問1
地球大気の平均的な気温の高度分布について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。
(a)
中間圏では、気温は高度が上がるとともに低下し、中間圏界面で極小となっている。
(b)
成層圏では、オゾンが太陽からの紫外線を吸収して大気を加熱しており、オゾンの数密度が極大となる高度で気温も極大となっている。
(c)
対流圏の気温減率は、放射や対流など様々な過程が関わり決まっているため、放射収支のみを考慮した計算から求められる気温減率よりも大きくなっている。
大気の鉛直構造(予備知識)
下図は標準的な大気における気温の鉛直分布を表したものです。
大気が存在する領域である「大気圏(読:たいきけん)」は、大気の性質の違いによって、大きく4つの層に分けられます。
- 対流圏(読:たいりゅうけん):〜地上約10km
- 成層圏(読:せいそうけん):地上約10km〜50km
- 中間圏(読:ちゅうかんけん):地上約50km〜80km
- 熱圏(読:ねつけん):地上約80km〜
各層の気温の特徴を簡単に見ていこう!
対流圏
対流圏では上空へ行くほど、気温が低くなります。
これは、太陽光で暖められた地表面の熱が、空気に伝わっているためです。
高度が低いほど地表面の熱が伝わって気温が高く、上空に行くほど地表面の熱が伝わりづらいため気温が低くなります。
なので、対流圏では上空へ行くほど、気温が低くなります。
成層圏
成層圏では上空へ行くほど、気温が高くなります。
これは、成層圏にあるオゾンが太陽からの紫外線を吸収して、熱エネルギーを生じているためです。
なので、成層圏では上空に行くほど、オゾンによる加熱効果が大きく、気温が高くなります。
中間圏
中間圏では上空へ行くほど、気温が低くなります。
これは、ここまで高度が上がると、大気の密度がかなり低く、オゾンもとても少なくなるためです。
オゾンがわずかしかないため、紫外線吸収による温度上昇もほとんどなくなります。
なので、中間圏では上空に行くほど、気温が低くなります。
熱圏
熱圏では上空へ行くほど、気温が高くなります。
これは、窒素原子や酸素原子が太陽からの紫外線や短波長の電磁波を受けて電離するときに、熱エネルギーを生じているためです。
「原子の電離」に必要な紫外線や電磁波は上空から降り注ぐため、窒素原子や酸素原子の電離も上空へ行くほど盛んに起こります。
なので、熱圏では上空に行くほど、気温が高くなります。
本問の解説:(a) について
(a) 中間圏では、気温は高度が上がるとともに低下し、中間圏界面で極小となっている。
→ これは 正 です。
中間圏は大気の密度がかなり低く、オゾンもとても少なくなります。
オゾンがわずかしかないため、紫外線吸収による温度上昇もほとんどなくなります。
したがって、高度が上がるとともに気温が低くなり、中間圏界面で極小となるので、答えは 正 となります。
本問の解説:(b) について
(b) 成層圏では、オゾンが太陽からの紫外線を吸収して大気を加熱しており、オゾンの数密度が極大となる高度で気温も極大となっている。
→ これは 誤 です。
オゾン層(オゾンの数密度が最大の高度)と、成層圏の気温が極大となる高度は一致しません。
オゾン層の高度は約20km〜25km付近ですが、成層圏の気温が極大となる高度は成層圏界面付近の約50km付近です。
成層圏界面付近で気温が極大になる理由は、高度が上がるほど紫外線が強く、オゾンの密度が低い分、少しのエネルギーでも気温が上がりやすいためです。
したがって、成層圏の気温が極大となる高度は、オゾンの数密度が極大となる高度ではなく、成層圏界面なので、答えは 誤 となります。
本問の解説:(c) について
(c) 対流圏の気温減率は、放射や対流など様々な過程が関わり決まっているため、放射収支のみを考慮した計算から求められる気温減率よりも大きくなっている。
→ これは 誤 です。
対流圏の気温の平均的な鉛直分布は、
- 放射収支
- 対流による大気の鉛直混合
- 水蒸気の凝結過程
によってほぼ決まります。
放射収支とは「地球が受け取る太陽放射量」と「地球からの放射量」が釣り合っている状態のことです。
対流による大気の鉛直混合とは、太陽放射によって地表面が暖められることで起こる、上層と下層の大気の対流のことです。
これにより、上層と下層の大気が混ざったら、上層と下層の温度差は小さくなります。
なので、「対流による大気の鉛直混合」により、気温減率は小さくなります。
水蒸気の凝結過程とは、空気中の水蒸気が凝結するときに放出する潜熱(読:せんねつ)によって、空気が暖められることです。
空気中の水蒸気は上昇して温度が下がることで凝結し、潜熱を放出します。
この潜熱によって、上層の空気が暖められるので、上層と下層の温度差は小さくなります。
なので、「水蒸気の凝結過程」により、気温減率は小さくなります。
したがって、対流圏の気温減率は、放射収支のみを考慮した計算から求められる気温減率よりも、放射収支や対流による大気の鉛直混合、水蒸気の凝結過程などを考慮した計算から求められる気温減率の方が小さくなるので、答えは 誤 となります。
以上より、本問の解答は (a) 正 (b) 誤 (c) 誤 とする 3 となります。
書いてある場所:P21〜30(大気の鉛直構造)
書いてある場所:P24〜32(大気の鉛直構造)
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
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