実技1の前提条件
次の資料を基に以下の問題に答えよ。ただし、UTC は協定世界時を意味し、問題文中の時刻は特に断らない限り中央標準時(日本時)である。中央標準時は協定世界時に対して9時間進んでいる。なお、解答における字数に関する指示は概ねの目安であり、それより若干多くても少なくてもよい。
XX 年1月22日から23日にかけての日本付近における気象の解析と予想に関する以下の問いに答えよ。予想図の初期時刻は、いずれも1月22日9時(00UTC)である。
図1は地上天気図、図2は気象衛星赤外画像、図3(上) は 500hPa 解析図、図3(下) は 850hPa と 700hPa の解析図、図4は 925hPa と 850hPa の解析図、図5は館野(茨城県つくば市)の状態曲線と風の鉛直分布で、時刻はいずれも22日9時である。これらを用いて以下の問いに答えよ。
問1(3)
東京上空の気象状態は館野と同じであるとして、図5を用いて以下の問いに答えよ。
① 東京上空での気温が0℃ となる高度とその高度での湿数を、高度は 10hPa 刻み、湿数は1℃ 刻みで答えよ。
② 図1によれば、東京の地上気温は3℃ とプラスとなっているが、東京の天気は雨ではなく雪となっている。この要因として考えられる東京上空の大気の状態について、解答用紙に示した書き出しも含めて 30 字程度で述べよ。
答え
本問は、東京上空の気象状態に関する問題です。
本問の解説:① について
(問題)東京上空での気温が0℃ となる高度とその高度での湿数を、高度は 10hPa 刻み、湿数は1℃ 刻みで答えよ。
→ 答えは 高度 970 hPa 湿数 6 ℃ です。
問題文で「東京上空の気象状態は館野と同じである」としていることから、本問では、館野の状態曲線を、東京上空の状態として読み取ります。
図5 (下図) において、気温が0℃となる高度を 10hPa 刻みで読み取ると 970 hPa であることが分かります。
また、その高度での露点温度は−6℃ですので、湿数 (=気温−露点温度) は (0℃−(−6℃)=) 6℃ となります。
本問の解説:② について
(問題)図1によれば、東京の地上気温は3℃ とプラスとなっているが、東京の天気は雨ではなく雪となっている。この要因として考えられる東京上空の大気の状態について、解答用紙に示した書き出しも含めて 30 字程度で述べよ。
→ 答えは ② 東京上空では、気温が0℃ 以上の層が薄く、かつ乾燥している。(29字) です。
大気の相対湿度が 100% の場合、雪片は気温が0℃ の高さを通過するとすぐに溶け始めます。
しかし、相対湿度が 100% 未満の場合は、雪片が気温0℃ 以上の大気に入っても、すぐには溶けません。
これは、雪片の表面で氷が水蒸気に昇華する際、その過程で発生する潜熱によって、雪片やその周囲の空気が冷却されるためです。
この冷却効果によって、雪片の温度が0℃ を超えにくくなり、溶けにくくなります。
つまり、気温が0℃ 以上であっても、その層が薄く、大気が乾燥している場合、雪片は地上に達するまで溶けず、地上の気温が0℃ を超えていても雪として観測されることがあるのです。
図5 (下図) によると、東京では気温0℃ となる高度が 970hPa と低く、それ以下の層では湿数が大きく乾燥していることが分かります。
また、地上付近の気圧は、一般に、高度 100m 当たり約 12hPa 低下します。
図1 (下図) の等圧線より、東京の地上気圧は約 1020hPa ですので、1020hPa−970hPa=50hPaより、気温0℃以上の層は約 600m 以下と薄いことも分かります。
このため、東京の地上気温が3℃ とプラスであるにもかかわらず、雨ではなく雪が降ったのです。
したがって、答えは 東京上空では、気温が0℃ 以上の層が薄く、かつ乾燥している。 となります。
以上より、本問の解答は ① 高度 970 hPa 、湿数 6 ℃ ② 東京上空では、気温が0℃ 以上の層が薄く、かつ乾燥している。となります。
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
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