【第64回】2025年8月試験(学科一般試験)問7(大気における地表面の摩擦の効果)

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問7

大気における地表面の摩擦の効果について述べた次の文章の (a) ~ (d) に入る式と語句の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。ただし、図の実線は等圧線を示し、コリオリパラメータを f とする。

北半球のある地点の水平な地表面付近で、図のように矢印で示す風速 V の定常な風が等圧線と角度 α をなす方向に吹いている。気圧傾度力の大きさを P 、コリオリ力の大きさを C 、 摩擦力の大きさを F とし、摩擦力が風の向きと逆方向に働いているとすると、3つの力のつり合いから
 F = (a)
 C = (b) = fV
したがって、摩擦力の大きさ F は
 F = (c)
これは、 風速が同じであれば地表面の摩擦力が (d) ほど地表面付近の風が大きな角度で等圧線を横切って低圧部に向かって吹くことを示している。

   





解説

本問は、地表面付近の摩擦力が風向に与える影響に関する問題です。

3つの力(気圧傾度力コリオリ力摩擦力)のつり合いから、風向と等圧線のなす角度 α と摩擦力の関係を導く、大気力学の基本的な問題です。

三角関数 sinα、cosα、tanα さえ正しく使えれば、難しい計算は必要ありません。

ただし、力の分解の方向(風に平行/直角)を意識しないと混乱しやすいので、図をしっかり書きながら整理していきましょう。

摩擦力のある風と地衡風の違い(予備知識)

まず本問を解く前に、地衡風 との違いを押さえておきましょう。

地衡風 とは、気圧傾度力 P とコリオリ力 C がつり合った状態で吹く風のことで、上空(自由大気)ではこのつり合いが成り立っています。

簡単にいうと、摩擦の影響を受けない上空では、風は等圧線に平行に吹くということです。

一方、地表面付近では 摩擦力 F が加わるため、気圧傾度力・コリオリ力・摩擦力の3つの力がつり合う形になります。

この結果、風は等圧線を斜めに横切って低圧側に向かって吹くようになります。

下図は、摩擦がない場合(地衡風)と摩擦がある場合(地表面付近)を比較したものです。

上図の左側(摩擦がない場合)を見ると、風 V は等圧線に平行に吹いており、気圧傾度力 P(北向き)とコリオリ力 C(南向き)がちょうど反対向きにつり合っています。

一方、右側(摩擦がある場合)を見ると、風 V は等圧線から角度 α だけ低圧側に傾いて吹いており、風の逆向きに摩擦力 F が働いています。

てるるん

地表付近では摩擦があるから、風は地衡風からズレて低圧部に向かって斜めに吹くんだよ!

てるらん

だから天気図を見ると、地上風は低気圧に向かって吹き込んでいるんだね!

本問では、この摩擦力 F の大きさ角度 α の関係を求めていきます。

本問の状況を整理しましょう

それでは、本問で与えられている状況を整理しましょう。

下図は、本問の設定を図にまとめたものです。

上図のように、北半球の地表面付近で、風 V が等圧線と角度 α をなす方向(低圧側に傾いた方向)に吹いています。

このとき、各力は以下のように働きます。

  • 気圧傾度力 P:等圧線に直角で、高圧部から低圧部に向かう方向(上図の上向き)
  • コリオリ力 C:北半球では風向に直角で右向き(上図の右下方向)
  • 摩擦力 F風の向きと逆方向(上図の左下方向)

この3つの力がつり合って、風 V が定常に吹いている状況です。

てるるん

力のつり合いを考えるときは、図に矢印を書き込むのが一番わかりやすいよ!

本問の解説:(a) について

(問題)北半球のある地点の水平な地表面付近で、図のように矢印で示す風速 V の定常な風が等圧線と角度 α をなす方向に吹いている。気圧傾度力の大きさを P 、コリオリ力の大きさを C 、摩擦力の大きさを F とし、摩擦力が風の向きと逆方向に働いているとすると、3つの力のつり合いから F = (a) となる。

→ 答えは P sinα です。

まずは、風 V に平行な方向で力を分解して考えてみましょう。

  • 摩擦力 F:風 V と逆方向に働くので、風に平行な成分は F そのもの(ただし向きは風と逆)
  • コリオリ力 C:風に直角(右向き)に働くので、風に平行な成分は ゼロ
  • 気圧傾度力 P:等圧線に直角で、風とは角度をなしているので、風に平行な成分を取り出す必要がある

気圧傾度力 P の風に平行な成分を図で考えてみましょう。

上図のように、気圧傾度力 P(薄い青の矢印)を風の方向に沿って分解すると、風に平行な成分は P sinα となります。

なぜ P sin α になるのか(三角比の復習)

気圧傾度力 P は等圧線に直角なので、風の方向(等圧線から角度 α 傾いた方向)との間の角度は (90°−α) となります。

したがって、P の風に平行な成分は、

P × cos(90°−α) = P sinα

となります(三角関数の公式 cos(90°−α) = sin α より)。

てるるん

P は風と直角方向ではなく、等圧線と直角方向だから、風とはちょっとズレているんだよ!

