実技1の前提条件
次の資料を基に以下の問題に答えよ。ただし、UTC は協定世界時を意味し、問題文中の時刻は特に断らない限り中央標準時(日本時)である。中央標準時は協定世界時に対して9時間進んでいる。なお、解答における字数に関する指示は概ねの目安であり、それより若干多くても少なくてもよい。
XX 年1月22日から23日にかけての日本付近における気象の解析と予想に関する以下の問いに答えよ。予想図の初期時刻は、いずれも1月22日9時(00UTC)である。
図6と図7は 500hPa と地上の 12、24 時間予想図、図8は 850hPa と 700hPa の 12、24 時間予想図で、初期時刻はすべて22日9時である。これらと図1と図3を用いて以下の問いに答えよ。
問2(4)
図6(下) と図7(下) によると、12 時間後までに日本海中部で新たな低気圧が発生し、その後、急速に発達する予想となっている。この低気圧に関して、以下の問いに答えよ。
① 図6と図7を用いて、12 時間後と 24 時間後における、この低気圧から見たトラフAとの最短距離とその方向を、距離は 100km 刻み、方向は8方位で答えよ。
② この低気圧の発達に関わるトラフAの 12 時間後から 24 時間後にかけての推移について、低気圧との位置関係を含めて 35 字程度で述べよ。
③ 図8(上) を用いて、この低気圧の 12 時間後から 24 時間後にかけての発達を示唆する 850hPa 面の温度移流と 700hPa 面の鉛直流の分布の特徴について、鉛直流は値を付して 60 字程度で述べよ。
答え
本問は、日本海中部で発生・発達する低気圧に関する問題です。
本問の解説:① について
(問題)図6と図7を用いて、12 時間後と 24 時間後における、この低気圧から見たトラフAとの最短距離とその方向を、距離は 100km 刻み、方向は8方位で答えよ。
→ 答えは下記の通りです。
下図のように、実技試験において、おおよその距離を測るには、緯度の長さを基準にする方法が便利です。
緯度 10 度の距離は、どの経度でも 600 海里 ( 約 1,111 km ) であり、緯度1度は 60 海里 ( 約 111 km ) ですので、地図上で距離を測るときは、これを基準にすると、おおよその距離が分かります。
緯度10度の距離は 600海里 ( 約1,111km ) で
緯度1度の距離は 60海里 ( 約111km ) だね!
ただし、多くの地図の図法では、緯度線の間隔が場所によって異なります。
そのため、測定する地点の近くにある緯度線の間隔を使って計算する必要があります。
では、実際に距離を測ってみましょう。
下図は、図6(上) ( 500hPa の 12 時間予想図) に、図6(下) (地上の 12 時間予想図) の日本海中部にある地上低気圧の中心位置を「×」で描き加え、それぞれの長さを測ったものです。
上図において、日本海中部の地上低気圧の中心と、トラフAとの最短距離を結び、その長さを測ると約 22 mmとなります。
トラフAや低気圧は、40N ( 北緯40度 ) 付近に予想されていますので、周辺の 30N と 50N の間の長さ ( 緯度 20 度 ≒ 2,222km ) を基準にして計算しましょう。
30N と 50N の長さを軽度線に沿って測ると、約 77 mmとなります。
したがって、12 時間後における地上低気圧とトラフAの最短距離は、( 22mm ÷ 77mm ) × 2,222km ≒ 635km で、100km 刻みで答えると、 600 (700) km となります。
(↑読み取り誤差を考えて 700km も正解となっています。)
また、下図のように、最短距離を結ぶ線と、経度線のなす角から、低気圧から見たトラフAとの最短距離の方向は 北西 となります。
24 時間後については、問2(2) で求めたトラフの位置を使用します。
下図のように、図7の 500hPa と地上の 24 時間予想図を用いて、先ほどと同様の方法で求めると、低気圧から見たトラフAとの最短距離は ( 13mm ÷ 77mm ) × 2,222km ≒ 375km で、100km 刻みでは 400 (300) km、その方向は 南西 (西) となります。
本問の解説:② について
(問題)この低気圧の発達に関わるトラフAの 12 時間後から 24 時間後にかけての推移について、低気圧との位置関係を含めて 35 字程度で述べよ。
→ 答えは トラフAは、深まりながら南東進し、低気圧の西側から低気圧に接近する。(34字) です。
下図のように、トラフAは 12 時間後から 24 時間後にかけて南東に進み、トラフ周辺の等高線の曲率も大きくなる予想です。
また、12 時間後も 24 時間後もトラフ Aは、低気圧の進行方向後面である西側に位置していますが、その距離は 問題 ① で求めたように、低気圧に接近してくる予想です。
したがって、トラフAの 12 時間後から 24 時間後にかけての推移について、低気圧との位置関係を含めて記述すると、トラフAは、深まりながら南東進し、低気圧の西側から低気圧に接近する。となります。
本問の解説:③ について
(問題)図8(上) を用いて、この低気圧の 12 時間後から 24 時間後にかけての発達を示唆する 850hPa 面の温度移流と 700hPa 面の鉛直流の分布の特徴について、鉛直流は値を付して 60 字程度で述べよ。
→ 答えは 低気圧の東側で暖気移流、西側で寒気流が予想され、低気圧の東側では最大で−41hPa/hの上昇流が予想されている。(57字) です。
下図 ( 850hPa と 700hPa の 12 時間予想図) によると、850hPa 面では、低気圧の東側では等温線を横切って高温側から低温側に風が吹く暖気移流が、低気圧の西側では、等温線を横切って低温側から高温側に風が吹く寒気移流が予想され、地上の低気圧を中心に低気圧性循環 (反時計回りの回転) となっていることが分かります。
また、700hPa 面では、低気圧の周辺は上昇流域で、東側には最大で −41hPa/h の上昇流が予想されています。
一般に、総観スケールの低気圧は、上層トラフに伴う上昇流が、下層に低気圧性循環(低気圧)を形成することで生まれます。
この低気圧は、低気圧性循環に伴う温度移流(進行方向前面で暖気移流、後面で寒気移流)によって、温度場の変形と鉛直運動が励起され、低気圧性循環がさらに強まることで発達します。
上図に示した状況は、このような経過の途中であり、低気圧の発達を示唆する特徴と言えます。
したがって、低気圧の 12 時間後から 24 時間後にかけての発達を示唆する 850hPa 面の温度移流と 700hPa 面の鉛直流の分布の特徴について、鉛直流は値を付して記述すると、低気圧の東側で暖気移流、西側で寒気流が予想され、低気圧の東側では最大で−41hPa/hの上昇流が予想されている。となります。
以上より、本問の解答は下記のようになります。
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。
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