問11解答速報アンケートの正答率 77.8%普通
⽇本付近で発⽣する積乱雲について述べた次の⽂ (a) 〜 (d) の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。
(a) 積乱雲の成⻑期において雲が上⽅に発達していくとき、雲の内部は上昇流となっており、雲の中の温度はまわりより⾼くなっている。
(b) 夏季に地表付近が⾼温となることにより発達する積乱雲では、降⽔過程に氷粒⼦が関わらない「暖かい⾬」であることが多い。
(c) 積乱雲からの降⽔粒⼦は落下する時に周囲の空気を引きずり降ろし、下降気流が⽣じる。落下途中に乾燥した気層があると降⽔粒⼦は蒸発し、空気が冷えて重くなり下向きの⼒が働くため、下降気流はより強化される。
(d) マルチセル型あるいはスーパーセル型と呼ばれる積乱雲が数時間にわたって維持されるためには、環境場の⾵の鉛直シアーの存在が重要である。
本問は、日本付近で発生する積乱雲に関する問題です。
積乱雲は、大雨・雷・突風・竜巻といった激しい気象現象をもたらす雲で、メソスケールの気象現象を語るうえで欠かせない存在です。
本問では、その積乱雲について「雲が発達するメカニズム」「雨を降らせる仕組み」「強い下降流が生まれる理由」「長時間維持される条件」という、積乱雲のライフサイクル全体にわたる4つの論点が問われています。
それぞれの選択肢で問われている内容を、一つひとつ丁寧に確認していきましょう。
予備知識:積乱雲のライフサイクル
積乱雲は、強い上昇気流によって鉛直方向に著しく発達した雲で、その高さは10kmを超えて、ときには成層圏にまで達することがあります。
水平方向の広がりは数km〜十数kmと比較的小さく、一つの積乱雲がもたらす降水現象は、30分〜1時間程度の局地的な範囲にとどまります。
積乱雲は、外から見ると1個の大きな雲のかたまりに見えますが、その内部には複数の積乱雲(降水セル)が共存していることがあります。
個々の降水セルは、次の3つの段階を経て一生を終えるのが一般的です。
- 成長期(発達期):雲が上方へ伸びていく段階。雲の中はすべて上昇流。
- 成熟期(最盛期):雲頂が対流圏上部に達し、強い雨が地上に降る段階。上昇流と下降流が共存。
- 減衰期(消滅期):上昇流が弱まり、下降流が支配的になって雲が衰える段階。

それでは、選択肢を1つずつ見ていきましょう。
本問の解説:(a) について
(問題)積乱雲の成長期において雲が上方に発達していくとき、雲の内部は上昇流となっており、「雲の中の温度はまわりより高くなっている」。
→ 答えは 正 です。
成長期の積乱雲では、雲の内部全体が上昇流になっています。
このとき、雲の中ではなにが起こっているのでしょうか。
雲の中では、上昇する空気塊の中の水蒸気が凝結(水蒸気→水)して雲粒(水滴)となり、さらにその雲粒が凝固(水→氷)して氷粒子となります。
この凝結や凍結のような相変化が起こるときには、空気塊に潜熱が放出されます。
潜熱が放出された結果、雲の内部の気温が周囲の気温よりも上昇することになります。
雲の中の温度がまわりより高くなると、その空気塊は周囲よりも軽くなり、浮力を得て自発的に上昇できるようになります。
これが、成長期の積乱雲の内部で強い上昇流が維持される理由です。
てるるん雲の中で水蒸気が凝結したり水が凍ったりすると、潜熱という熱が出てくるんだよ!その熱で雲の中が周囲より暖かくなって、軽くなって浮き上がるんだよ!



だから雲の中はずっと上昇流なんだね!
なお、成長期の積乱雲の上昇流は非常に強く、その速さは強いときには30m/sに達することもあります。
したがって、積乱雲の成長期において雲が上方に発達していくとき、雲の内部は上昇流となっており、雲の中の温度はまわりより高くなっていますので、答えは 正 となります。
本問の解説:(b) について
(問題)夏季に地表付近が高温となることにより発達する積乱雲では、「降水過程に氷粒子が関わらない『暖かい雨』であることが多い」。
→ 答えは 誤 です。
雨は、降水の過程で氷粒子を経て形成されるかどうかで、次の2種類に分けられます。
- 冷たい雨:降水の過程で 氷粒子(氷晶・雪・あられなど)を経て形成される 雨。氷粒子が融けて雨粒になるか、氷粒子のまま地上付近で融解して雨になる。
- 暖かい雨:降水の過程で氷粒子が形成されず、雲粒どうしが衝突・併合して大きな雨粒となって落ちてくる 雨。熱帯など雲全体が0℃よりも高い温度の領域にある場合に限られる。


では、夏季に地表付近が高温となって発達する積乱雲はどちらでしょうか。
夏季に発達する積乱雲は、強い上昇流をともなって雲頂が対流圏上部、しばしば対流圏界面(高度10km以上)にまで達し、水平方向に広がって かなとこ雲 を形成することがあります。
対流圏界面付近の気温は通常 -50℃以下 で、ここまで持ち上げられた雲粒はすべて凍結して 氷晶 となっています。
形成された氷晶は、雲の中を落下しながら成長して 雪片 や あられ となり、気温が0℃となる高度よりも上では氷の粒子のまま落下を続け、気温が0℃となる高度よりも下まで来ると融解して雨となります。
このように、夏季に発達する積乱雲では、ほとんどの場合、雨は 氷粒子を経て形成される ことになります。
日本で降る雨は、約80% が氷粒子を介する「 冷たい雨 」であるといわれています。



夏の局地的大雨(ゲリラ豪雨)も「冷たい雨」なんだね!