てるらん

そのズレの分が sin α になるんだね!

風に平行な方向で力がつり合うためには、P の風方向成分(P sin α、風と同じ向き)と摩擦力 F(風と逆向き)が大きさで等しくなる必要があります。

したがって、

F = P sin α

となります。

よって、空欄 (a) に入るのは「 P sin α 」となります。

本問の解説:(b) について

(問題)3つの力のつり合いから C = (b) = fV となる。

→ 答えは P cosα です。

次は、風 V に直角な方向で力を分解して考えてみましょう。

  • コリオリ力 C:風に直角(右向き)に働くので、風に直角な成分は C そのもの
  • 摩擦力 F:風の逆方向(風に平行)に働くので、風に直角な成分は ゼロ
  • 気圧傾度力 P:風とは角度をなしているので、風に直角な成分を取り出す必要がある

気圧傾度力 P の風に直角な成分を図で考えてみましょう。

上図のように、気圧傾度力 P(薄い青の矢印)を風に直角な方向に分解すると、その成分は P cosα となります。

風に直角な方向で力がつり合うためには、P の風に直角な成分(P cosα、コリオリ力とは反対向き)とコリオリ力 C が大きさで等しくなる必要があります。

したがって、

C = P cosα

となります。

また、コリオリ力 C はコリオリパラメータ f と風速 V を使って C = fV と表されるため、

C = P cosα = fV

という関係式が得られます。

よって、空欄 (b) に入るのは「 P cosα 」となります。

本問の解説:(c) について

(問題)したがって、摩擦力の大きさ F は F = (c) となる。

→ 答えは fV tanα です。

問題 (a) と (b) で得られた関係式を使って、摩擦力 F を別の形で表します。

(a) より:F = P sin α …①

(b) より:P cos α = fV …②

②の両辺を cos α で割ると、

P = fV / cos α …②’

これを①に代入すると、

F = P sin α
= (fV / cos α) × sin α
= fV × (sin α / cos α)

ここで、tan α = sin α / cos α という三角関数の関係を使うと、

F = fV tanα

となります。

よって、空欄 (c) に入るのは「 fV tanα 」となります。

てるるん

(a) と (b) で出した式を組み合わせて P を消去するのがポイントだよ!

本問の解説:(d) について

(問題)これは、風速が同じであれば地表面の摩擦力が (d) ほど地表面付近の風が大きな角度で等圧線を横切って低圧部に向かって吹くことを示している。

→ 答えは 大きい です。

(c) で求めた関係式 F = fV tan α を使って考えます。

風速 V とコリオリパラメータ f は、いま考えている地点では一定の値ですから、この式から 摩擦力 F は tanα に比例する ことがわかります。

つまり、角度 α が大きいほど tan α が大きくなり、それに比例して摩擦力 F も大きくなるということです。

ここで、tan α の性質をグラフで確認しておきましょう。

上図のように、α が 0° から 90° に近づくにつれて、tan α は 0 から無限大へと急激に増加します。

具体的な値を見ると、

  • α = 30° のとき、tan α ≒ 0.58
  • α = 45° のとき、tan α = 1
  • α = 60° のとき、tan α ≒ 1.73
  • α = 75° のとき、tan α ≒ 3.73

となり、α が大きくなるほど tan α は急激に増加していきます。

てるらん

45°を超えたあたりから tan α がぐんぐん伸びていくんだね!

したがって、F = fV tan α の関係から、摩擦力 F が 大きい ほど、角度 α も 大きく なることになります。

言い換えると、摩擦力が大きいほど、地表面付近の風は大きな角度で等圧線を横切って低圧部に向かって吹くということです。

これは実際の天気図でもよく観察される現象で、摩擦の大きい陸上では、海上よりも地上風が等圧線を横切る角度が大きくなることが知られています。

てるるん

陸上は建物や山などの障害物が多いから摩擦が大きくて、海上は平らだから摩擦が小さいよ!

よって、空欄 (d) に入るのは「 大きい 」となります。

以上より、本問の解答は、(a) P sin α (b) P cos α (c) fV tan α (d) 大きい とする となります。

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書いてある場所:P147〜149(地表面摩擦の影響)


書いてある場所:P327〜332(摩擦力の影響)


書いてある場所:P240〜245(地上付近で吹く風)


書いてある場所:P101〜102(地表面付近の風)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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