問11
気象庁が公表している⽇本域の気候の⻑期変動の評価結果について述べた次の⽂ (a) 〜 (c) の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。
(a) ⽇本国内の気象庁の観測点における⼤気中の⼆酸化炭素の濃度は 2010年代に 500ppm を超え、さらに上昇が続いている。
(b) 1901年から2024年までの期間に観測された降⽔量の統計では、⽇降⽔量が 100mm 以上の⽇数と⽇降⽔量が1mm 未満の⽇数はいずれも有意に増加している。
(c) 1908年以降のデータによると、⽇本近海の全海域を平均した年平均海⾯⽔温は、100年あたり2℃以上の割合で上昇している。
本問は、日本域の気候の長期変動に関する問題です。
本問の解説:(a) について
(問題)日本国内の気象庁の観測点における大気中の二酸化炭素濃度は2010年代に500ppmを超え、さらに上昇が続いている。
→ 答えは 誤 です。
気象庁では、大気中の二酸化炭素濃度を国内3地点で観測しています。
- 綾里(読:りょうり)(岩手県大船渡市)
- 南鳥島(東京都小笠原村)
- 与那国島(沖縄県八重山郡)※2024年3月末で観測終了
下図は、この3地点における大気中の二酸化炭素濃度の月平均値の経年変化を示したものです。

出典:気象庁「大気中二酸化炭素濃度の経年変化」および
出典:文部科学省・気象庁「日本の気候変動2025 ー大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書ー」
上図を見ると、観測が始まった1987年頃には約350ppmだった二酸化炭素濃度が、季節変動がありながら(=上下にジグザグ変動しながら)増加し続け、2010年代の半ば(2015年前後)には400ppmを超えていることがわかります。
しかし、直近の二酸化炭素濃度でも 420〜430ppm程度 で、500ppmは超えていません。
なお、大気中の二酸化炭素濃度が季節ごとにジグザグ変動しているのは、主に陸上生物圏(植物、動物、土の中の微生物(細菌や菌類)など)によるものです。
夏は植物の光合成がさかんになって二酸化炭素が吸収されるため濃度が下がり、冬は植物の呼吸や、落ち葉などを分解する微生物の活動が優勢になって濃度が上がります。
観測している3地点のうち、最も北にある 綾里 で季節変動が最も大きくなっています。
これは、北半球では緯度が高い地域ほど陸上の生物の活動に季節差があり、それが二酸化炭素濃度の変動にも表れるからです。
一方、ほぼ同じ緯度にある与那国島と南鳥島を比べると、夏はどちらもほぼ同じ濃度ですが、冬は与那国島の方が高くなります。
夏は海の上でよく混ざり合った空気が両地点に流れ込むため差が出にくいのですが、冬は事情が違います。
アジア大陸では、人間活動による排出や、植物の呼吸・微生物による分解によって二酸化炭素濃度が高くなっています。
その大陸の空気が、冬の季節風に乗って大陸に近い与那国島へ流れ込みやすいため、濃度が高くなるのです。
したがって、日本国内の気象庁の観測点における大気中の二酸化炭素濃度は2010年代に「500ppm」ではなく「400ppm」を超え、さらに上昇が続いていますので、答えは 誤 となります。
本問の解説:(b) について
(問題)1901年から2024年までの期間に観測された降水量の統計では、日降水量が100mm以上の日数と日降水量が1mm未満の日数はいずれも有意に増加している。
→ 答えは 正 です。
日降水量100mm以上の年間日数
下図は、全国51地点平均の日降水量100mm以上の年間日数の経年変化を示したものです。

文部科学省・気象庁「日本の気候変動2025 ー大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書ー」
上図を見ると、1地点あたりの年間日数は1900年代初頭に約0.8日だったのが、直近では約1.2日にまで増加していることが分かります。
具体的には、統計期間1901~2025年で100年あたり 0.31日 増加し、信頼水準99%で統計的に有意となっています。
また、最近30年間(1996~2025年)の平均年間日数(約1.17日)は、統計期間の最初の30年間(1901~1930年)の平均年間日数(約0.84日)と比べて 約1.4倍 に増加しています。
ここでいう「信頼水準99%で統計的に有意」とは、もし本当は変化していないとしたら、観測されたような右肩上がりの傾向がたまたま現れる確率は1%未満しかない、という意味です。
てるるん簡単にいうと、「ほぼ確実に増加傾向ですよ」って統計的にお墨付きが出ているということだよ!



なるほど!「たまたまそう見えているだけ」じゃなくて、「本当に増えている」って自信を持って言える状態なんだね!
これが、問題文にある「 有意に増加 」の意味です。
日降水量1mm未満の年間日数
下図は、全国51地点平均の日降水量 1.0 mm未満の年間日数の経年変化を示したものです。


日数の変化。棒グラフ(緑)は各年の年間日数の合計を有効地点数の合計で割った値(1 地点当たりの年間
日数)を示す。折れ線(青)は 5 年移動平均値を、直線(赤)は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾
向)を示す。
出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」および
文部科学省・気象庁「日本の気候変動2025 ー大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書ー」
上図を見ると、1地点あたりの日降水量 1.0 mm未満の年間日数は 100年あたり9.2日 の割合で増加しており、こちらも統計的に有意な増加傾向(信頼水準 99%で統計的に有意)を示しています。
以上の結果から、日本では極端な大雨の頻度が増える反面、降水がほとんどない日も増加しており、雨の降り方が極端になってきていることが分かります。



大雨の日も、雨が降らない日も、両方が増えているってことだね!
したがって、日降水量100mm以上の日数と日降水量1mm未満の日数は、いずれも有意に増加していますので、答えは 正 となります。
本問の解説:(c) について
(問題)1908年以降のデータによると、日本近海の全海域を平均した年平均海面水温は、100年あたり2℃以上の割合で上昇している。
→ 答えは 誤 です。
下図は、日本近海の海域平均海面水温(年平均)の上昇率(℃/100年)(左図)と海域区分(右図)を示したものです。


文部科学省・気象庁「日本の気候変動2025 ー大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書ー」
上図の左図の左上をみると、日本近海における2025年までの海域平均海面水温(年平均)の上昇率は、100年あたり+1.36℃ となっていることが分かります。
要因としては、地球温暖化による長期的な昇温傾向が主な背景にあり、特に大陸に近い海域では陸域の温暖化の影響を受けて上昇率が大きくなっていると考えられます。
また、海面水温は地球温暖化の影響だけでなく、冬季の季節風の強弱と深く関連した十年規模の自然変動、黒潮などの海流の変化、太平洋十年規模振動(PDO)に関連する海洋内部の水温変動なども重なり合って変化していることが、上昇率を押し上げる一因となっていると考えられます。
したがって、1908年以降のデータによると、日本近海の全海域を平均した年平均海面水温は、100年あたり「2℃以上」ではなく「1.36℃」の割合で上昇していますので、答えは 誤 となります。
以上より、本問の解答は、(a) 誤 (b) 正 (c) 誤 とする 4 となります。
書いてある場所:ー
書いてある場所:ー
書いてある場所:ーあ
書いてある場所:P177〜179(二酸化炭素の終始と変化の傾向)
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
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