に与える効果(=その現象によって大気にどのような影響が生じるのか)を、格子点で計算されている値から近似的に見積もる方法が使われています。

これを パラメタリゼーション といいます。

簡単にいうと、格子間隔より小さくて直接計算できない現象を、その「効果」だけを近似的に計算して、数値予報モデルに取り込もうという手法です。

このように、パラメタリゼーションは実際の大気現象による影響を完全に再現するものではないため、実際の大気現象による影響と、モデルの中でパラメタリゼーションによって近似された影響との間には、ずれが生じることがあります。

こうしたずれが、気温や風、水蒸気量、降水量などの予測に影響し、数値予報の予測誤差につながることがあります。

つまり、パラメタリゼーションは、数値予報モデルでは直接計算できない小さなスケールの現象の効果を反映させるのに有効な手法ですが、その近似や仮定には限界があるため、パラメタリゼーションそのものが数値予報の予測誤差の要因のひとつとなるのです。

てるらん

じゃあ、パラメタリゼーションって、誤差を生むから使わない方がいいんじゃないの?

てるるん

格子間隔より小さな現象をまったく考慮しなければ、その影響を数値予報モデルに取り込むことができないんだ。だから、多少の近似を含んでいても、パラメタリゼーションによって小さな現象の影響を取り入れることが重要なんだよ!

したがって、数値予報モデルで用いられている物理過程のパラメタリゼーションは、それ自身が完全ではなく予測誤差の要因のひとつとなっていますので、答えは 正 となります。

本問の解説:(c) について

(問題)全球モデルとメソモデルでは、それぞれの水平解像度や積雲対流の取り扱いが異なることなどが、予測される降水表現の違いの要因となっている。

→ 答えは 正 です。

全球モデルの 水平解像度(=水平格子間隔)は約 13 km、メソモデルの水平解像度は5kmです。

数値予報モデルで実際に表現できる現象のスケールは、一般に格子間隔の5〜8倍程度とされています。

このため、全球モデル(GSM)では約 65 〜 105 km以上、メソモデル(MSM)では約 25 〜 40 km以上のスケールの現象を表現することができます。

つまり、メソモデルの方が水平解像度が高く、全球モデルでは表現しにくい、より小さなスケールの現象まで表現することができるということです。

数値予報モデルが予測対象とする現象のスケール
気象庁ホームページ「気象に関する数値予報モデルの種類」をもとに作成

また、全球モデルとメソモデルでは、積雲対流の取り扱い も異なります。

全球モデルでは、積雲対流パラメタリゼーションによって、モデルの格子よりも小さな積雲対流の影響を計算しています。

大気がまだそれほど不安定になっていない段階から積雲対流を起こし、その働きによって大気を安定化させるように計算します。

これにより、全球モデルでは、積雲対流による降水が広い範囲に分散して表現されやすく、雨の範囲を広めに、強さを弱めに予想する傾向があります。

また、広い降水域が長い時間続くように予想されることもあります。

一方、メソモデルでは、地形による上昇や風の収束など、積雲対流を発生させる強制力が強い場所で、積雲対流を起こしやすいように計算します。

そのため、メソモデルでは、強制力が強い場所に降水を集中させ、強い雨を表現しやすいという特徴があります。

一方で、熱雷のように、地形や風の収束などの強い強制力がなく、大気の不安定によって発生する短時間の強い雨は、少なめに予想されやすいという特徴もあります。

また、モデルの格子スケールで表現される積雲対流では、雨量が多めに予想されることもあります。

(より正確に言うと、積雲対流過程において、全球モデルは主に雲水スキームと荒川シューバート(AS)スキーム、メソモデルでは雲物理過程とケイン・フリッチ(KF)スキームを用いています。出典:気象庁「令和7年度数値予報解説資料集」第1章 基礎編「1.9.1 数値予報の留意点」)

このように、同じ雨を予測する場合でも、それぞれの水平解像度や積雲対流の取り扱いが異なることなどから、全球モデルでは広い範囲に弱めの降水を、メソモデルではより狭い範囲に強い降水を表現するなど、降水の分布や強さ、継続時間に違いが生じることがあるのです。

したがって、全球モデルとメソモデルでは、それぞれの水平解像度や積雲対流の取り扱いが異なることなどが、予測される降水表現の違いの要因となっていますので、答えは 正 となります。

以上より、本問の解答は、(a) 正 (b) 正 (c) 正 とする 1 となります。

ここに書いてあるよ
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書いてある場所:P199〜202(数値予報)


書いてある場所:ー


書いてある場所:P270〜276(パラメタリゼーション)


書いてある場所:P318〜321(パラメタリゼーション)


令和7年度数値予報解説資料集 第1章:基礎編「1.9.1 数値予報の留意点」(気象庁ホームページ)

書いてある場所:「モデル地形の不完全さに起因する誤差」「パラメタリゼーションの原理的制約」「各モデルの積雲対流の取り扱い」

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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