【第63回】2025年1月試験(学科一般試験)問11(エルニーニョ現象、ウォーカー循環)

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問11

エルニーニョ現象およびウォーカー循環について述べた次の文 (a) ~ (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。なお、タヒチとダーウィンの位置は下図のとおりである。

(a) エルニーニョ現象時には、インドネシアやオーストラリア北部などの西部太平洋熱帯域で、降水量が平年に比べて少ない傾向がみられる。

(b) エルニーニョ現象時には、ダーウィンの海面気圧は通常よりも低く、タヒチの海面気圧は通常よりも高くなる傾向がある。

(c) エルニーニョ現象時には、太平洋赤道域でウォーカー循環に伴う東風が通常よりも強くなる。

   





解説

本問は、エルニーニョ現象及びウォーカー循環に関する問題です。

エルニーニョ現象 とは、赤道付近の東太平洋(ペルー沖)の海面水温が平年より高くなる現象です。

下図のように、通常、赤道の海面付近にある暖かい海水は、貿易風(東風)によって太平洋西部に吹き寄せられるため、インドネシア付近で対流活動や降雨をもたらします。

画像:Beyond Our Planet「エルニーニョ現象とは?世界の天候に影響をおよぼす大気と海洋の相互作用 -仕組み編-」をもとに作成

しかし、下図のように、何らかの要因で貿易風(東風)が弱まると、暖かい海水を西へ吹き寄せる力が弱まるため、暖かい海水のある領域が平年よりも東へ移動します。

(※ 何らかの要因の「何らか」とは気象学的にまだ解明されていません。)

これに伴い、対流活動が活発な領域も、平年より東へずれることで、インドネシア付近では干ばつ、ペルー付近では豪雨をもたらします。

エルニーニョ現象
画像:Beyond Our Planet「エルニーニョ現象とは?世界の天候に影響をおよぼす大気と海洋の相互作用 -仕組み編-」をもとに作成

エルニーニョ現象は数年に一度発生し、世界各地の天候に大きな影響を与えます。

海面水温の変化だけでなく、大気の流れや降水分布なども大きく変化させる、海洋と大気の相互作用による代表的な現象です。

ウォーカー循環 とは、赤道付近の東西方向に発生する大規模な大気の循環のことです。

インドネシア付近では海面水温が高いことから、その上空で上昇気流が生じて対流活動が活発になり、降水量が増加して、地上気圧は低くなります。

太平洋赤道域西部で上昇した空気は対流圏上層を西から東に向かい、海面水温の低い太平洋東部で下降し、東部では地上気圧が高くなります。

この気圧の差から、赤道域の地上付近では東から西に向かう風(貿易風)が吹きます。

こうした、赤道付近の東西方向に発生する大規模な大気の循環をウォーカー循環といいます。

エルニーニョ現象が発生すると、このウォーカー循環が弱まり、太平洋全体の気圧配置や風、降水の分布が大きく変化します。

具体的には、貿易風が弱まり、暖かい海水や対流活動の中心が西部から中部・東部太平洋に移動するため、各地の気象にさまざまな影響が及びます。

本問の解説:(a) について

(問題)エルニーニョ現象時には、インドネシアやオーストラリア北部などの西部太平洋熱帯域で、降水量が平年に比べて少ない傾向がみられる。

→ 答えは です。

通常時は、インドネシアやオーストラリア北部の西部太平洋で暖かい海水により対流活動が盛んで、大雨が降りやすい状況となっています。

しかし、エルニーニョ現象が発生すると、暖かい海水や積乱雲の発生域が東へ移動してしまい、西部太平洋では対流活動が弱まります。

その結果、これらの地域では降水量が平年よりも少なくなる傾向があります。

したがって、エルニーニョ現象時には、インドネシアやオーストラリア北部などの西部太平洋熱帯域で、降水量が平年に比べて少ない傾向がみられますので、答えは となります。

本問の解説:(b) について

(問題)エルニーニョ現象時には、ダーウィンの海面気圧は通常よりも低く、タヒチの海面気圧は通常よりも高くなる傾向がある。

→ 答えは です。

通常時、ダーウィン付近(西部太平洋)は暖かい海水の影響で低気圧、タヒチ付近(東部太平洋)は冷たい海水の影響で高気圧となっています。

しかし、エルニーニョ現象時には、東風が弱まり、対流活動の中心が東へ移動することで、西部太平洋(ダーウィン付近)の対流活動が弱まり、気圧は平年より高くなります。

一方、東部太平洋(タヒチ付近)では対流活動が強まり、気圧は平年より低くなります。

したがって、エルニーニョ現象時には、ダーウィンの海面気圧は通常よりも「低く」ではなく「高く」、タヒチの海面気圧は通常よりも「高く」ではなく「低く」なる傾向がありますので、答えは となります。

本問の解説:(c) について

(問題)エルニーニョ現象時には、太平洋赤道域でウォーカー循環に伴う東風が通常よりも強くなる。

→ 答えは です。

エルニーニョ現象時にはウォーカー循環が弱まるため、その要素である赤道域の東風も弱まります

通常、ウォーカー循環は、東風によって西部太平洋に暖水を集め、東西の気圧差によって維持されていますが、エルニーニョ現象では東西の気圧差が小さくなり、風を吹かせる力が弱まります。

その結果、貿易風(東風)は平年よりも弱まる方向に変化します。

したがって、エルニーニョ現象時には、太平洋赤道域でウォーカー循環に伴う東風が通常よりも「強く」ではなく「弱く」なりますので、答えは となります。

以上より、本問の解答は、(a) (b) (c) とする となります。

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書いてある場所:P282〜291(エルニーニョ現象、ウォーカー循環)


書いてある場所:P443〜446(エルニーニョ現象)


書いてある場所:P390〜394(エルニーニョ現象)


書いてある場所:P181〜182、352〜353(エルニーニョ現象、ウォーカー循環)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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