【第61回】2024年1月試験(実技1)問3(2)(鉛直シアーの解析)

実技1の前提条件

次の資料を基に以下の問題に答えよ。ただし、UTC は協定世界時を意味し、問題文中の時刻は特に断らない限り中央標準時(日本時)である。中央標準時は協定世界時に対して9時間進んでいる。なお、解答における字数に関する指示は概ねの目安であり、それより若干多くても少なくてもよい。

XX 年1月22日から23日にかけての日本付近における気象の解析と予想に関する以下の問いに答えよ。予想図の初期時刻は、いずれも1月22日9時(00UTC)である。

図9は22日15時~23日3時に八丈島のウィンドプロファイラで観測された高層風時系列図である。この図と図6~図8を用いて以下の問いに答えよ。ただし、この期間の気象実況は図6~図8の予想どおりに経過しているものとする。

問3(2)

図9で22日の15時から18時頃にかけて見られる高度 0.7km と1km の間の鉛直シアーと最も関連しているものを、下の枠内から1つ選び記号で答えよ。

答え
解説

本問は、鉛直シアーと大気現象との関係を判断する問題です。

本問の解説

(問題)図9で 22日の 15時 から 18時頃 にかけて見られる高度 0.7km と1km の間の鉛直シアーと最も関連しているものを、下の枠内から1つ選び記号で答えよ。

→ 答えは です。

同一地点で異なる高度の風を地衡風と仮定すると、それぞれの風向の違いから、これらの層が挟む気層の温度移流を判断することができます。

具体的には、風向が上空に向かって時計回りに変化する場合は 暖気移流 となり、風向が上空に向かって反時計回りに変化する場合は 寒気移流 となります。

▼ 温度風については、下記記事で詳しく解説していますので、よければご覧ください。▼

では、本問を見てみましょう。

上図の22日15時~18時頃の鉛直シアーに注目すると、下層 (高度0.7km) 東寄りの風上層 (高度1km) 南寄りの風となっており、風向が上空に向かって時計回りに変化しているため、暖気移流 となっていることが分かります。

また、問3(1) (下図) で求めたように、22日9時に九州の南にあった低気圧は、22日21時より少し前に八丈島の南側を通過しています。

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このことから、22日15時~18時頃に観測された 暖気移流 は、この低気圧の 温暖前線 に伴う 暖気移流 であると推測することができます。

以上より、本問の解答を記号で答えると となります。

てるるん

問題を解くだけならこれで終わりでいいけど、より理解を深めるために、他の選択肢では、なぜダメなのかも確認しておこう!

イ:ガストフロント

ガストフロント とは、積乱雲からの冷たい下降気流が水平に吹き出し、周囲の暖かい空気と衝突した際にできる、上昇気流を伴った小規模な前線のことです。

ガストフロント

これは別名:冷気外出流 とも呼ばれ、その名の通り、冷たい空気が周囲の暖かい空気を押し出すように移動するため、ガストフロントが通過する時は、結果的に 寒気移流 となります。

寒気移流の時は、風向が上空に向かって反時計回りに変化するため、本選択肢は誤りとなります。

ウ:寒冷前線

寒冷前線が通過する時は、寒気移流 になっているはずです。

寒気移流の時は、風向が上空に向かって反時計回りに変化するため、本選択肢は誤りとなります。

エ:沈降逆転層

沈降逆転層 とは、主に高気圧圏内での下降気流によって大気が圧縮され、気温が上昇することで発生する逆転層です。

沈降逆転層

しかし、本問では、22日21時より少し前に、低気圧が八丈島の南側を通過していることが分かっているため、本選択肢は誤りとなります。

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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