【第61回】2024年1月試験(学科専門試験)問11(海陸風)

問11

日本における海陸風について述べた次の文 (a) ~ (d) の正誤について、下記の1~5の中から正しいものを1つ選べ。

(a) 風の弱い晴れた日に発生する海陸風循環は、海面上と陸面上の気温の高低が昼夜で逆転することにより、1日周期の変化が卓越する。

(b) 一般に、海風は陸風に比べて風の吹く層の厚さが厚く、風速も大きい。

(c) 一般に、明瞭な海風循環は冬季より夏季の方が出現しやすい。

(d) 晴天日の日中に内部に向かって吹く海風は、大気下層で水平収束をもたらし、雷雨などの不安定性降水を発生させる要因となることがある。

   





解説

本問は、日本における海陸風に関する問題です。

本問の解説:(a)について

(問題)風の弱い晴れた日に発生する海陸風循環は、海面上と陸面上の気温の高低が昼夜で逆転することにより、1日周期の変化が卓越する。

→ 答えは です。

海陸風循環 とは、1日を周期として、日中は海から陸に向かう風(海風)、夜間は陸から海に向かう風(陸風)が吹く現象です。

この現象は、気圧傾度が小さく、穏やかで晴れた日の海岸近くで起こります。

海陸風
画像:浜島書店 理科便覧ネットワーク「海陸風」をもとに作成

海陸風循環が起こる要因は、陸上と海上の暖まり方の違いにあります。

は比熱(=物質が暖まる速度)小さいため、日中はすぐに暖まりますが、夜になると急速に冷えます

一方、は比熱が大きいため、暖まりにくく冷えにくいという特徴があります。

日中、日射により、陸上の気温が海上より高くなると、陸上で気圧が低く海上で気圧が高くなります。

このとき、陸上で上昇気流が発生し、それを補うために海上から陸上に風(海風)が吹きます。

また、上空では海向きの風になり、地表面近くでは海上から陸上、上空では陸上から海上への循環した流れ(海風循環)が形成されます。

逆に、夜になると、日射の影響がなくなり、陸上の気温が海上より低くなるため、陸上から海上に向かう風(陸風)が吹きます。

また、上空では陸向きの風になり、地表面近くでは陸上から海上、上空では海上から陸上への循環した流れ(陸風循環)が形成されます。

このように、昼夜で陸上と海上の気温が逆転することが、海陸風循環を生じさせる要因となります。

海陸風循環は、陸上が日射で暖められることによって発生しますので、晴れて風が弱い日によく見られ、1日周期で安定して変化します。

したがって、風の弱い晴れた日に発生する海陸風循環は、海面上と陸面上の気温の高低が昼夜で逆転することにより、1日周期の変化が卓越しますので、答えは となります。

本問の解説:(b)について

(問題)一般に、海風は陸風に比べて風の吹く層の厚さが厚く、風速も大きい。

→ 答えは です。

一般に、海風は陸風に比べて風の吹く層が厚く風速も大きくなります。

これは主に日射による地表面の加熱と、陸上と海上の温度差が関係しています。

海風の場合

日中は日射により、地表面が加熱されますが、陸上の方が(比熱が小さいので)海上よりも強く加熱されます。

この加熱によって、陸上の気温が大きく上昇し、陸上と海上の温度差が大きくなります。

これにより、気圧差も大きくなり、結果として、風の吹く層が厚く風速も大きくなります。

ごく大まかにいうと、海風の最大風速は約5~6m/sであり、風が吹く層の厚さは約 200 ~ 300 mに達します。

陸風の場合

夜間になると、陸上が急激に冷やされることで、陸上と海上の温度差が小さくなります。

これにより、気圧差も小さくなり、結果として、風の吹く層が薄く風速も小さくなります。

ごく大まかにいうと、陸風の最大風速は約2~3 m/s程度で、風が吹く層の厚さは約 50 ~ 100 mほどです。

したがって、一般に、海風は陸風に比べて風の吹く層の厚さが厚く、風速も大きくなりますので、答えは となります。

本問の解説:(c)について

(問題)一般に、明瞭な海風循環は冬季より夏季の方が出現しやすい。

→ 答えは です。

海風は、日射で陸上が強く加熱されることによってできる、陸上と海上の温度差によって発生します。

つまり、陸上がより強く加熱されるほど、陸上と海上の温度差が大きくなり、海風も発生しやすくなります。

このため、日射が強い夏の方が、冬よりも海風が起こりやすくなります。

さらに、海風は晴れて風が弱い日に発生しやすいため、北風が強く吹く冬よりも、高気圧に覆われて風が弱い夏の方が、明瞭な海風が出現しやすいのです。

したがって、一般に、明瞭な海風循環は冬季より夏季の方が出現しやすいので、答えは となります。

本問の解説:(d)について

(問題)晴天日の日中に内部に向かって吹く海風は、大気下層で水平収束をもたらし、雷雨などの不安定性降水を発生させる要因となることがある。

→ 答えは です。

下図のように、海風の先端部陸上の大気の間では、風や露点温度、気温などが不連続的に変わっていることがあり、これを 海風前線 といいます。

海風前線
画像:一般気象学 [第2版] 著:小倉義満
P243 図8.35「海風前線とそれに伴う流れの模式図」をもとに作成。

海風前線付近では、大気下層で水平収束が起こり、地面から暖められた空気が上昇しますので、雷雨などの不安定性降水を発生させる要因になることがあります。

てるるん

ちなみに、海風前線は「前線」という言葉を使っているけど、温帯低気圧に伴う温暖前線や寒冷前線とは関係ない局地的な前線だよ!

日本では、夏の関東平野の内陸部などで、このような局地的な前線が形成して雷雨が発生することがあります。

したがって、晴天日の日中に内部に向かって吹く海風は、大気下層で水平収束をもたらし、雷雨などの不安定性降水を発生させる要因となることがありますので、答えは となります。

以上より、本問の解答は、すべて正しい とする となります。

ここに書いてあるよ
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書いてある場所:P242〜247(海陸風、海風前線)


書いてある場所:P418〜419(海陸風)


書いてある場所:P346〜348(海陸風)、P351(海風前線)


書いてある場所:P146〜147(海陸風)


書いてある場所:P270〜271(海陸風)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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