【第59回】2023年1月試験(学科一般試験)問6(地上付近の空気塊に働くコリオリ力の向き)

第62回_気象予報士試験_解答速報(予告)

問6

北半球中緯度にある平坦な地域において、一定の気圧間隔で描かれた地上の等圧線の分布が、図のように東西に一様で北にいくほど間隔が狭くなっており、相対渦度の鉛直成分が図の範囲でどこでも正になっているとする。このとき地上付近の空気塊に働くコリオリ力の向きを示す矢印として適切なものを、図の①~⑤の中から1つ選べ。ただし、コリオリパラメータは一定とし、空気塊に働く水平方向の力は気圧傾度力、コリオリカ、摩擦力のみで、摩擦力の大きさは風速に比例し、その向きは風向と反対の向きに働くとする。

気象予報士試験_第59回_一般知識_問6
   





解説

地上風(予備知識)

地上風

地上風(読:ちじょうふう)とは、その名前のとおり上空1〜1.5km以下の地上で吹く風のことで、

気圧傾度力コリオリ力摩擦力の3つの力がバランスして吹きます。

てるらん

なんか難しそう・・・

てるるん

大丈夫!
1つ1つ細かく見ていけば直感的に理解できるよ!

気圧傾度力(読:きあつけいどりょく)とは、気圧の高いところから低いところに向かって空気を押し出そうとする力のことで、気圧の高い方(高圧側)から低い方(低圧側)に向かって働きます。

コリオリ力(読:こりおりりょく)とは、地球の自転による影響で空気の流れの向きを変えようとする力のことで、北半球では風向の直角右向きに働きます。(南半球では風向の直角左向きに働きます。)

摩擦力(読:まさつりょく)とは、地表面との摩擦により空気の流れを止めようとする力のことで、風向と逆向きに働きます。

上空1〜1.5km以下の地上付近の空気塊に対しては、地面や海面の摩擦力が無視できないので、気圧傾度力、コリオリ力、摩擦力の3つの力のバランスにより、風は等圧線から約20〜30度傾いて低圧側に吹きます

この風を地上風といいます。

てるらん

地上風は地面に近くて、摩擦力が働くところで吹く風っていうことなんだね!

渦度(予備知識)

渦度

渦度(読:うずど)は、空気がどれくらい速く、どっち向きに回転しているかを表す物理量です。

てるらん

空気の回転の速さと向き?

てるるん

うん!それだけでは分かりづらいよね!
まずはイメージを掴むところから始めよう!

大気の流れはまっすぐなものだけではなく、回転しているものもあります。

この回転の渦がどれくらい速く、どっち向きにぐるぐる回転しているのかを表すのが渦度です。

回転方向には、(反時計回り)(時計回り)があり、回転のスピードが速いほど、渦度が大きい、と表現します。

反時計回りにぐるぐる〜!っと勢いよく回転するほど、渦度は正の値が大きくなります。

逆に、時計回りにぐるぐる〜!っと勢いよく回転するほど、渦度は負の値が大きくなります。

てるらん

じゃあ、そもそも渦度ってどうやって起こるの?

渦度が生じる要因は2つあります。

① 流れに曲率がある場合

流れに曲率がある(=空気がぐねぐね蛇行している)場合は、その流れに沿った向きに渦が回転します。

② 風速に水平シアがある場合

風速に水平シア(水平方向の風速差)がある場合は、風速が大きい方から小さい方に向かって渦が回転します。

ちなみに、一番風が強いところを強風軸と言い、渦度は0になります。

渦度が生じる要因

本問の解説

(問題)北半球中緯度にある平坦な地域において、一定の気圧間隔で描かれた地上の等圧線の分布が、図のように東西に一様で北にいくほど間隔が狭くなっており、相対渦度の鉛直成分が図の範囲でどこでも正になっているとする。このとき地上付近の空気塊に働くコリオリ力の向きを示す矢印として適切なものを、図の①~⑤の中から1つ選べ。ただし、コリオリパラメータは一定とし、空気塊に働く水平方向の力は気圧傾度力、コリオリカ、摩擦力のみで、摩擦力の大きさは風速に比例し、その向きは風向と反対の向きに働くとする。

気象予報士試験_第59回_一般知識_問6

→ 答えは  です。

この問題は、北半球中緯度における地上付近の空気塊に働くコリオリ力の向きを求める問題です。

まずは、与えられた情報から地上風を描けるか考えてみましょう。

てるるん

地上風とは、地上付近で吹く風のことで、気圧傾度力、コリオリ力、摩擦力の3つの力がバランスして吹き、等圧線から約20〜30度傾いて吹く風のことだよ!

問題文を見てみると等圧線の間隔は分かりますが、どちらが高圧側(気圧が高い方)で、どちらが低圧側(気圧が低い方)かは分かりません

つまり、この段階では下図のように、A と B の2パターンが考えられます。

気象予報士試験_第59回_一般知識_問6_地上風を求める
てるらん

これだけじゃコリオリ力の向きは分からないね

そこで、次は渦度の情報を使ってみましょう。

問題文には「東西に一様で北にいくほど間隔が狭くなっており、相対渦度の鉛直成分が図の範囲でどこでも正になっているとする」と書かれています。

そうです。渦度が なのです。

また、等圧線の間隔が北ほど狭いということは、風速は北ほど強いということです。

つまり、上図 A と B の2パターンにおいて、北ほど風が強く、渦度が正であるということは、下図 B のように東よりの風(東風)となります。

気象予報士試験_第59回_一般知識_問6_渦度から地上風の向きを求める

したがって、地上風の向きは上図における B と一致するので、

コリオリ力の向きは北西向きとなり、答えは となります。

ここに書いてあるよ
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書いてある場所:P147〜149(地上風)、P163〜165(渦度)


書いてある場所:P164〜170(コリオリ力、気圧傾度力、摩擦力)、P184(地上風)、P207〜210(渦度)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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