【第59回】2023年1月試験（学科一般試験）問７（絶対渦度の保存）

本問は、絶対渦度の保存に関する問題です。

前提知識：渦度について

まずは、渦度について理解しておきましょう。

渦度（読：うずど）とは、大気の回転方向と回転の速さを表す物理量です。

大気の流れはまっすぐ進むものだけではなく、回転しているものもあります。

この回転している状態を表すものが渦度です。

また、回転方向には、反時計回り（正）と時計回り（負）があり、

回転が速いほど、渦度が大きいと表現します。

相対渦度 とは、低気圧や高気圧など、風の曲率やシアによって生じる渦度のことです。

相対渦度は下式で表されます。

なぜ上式で表されるかは、下記記事を読んでみてください。

惑星渦度 とは、地球の自転によって生じる渦度のことです。

緯度φにある空気塊の惑星渦度は下式で表されます。

sin90°= 1、sin0°= 0 なので、惑星渦度は、緯度が高いほど大きく、極（北極・南極）では最大、赤道ではゼロとなります。

絶対渦度 とは、相対渦度と惑星渦度の和のことです。

絶対渦度は、大気中に粘性や水平収束・発散がなければ近似的に保存されます。

これを 絶対渦度保存則 といいます。

（絶対渦度保存則は、流体の運動方程式、特に渦度方程式から導かれます。粘性や水平収束・発散がない大気中では、渦度は時間的に変化しない保存量であることが証明されています。また、地球の自転を考慮に入れると、絶対渦度が保存されることが示されますが、細かい証明は気象予報士試験の範囲外なので省略します。）

本問の解説：(a)について

（問題）一般に、地球上の空気塊の絶対渦度は、地球の自転による渦度と相対渦度の和で表され、粘性や水平収束・発散がなければ近似的に保存される。北極点にある10km四方の領域内の空気塊を考え、その周りの風の分布が図のように与えられているとする。この領域の中では空気塊の相対渦度が一様とすると、空気塊の相対渦度は (a) である。

→ 答えは 2.0×10^-4 /s です。

相対渦度は下式で求めることができます。（北向き、東向きが正）

この式に、問題の数値を代入すると

となりますので、答えは 2.0×10^-4 /s となります。

本問の解説：(b)について

（問題）この空気塊が絶対渦度を保存したまま北緯30°まで南下したとき、空気の相対渦度は約 (b) となる。（ただし、渦度はその鉛直成分を指し、緯度φにある空気塊の地球の自転による渦度は 1.46×10-4×sinφ[/s] 、sin30°= 0.5 である。）

→ 答えは 2.7×10^-4/s です。

絶対渦度とは、惑星渦度（地球の自転による渦度）と相対渦度の和であり、問題文より、緯度φにある空気塊の地球の自転による渦度は 1.46×10^-4×sinφ[/s] と与えられています。

本問で考えている空気塊は北極点にありますので、北極点（＝緯度90°）での絶対渦度は、

となります。（sin90°＝ 1）

一方、空気塊が北緯30°まで南下した時の絶対渦度は、相対渦度を ζ₃₀ とすると、

となります。（sin30°＝ 0.5）

これらが等しいので、求める ζ₃₀ は

となります。

したがって、答えは 2.7×10^-4/s となります。

本問の解説：(c)について

（問題）すなわち空気塊の相対渦度は北緯30°に南下すると (c) ことがわかる。

→ 答えは 強まる です。

問題 (a) より、北緯90°( ＝北極点 ) での相対渦度は 2.0×10^-4 /s であり、

問題 (b) より、北緯30°での相対渦度は 2.7×10^-4 /s であることが分かりました。

したがって、空気塊の相対渦度は北緯30°に南下すると強まりますので、答えは 強まる となります。

以上より、本問の解答は、(a) 2.0×10^-4/s (b) 2.7×10^-4/s (c) 強まる とする ４ となります。