【第63回】2025年1月試験(学科一般試験)問1(地球⼤気の組成)

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問1

地球⼤気の組成について述べた次の⽂ (a) 〜 (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。

(a) 対流圏内において、窒素、酸素、アルゴンの3種類の気体が乾燥空気に占める⽐率(体積⽐)は、99.9%以上となっている。

(b) ⾼度 80km 以下では、乾燥空気の平均分⼦量は⾼度によらずほぼ⼀定である。

(c) 対流圏の空気の平均分⼦量は、⽔蒸気の混合⽐が⼤きいほど⼤きくなる。

   





解説

本問は、地球大気の組成に関する問題です。

本問の解説:(a) について

(問題)対流圏内において、窒素、酸素、アルゴンの3種類の気体が乾燥空気に占める⽐率(体積⽐)は、99.9%以上となっている。

→ 答えは です。

水は、気体・液体・固体と変化するので、時間的にも空間的にもその変動は大きいですが、水蒸気を除いた乾燥空気の化学組成は様々な空気の運動による混合により、中間圏界面付近 (高度約80km) まではほぼ一定となっています。

ということで、下表「地表付近の大気組成」で対流圏内における各気体の体積比を見てみましょう。

地表付近の大気組成
小倉義光『一般気象学 第2版補訂版』東京大学出版会, 2016, P13 表1.4をもとに作成

上表によると、乾燥空気の成分の容積比は大きい順に、

1:窒素(78.088%)

2:酸素(20.949%)

3:アルゴン(0.93%)

となっています。

これらを足し合わせると、

78.088% + 20.949% + 0.93% = 99.967%

となります。

したがって、対流圏内において、窒素、酸素、アルゴンの3種類の気体が乾燥空気に占める⽐率(体積⽐)は、99.9%以上となっていますので、答えは となります。

本問の解説:(b) について

(問題)⾼度 80km 以下では、乾燥空気の平均分⼦量は⾼度によらずほぼ⼀定である。

→ 答えは です。

下表は、各高度における様々な物理量の値を示したものです。

諸物理量の各高度における値
小倉義光『一般気象学 第2版補訂版』東京大学出版会, 2016, P23 表2.1をもとに作成

上表を見ると、高度80km以下では、平均分子量が 28.964ほぼ一定であることが分かります。

これは、高度約15kmまでの対流圏では活発な対流によって大気がよくかき混ぜられており、

高度約15km〜約80kmまでの成層圏・中間圏では、ブリューワー・ドブソン循環(=低緯度から両極の中高緯度に向かう大規模な循環)などの大規模な運動によって大気がよくかき混ぜられているためです。

ブリューワー・ドブソン循環
画像:一般気象学 P254 図9.4 中層大気のラグランジュ的子午面循環の模式図
(T.Dunkerton, 1978:J. Atmos. Sci., 35, 2325-2333.) をもとに作成

したがって、⾼度 80km 以下では、乾燥空気の平均分⼦量は⾼度によらずほぼ⼀定ですので、答えは となります。

本問の解説:(c) について

(問題)対流圏の空気の平均分⼦量は、⽔蒸気の混合⽐が⼤きいほど⼤きくなる。

→ 答えは です。

この問題は「空気中に含まれる水蒸気の量が増えると、空気の平均分子量がどう変化するか」ということが問われています。

はじめに、混合比について理解しておきましょう。

混合比 とは、湿潤空気に含まれる「水蒸気の質量」と「乾燥空気の質量」の比のことです。

てるるん

簡単に言うと、水蒸気を含んでいる湿った空気の中で、乾燥空気と水蒸気が何:何の割合で存在しているかを表したものだよ!

式で書くとこうなります。

\(\text{混合比}=\displaystyle\frac{\text{水蒸気質量 [g]}}{\text{乾燥空気質量 [㎏]}}\)

では、乾燥空気と水蒸気の分子量を考えてみましょう。

乾燥空気は約78%が窒素N2(分子量28)で、約21%が酸素O2(分子量32)ですので、
乾燥空気の平均分子量29(28 × 0.78 + 32 × 0.22)となります。

一方、水蒸気はH2Oなので分子量18 です。

ここで重要なのが、アボガドロの法則 です。

これは「すべての気体は、同じ温度・同じ圧力・同じ体積であれば、含まれている分子の数は同じ」という法則です。

つまり、乾燥空気であっても湿った空気であっても、同じ条件下であれば空気中に含まれる分子の数は変わりません

では、仮に同じ体積の空気中に分子が5個あると考えてみましょう。

乾燥空気であれば、すべての分子の分子量は 29 なので、全体の質量は 29 × 5 = 145になります。

一方、水蒸気を含んだ空気では、例えば、乾燥空気の分子が3個、水蒸気の分子が2個あると仮定すると、それぞれの分子量は 29 と 18 なので、全体の質量は 29 × 3 + 18 × 2 = 123となります。

つまり、空気塊が水蒸気を多く含むほど(=⽔蒸気の混合⽐が⼤きいほど)空気塊は軽くなるのです。

湿潤空気は乾燥空気より軽い

したがって、対流圏の空気の平均分⼦量は、⽔蒸気の混合⽐が⼤きいほど(=空気中に水蒸気を多く含むほど)「⼤きく」ではなく「小さく」なりますので、答えは となります。

以上より、本問の解答は、(a) (b) (c) とする となります。

ここに書いてあるよ
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書いてある場所:P13(地表付近の大気組成)、P23(諸物理量の各高度における値)、P61〜62(混合比)、P254〜255(ブリューワー・ドブソン循環)


書いてある場所:P68(アボガドロの法則)、P123〜124(混合比)、P355(ブリューワー・ドブソン循環)


書いてある場所:P35(ブリューワー・ドブソン循環)、P97〜98(混合比)


書いてある場所:P15(乾燥空気の地球大気組成)、P19(ブリューワ・ドブソン循環)、P35〜36(混合比)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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