【第65回】2026年1月試験(学科一般試験)問9(気温の緯度・高度分布)

問9普通

図に示す経度平均した1月の平均気温の緯度高度分布について述べた次の文 (a) 〜 (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。

(a) 熱帯域の気温が高度 15〜20 km付近で極小になるのは、主に対流圏上層に達した対流雲が消散することにより潜熱が失われるためである。

(b) 南半球の高度 40〜50 km で気温が極大となる主たる要因は、中間圏からの下降流にともなう断熱圧縮である。

(c) 南半球の高度 90 km 付近で気温が極小となるのは、上昇流にともなう断熱膨張の影響を受けるためである。

   





解説

本問は、経度平均した1月の平均気温の緯度高度分布に関する問題です。

大気の鉛直構造と気温分布(予備知識)

地球の大気は、気温の鉛直分布(高さによる気温の変化)によって、下から対流圏・成層圏・中間圏・熱圏の4つの層に分かれています。

下図は、気温とオゾンの分布を高さ方向に見た模式図です。

気温分布とオゾン分布
出典:気象庁ホームページ「オゾン層とは」の「図1 大気の構造」をもとに作成

上図の赤い線(気温分布)を見ると、対流圏では、高さとともに気温が下がっています。

これは、大気を暖めているのが太陽の光そのものではなく、太陽で暖められた地表面だからです。

熱源である地表面から離れるほど、気温が下がります。

成層圏では逆に、高さとともに気温が上がっています。

これは、オゾンが太陽の紫外線を吸収して、周囲の大気を加熱しているためです。

オゾンによる加熱は高度 50 km付近で最も強く、その付近(成層圏界面)で気温が極大となっています。

上図の青い線(オゾン分布)を見ると、オゾン層(=オゾンが最も多い場所)は高度 25 km付近です。

それでも高度 50 km付近で気温が極大となっているのは、上層ほど紫外線が強く、空気も薄くて暖まりやすいためです。

中間圏では、再び高さとともに気温が下がっています。

これは、紫外線を吸収するオゾンがほとんどなくなる一方、二酸化炭素などが赤外線を宇宙へ逃がして大気を冷やしているためです。

もう1つ、本問を解く鍵になるのが、上昇流・下降流と気温の関係です。

空気塊は、上昇すると気圧が下がって膨張し、温度が下がります( 断熱膨張 )。

逆に、下降すると気圧が上がって圧縮され、温度が上がります( 断熱圧縮 )。

本問の解説:(a) について

(問題)熱帯域の気温が高度 15〜20 km付近で極小になるのは、主に対流圏上層に達した対流雲が消散することにより潜熱が失われるためである。

→ 答えは 誤 です。

下図は、問題の図に色を付けたものです。

1月の平均気温の緯度高度分布図
出典:小倉義光『一般気象学 第2版補訂版』東京大学出版会、2016、p.251、図9.1「1月における経度平均温度の緯度高度分布」(CIRA86による)をもとに作成

上図を見ると、赤道付近の高度 15〜20 km付近に、210Kの等温線で囲まれた気温の極小域があることが分かります。

これは、熱帯域の対流活動にともなう上昇流の影響が、この高度まで及んでいるためです。

下図は、対流圏の子午面循環をまとめた図です。

子午面循環

上図のように、熱帯域はハドレー循環の上昇流域にあたり、積乱雲などの対流活動による上昇流が対流圏界面まで届いています。

このため、熱帯域の対流圏界面は高度 15〜17 km程度と、中緯度や高緯度(高度 8〜12 km程度)よりも高くなっているのです。

上昇する空気塊は、断熱膨張により温度が下がります。

対流圏界面の高い熱帯域では、より高い高度まで気温が下がるので、高度 15〜20 km付近に気温の極小域ができるのです。

したがって、熱帯域の気温が高度 15〜20 km付近で極小になるのは、「対流雲が消散することにより潜熱が失われるため」ではなく、「上昇流にともなう断熱膨張によって気温が低下するため」ですので、答えは 誤 となります。