そのとおり!雲の上の方では氷の粒ができていて、それが落ちてくる途中で融けて雨になっているんだよ!
したがって、夏季に地表付近が高温となることにより発達する積乱雲は、降水過程に氷粒子が関わらない「暖かい雨」ではなく、降水過程に氷粒子が関わる「冷たい雨」であることが多いので、答えは 誤 となります。
本問の解説:(c) について
(問題)積乱雲からの降水粒子は落下する時に周囲の空気を引きずり降ろし、下降気流が生じる。落下途中に乾燥した気層があると「降水粒子は蒸発し、空気が冷えて重くなり下向きの力が働くため、下降気流はより強化される」。
→ 答えは 正 です。
成熟期の積乱雲では、強い上昇流と下降流が共存しており、地上では大雨・雷・突風・竜巻といった激しい気象現象がもたらされます。
この下降流は、どのように形成されるのでしょうか。
まず、積乱雲の中で形成された雨粒や氷粒子は、ある程度の大きさになると上昇流に支えきれなくなって落下し始めます。
このとき、降水粒子は摩擦によって周囲の空気を引きずり降ろすため、下向きの空気の流れ、すなわち 下降気流 がつくられます。
では、落下する降水粒子が 乾燥した気層 に達するとどうなるでしょうか。
乾燥した空気の中では、雨粒は急激に 蒸発(氷粒子は 昇華)します。
蒸発や昇華が起こると、液体や固体から気体への相変化のため、まわりの空気から 蒸発熱 や 昇華熱 が奪われます。
熱を奪われた空気は冷却され、温度が下がった分だけ 密度が大きく(重く) なります。
重くなった空気にはより強い下向きの力が働くので、下降気流はますます強化されることになります。
さらに、降水粒子の中にあられやひょうといった氷粒子が含まれている場合は、これらが融けるときに 融解熱 も奪われるので、空気は一層冷えて重くなり、下降気流はさらに強くなります。



乾燥した空気の中に雨粒が落ちてくると、雨粒は蒸発して、まわりの空気から熱を奪うんだよ!熱を奪われた空気は冷えて重くなって、ますます勢いよく下に落ちていくんだよ!



雲の下の空気が乾いているほど、下降流が強くなるんだね!
こうして強化された下降流は、地上付近に達して水平方向に広がっていき、地上付近で激しい突風( ダウンバースト )をもたらします。
雲底下の空気が乾燥しているほど、ダウンバーストは発生しやすくなります。
したがって、積乱雲からの降水粒子は落下する時に周囲の空気を引きずり降ろし、下降気流が生じ、落下途中に乾燥した気層があると降水粒子は蒸発し、空気が冷えて重くなり下向きの力が働くため、下降気流はより強化されますので、答えは 正 となります。
本問の解説:(d) について
(問題)マルチセル型あるいはスーパーセル型と呼ばれる積乱雲が数時間にわたって維持されるためには、「環境場の風の鉛直シアーの存在が重要である」。
→ 答えは 正 です。
孤立した積乱雲(単一セル)の寿命は、ふつう 30分〜1時間程度 です。
これは、降水セルが成熟期になると、雲の中で発生した下降流が下層からの上昇流を抑制してしまい、暖かく湿った空気が雲に流入できなくなって雲が衰えてしまうからです。
一方で、数時間にわたって維持され、ときには竜巻やダウンバーストといった激しい突風害をもたらす長寿命の積乱雲も存在します。それが、マルチセル型積乱雲 と スーパーセル型積乱雲 です。


マルチセル型積乱雲は、発達段階の異なる複数の積乱雲が規則的に並んでいる積乱雲群のことです。
成熟期から減衰期にかけての積乱雲から発生する下降流は、地表面近くで水平に広がり、周囲の暖かく湿った空気を持ち上げて、次々と新しい積乱雲を発生させます。
こうして積乱雲が世代交代を繰り返すため、雲群全体としての寿命は数時間以上に及びます。


スーパーセル型積乱雲は、直径が数十kmにも及ぶ単一の巨大な積乱雲で、その内部では 上昇流の発生場所と下降流の発生場所が空間的に分離している という特徴があります。
このため、下降流が上昇流を直接打ち消すことがなく、長時間にわたって強い上昇流が維持されます。


では、これらの長寿命の積乱雲が維持されるための重要な条件とは何でしょうか。
マルチセル型・スーパーセル型のいずれにおいても、強い上昇流を維持するための条件は、積乱雲に下層から流入する 暖かく湿った上昇流 と、積乱雲からの降水にともなう 冷たい下降流 が、空間的に分離して存在する ことにあります。
そして、上昇流と下降流を空間的に分離させる役割を果たすのが、積乱雲の周囲の 環境場の風の鉛直シアー(高度によって風向や風速が変化していること)です。
高度ごとに風の向きや強さが異なると、雲の中で発生した下降流は風に流されて上昇流の位置からずれた場所に落ちることになり、上昇流の流入を妨げません。



まわりの風に鉛直シアーがあると、下降流が上昇流から離れた場所に落ちてくれるから、積乱雲が長く維持できるんだよ!



上昇流と下降流の場所が分かれていれば、互いに邪魔しないんだね!
したがって、マルチセル型あるいはスーパーセル型と呼ばれる積乱雲が数時間にわたって維持されるためには、環境場の風の鉛直シアーの存在が重要ですので、答えは 正 となります。
以上より、本問の解答は、(a) 正 (b) 誤 (c) 正 (d) 正 とする 2 となります。
書いてある場所:P207〜220(積乱雲)
書いてある場所:P389〜398(積乱雲)
書いてある場所:P338〜343(積乱雲)
書いてある場所:P140〜145(積乱雲)
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。
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