【第64回】2025年8月試験(学科一般試験)問8(世界の風・降水量・熱輸送量の特徴)

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問8

図に示す破線で囲まれた A ~ D の領域における風や降水量、熱輸送量の特徴について述べた次の文 (a) ~ (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。

(a) 領域 A における地表面(陸面及び海面)全体からの年平均の蒸発量は、この領域の年平均の降水量よりも多い。

(b) 顕熱輸送と潜熱輸送を合わせた大気の北向きの熱輸送量の年平均値を経度平均でみると、領域 B の緯度帯における最大値の方が領域 C の緯度帯における最大値よりも大きい。

(c) 領域 D において夏季と冬季で卓越する地表付近の風の風向が大きく変わることには、大陸と海洋との熱的性質の違いが大きく影響している。

   





解説

本問は、地球大気の大循環における風・降水量・熱輸送量の緯度分布に関する問題です。

本問の解説:(a) について

(問題)領域 A における地表面(陸面及び海面)全体からの年平均の蒸発量は、この領域の年平均の降水量よりも多い。

→ 答えは です。

領域 A は 9°S 〜9°N熱帯域 で、 熱帯収束帯 と呼ばれます。

この領域では北東貿易風南東貿易風が収束し、積乱雲などによる対流活動が活発で、強い上昇流が生じています。(ハドレー循環の上昇流域)

そのため、降水量が多い領域となっています。

ハドレー循環と亜熱帯高気圧の模式図
てるるん

ハドレー循環は、熱帯で上昇亜熱帯で下降という大規模な循環だよ!

てるらん

熱帯は雨がたくさん降って、亜熱帯はカラカラに乾いた砂漠地帯が多いってことだね!

では、実際に蒸発量と降水量の関係をグラフで確認してみましょう。

下図は、年平均で見た 降水量蒸発量 、そしてその差( 降水量−蒸発量 )の緯度分布です。

年平均で見た降水量と蒸発量の緯度分布
(出典:小倉義光『一般気象学 第2版補訂版』東京大学出版会、2016、p.175、図7.8をもとに作成)

上図を見ると、領域 A(熱帯)では、降水量 の方が 蒸発量 よりも多いことが分かります。

降水量−蒸発量 も熱帯では の値となっていて、降水量が蒸発量を上回っていることが分かります。

てるるん

熱帯では積乱雲がたくさん発生するから、蒸発した分よりもたくさんの雨が降るんだよ!

したがって、問題文の「年平均の蒸発量は、年平均の降水量よりも多い」は、実際には「年平均の降水量は、年平均の蒸発量よりも多い」が正しいので、答えは となります。

本問の解説:(b) について

(問題)顕熱輸送と潜熱輸送を合わせた大気の北向きの熱輸送量の年平均値を経度平均でみると、領域 B の緯度帯における最大値の方が領域 C の緯度帯における最大値よりも大きい。

→ 答えは です。

大気による熱輸送には、顕熱輸送潜熱輸送 の2種類があります。

顕熱輸送 とは、空気そのものがもつ熱(温度)を空気の流れによって運ぶことです。

簡単にいうと、暖かい空気が高緯度側へ、冷たい空気が低緯度側へ流れることで、熱が運ばれる現象です。

潜熱輸送 とは、空気中の水蒸気が運ばれることによる熱輸送です。

水蒸気は蒸発のときに潜熱を吸収し、凝結のときに潜熱を放出するため、「水蒸気を運ぶこと」は実質的に「熱を運ぶこと」と同じになります。

てるるん

つまり、大気は「温度」と「水蒸気」によって熱を運んでいるんだよ!

下図は、大気による顕熱輸送と潜熱輸送、海洋による熱輸送、そしてそれらをすべて合わせた全熱輸送の年平均値の緯度分布を示したものです。

グラフの値がプラスなら北向きマイナスなら南向きの熱輸送を意味しています。

年平均した大気と海洋による南北熱輸送量の緯度分布
(出典:小倉義光『一般気象学 第2版補訂版』東京大学出版会、2016、p.167、図7.2をもとに作成)

上図を見ると、領域B(亜熱帯、11°N〜25°N付近)では、大気による顕熱輸送北向きですが、大気による潜熱輸送赤道向きになっています。

そのため、両者を合わせると北向きの熱輸送量はある程度の大きさになるものの、互いに打ち消し合うため、最大値はそれほど大きくなりません

一方、領域C(中緯度、30°N〜50°N付近)では、大気による顕熱輸送大気による潜熱輸送も両方とも北向きになっています。

この領域では、温帯低気圧などの傾圧不安定波によって、暖かく湿った空気が北へ、冷たく乾いた空気が南へと運ばれます。

その結果、顕熱・潜熱のどちらも効率よく北向きに輸送されるため、両者を合わせた北向き熱輸送量は領域Bよりも大きくなるのです。

したがって、問題文の「領域 B の緯度帯における最大値の方が領域 C の緯度帯における最大値よりも大きい」は、実際には「領域 C の緯度帯における最大値の方が領域 B の緯度帯における最大値よりも大きい」が正しいので、答えは となります。

本問の解説:(c) について

(問題)領域 D において夏季と冬季で卓越する地表付近の風の風向が大きく変わることには、大陸と海洋との熱的性質の違いが大きく影響している。

→ 答えは です。

領域 D は日本から東南アジアにかけての アジアモンスーン域 です。

この領域では、夏と冬で地表付近の風向が大きく変わる 季節風(モンスーン)が発生します。

モンスーンが生じる主な原因は、大陸と海洋の比熱の違い です。

  • 大陸(陸面):比熱が小さいため、夏は暖まりやすく、冬は冷えやすい
  • 海洋(海水):比熱が大きいため、夏は暖まりにくく、冬は冷えにくい

この熱的性質の違いによって、夏と冬で大陸と海洋の気圧配置が逆転し、風向が大きく変わるのです。

下図は、アジアモンスーン域の夏季と冬季の典型的な気圧配置と、それに伴う卓越風を模式的に示したものです。

モンスーン循環

夏季は、大陸側はよく暖まって低圧部になる一方、海洋側には 太平洋高気圧 が張り出してきます。

その結果、風は海洋から大陸に向かって吹き込みます(南風系)。

冬季は、大陸側が冷え込んで シベリア高気圧 が現れ、海洋側(北太平洋)には アリューシャン低気圧 が発達します。

その結果、風は大陸から海洋に向かって吹き出します(北風系)。

てるるん

日本の冬の「西高東低」の気圧配置は、まさにこのモンスーンの冬型だよ!

てるらん

夏の蒸し暑い南風も、冬の冷たい北西風も、もとをたどると大陸と海洋の温まりやすさの違いからきてるんだね!

このように、夏と冬で大陸と海洋の熱的性質の違いによって気圧配置が入れ替わり、それに応じて地表付近の卓越風の風向も大きく変化します。

これが、アジアモンスーンの仕組みです。

したがって、問題文のとおり、領域 D における夏季と冬季の風向の大きな変化には、大陸と海洋との熱的性質の違いが大きく影響しているので、答えは となります。

以上より、本問の解答は、(a) (b) (c) とする となります。

ここに書いてあるよ
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書いてある場所:P166〜170(ハドレーが描いた大気の大循環)、P170〜175(地球をめぐる大気の流れⅠ南北方向の循環)、179〜182(モンスーン)


書いてある場所:P348〜363(大規模な待機運動)


書いてある場所:P290〜299(大気の大循環)


書いてある場所:P117〜121(大気の大規模な運動)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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