本問の解説:(b) について

(問題)南半球の高度 40〜50 km で気温が極大となる主たる要因は、中間圏からの下降流にともなう断熱圧縮である。

→ 答えは 誤 です。

下図は、問題の図に色を付けたものです。

1月の平均気温の緯度高度分布図
出典:小倉義光『一般気象学 第2版補訂版』東京大学出版会、2016、p.251、図9.1「1月における経度平均温度の緯度高度分布」(CIRA86による)をもとに作成

上図を見ると、南半球(図の左側)の高度 40〜50 km付近に、270K以上の等温線で囲まれた気温の極大域があります。

図は1月の気温分布なので、南半球は夏にあたります。

夏の南半球には太陽の光がよく当たるので、成層圏では、オゾンが太陽の紫外線を吸収して、周囲の大気を加熱しています。

オゾンによる加熱は高度 50 km付近で最も強いので、夏である南半球の高度 40〜50 km付近が、気温の極大域となるのです。

また、下図は、成層圏から中間圏にかけての大規模な循環(中層大気の子午面循環)を表した図です。

中層大気の子午面循環
出典:小倉義光『一般気象学 第2版補訂版』東京大学出版会、2016、p.254、図9.4「中層大気のラグランジュ的子午面循環の模式図」(T. Dunkerton, 1978:J. Atmos. Sci., 35, 2325-2333.)をもとに作成

上図のように、高度 40〜50 kmの夏極(図の左側)では上昇流、冬極(図の右側)では下降流となっています。

南半球(夏半球)は上昇流域ですので、問題文にある「中間圏からの下降流」はありません。

下降流がなければ断熱圧縮も起こらないので、これが気温の極大域の原因になることはありません。

したがって、南半球の高度 40〜50 kmで気温が極大となる主たる要因は、「中間圏からの下降流にともなう断熱圧縮」ではなく、「オゾンが太陽の紫外線を吸収することによる加熱」ですので、答えは 誤 となります。

本問の解説:(c) について

(問題)南半球の高度 90 km 付近で気温が極小となるのは、上昇流にともなう断熱膨張の影響を受けるためである。

→ 答えは 正 です。

下図は、問題の図に色を付けたものです。

1月の平均気温の緯度高度分布図
出典:小倉義光『一般気象学 第2版補訂版』東京大学出版会、2016、p.251、図9.1「1月における経度平均温度の緯度高度分布」(CIRA86による)をもとに作成

上図を見ると、南半球の高度 90 km付近に、180K以下の等温線で囲まれた気温の極小域があります。

下図は、高度 120 km付近まで含めた子午面循環の模式図です。

子午面循環
出典:ドイツ航空宇宙センター(DLR)大気物理研究所の資料をもとに作成

上図のように、夏極(図の左側)では、空気が高度 100 km付近まで上昇して冬極へ向かっています。

夏半球の高度 90 km付近は、この上昇流の中にあります。

(この上昇流は、対流圏から伝わってきた「重力波」と呼ばれる大気の波が壊れる(砕波する)ことによって作られています。)

上昇した空気塊は、断熱膨張により温度が下がります。

このため、南半球の高度 90 km付近では、夏で日射があるにもかかわらず、気温の極小域ができるのです。

てるるん

ここでは、日射による加熱よりも、上昇流の断熱膨張による冷却のほうが強く効いているんだよ!

したがって、南半球の高度 90 km付近で気温が極小となるのは、上昇流にともなう断熱膨張の影響を受けるためですので、答えは 正 となります。

以上より、本問の解答は、(a) 誤 (b) 誤 (c) 正 とする 4 となります。

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書いてある場所:P21〜30(大気の鉛直構造、成層圏の特徴)


書いてある場所:P32〜39(大気の鉛直構造、成層圏の気温変化)


書いてある場所:P26〜36(大気の鉛直構造、成層圏の気温上昇)、P370〜373(成層圏・中間圏の気温)


書いてある場所:P16〜21(大気の鉛直構造)、P167〜171(中層大気の温度分布、成層圏の気温分布)


書いてある場所:P24〜30(大気の鉛直構造、成層圏の特徴)


大気の構造と流れ(気象庁ホームページ)

書いてある場所:「気温の鉛直分布から見た大気の構造」(対流圏と成層圏・オゾンによる加熱)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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