問6
気象庁の気温ガイダンスについて述べた次の文 (a) 〜 (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。
(a) 気温ガイダンスは、数値予報モデルの改良等により予測特性が変化した場合でも、逐次学習によって予測式の係数が時間経過とともに変化し、モデルの予測誤差を低減することができる。
(b) 数値予報モデルでは海陸の区別が実際と一致していない格子点がある。気温ガイダンスは、海陸の区別の不一致に起因するモデルの予測誤差を低減することができる。
(c) 数値予報モデルが寒冷前線の通過のタイミングを正しく予測できない場合でも、気温ガイダンスは気温が低下するタイミングを正しく補正して予測することができる。
本問は、気象庁の気温ガイダンスに関する問題です。
本問の解説:(a) について
(問題)気温ガイダンスは、数値予報モデルの改良等により予測特性が変化した場合でも、逐次学習によって予測式の係数が時間経過とともに変化し、モデルの予測誤差を低減することができる。
→ 答えは 正 です。
気温ガイダンスはカルマンフィルタを用いて、逐次学習により予測式の係数を求めています。
カルマンフィルタ とは、過去の推定値と現在の観測値を組み合わせて、誤差を含むデータから正確な値を逐次的に推定する時系列解析の手法です。
ガイダンスにおいては、説明変数と目的変数を結びつける係数を逐次学習する手法として利用されています。
また、カルマンフィルタの予測式は線形式であり、目的変数と説明変数が線形関係の場合に利用できます。
このため、数値予報モデルの予測特性が変化した場合でも、約2〜3週間程度で予測特性の変化に対応して係数が逐次自動的に更新されるため、数値予報モデルの予測誤差を低減することができます。
したがって、気温ガイダンスは、数値予報モデルの改良等により予測特性が変化した場合でも、逐次学習によって予測式の係数が時間経過とともに変化し、モデルの予測誤差を低減することができますので、答えは 正 となります。
本問の解説:(b) について
(問題)数値予報モデルでは海陸の区別が実際と一致していない格子点がある。気温ガイダンスは、海陸の区別の不一致に起因するモデルの予測誤差を低減することができる。
→ 答えは 正 です。
数値予報モデルでは、実際の地形や海陸の分布を完全に再現することは難しく、モデルの分解能によって地形や海陸の区別が簡略化されています。
このため、小さな島や海岸線の細かい凹凸が再現されず、実際には陸地である格子点が、モデル上では海上扱いとなることがあります。
例えば、下図のように、MSMの地形では伊豆諸島の新島は表現されておらず海になっています。

このような場合、数値予報モデルがその地点の気温を計算するときは、海水温の影響を大きく受けてしまい、誤差が大きくなってしまいます。
しかし、このような数値予報の予報誤差は、数値予報に特有な系統的なもの(系統誤差)であるため、ガイダンスの統計的な関係式によって補正することができます。
したがって、数値予報モデルでは海陸の区別が実際と一致していない格子点がありますが、気温ガイダンスでは、海陸の区別の不一致に起因するモデルの予測誤差を低減することができますので、答えは 正 となります。
本問の解説:(c) について
(問題)数値予報モデルが寒冷前線の通過のタイミングを正しく予測できない場合でも、気温ガイダンスは気温が低下するタイミングを正しく補正して予測することができる。
→ 答えは 誤 です。
ガイダンス(気温予想ではカルマンフィルタ)において、数値予報モデルの系統誤差は補正できますが、ランダム誤差(系統誤差ではない誤差)は補正できません。
例えば、数値予報の結果で寒冷前線の通過のタイミングを正しく予測できない場合には、カルマンフィルタでは気温が低下するタイミングを補正して予測することはできません。
これらを正しく予測するためには、初期値や数値予報モデルの改良が必要です。
したがって、数値予報モデルが寒冷前線の通過のタイミングを正しく予測できない場合、気温ガイダンスは気温が低下するタイミングを正しく補正して予測することが「できる」ではなく「できません」ので、答えは 誤 となります。
以上より、本問の解答は、(a) 正 (b) 正 (c) 誤 とする 2 となります。
書いてある場所:P278〜285(ガイダンス、系統的誤差、MOS、PPM)、P286〜289(カルマンフィルタ、ニューラルネットワーク)
書いてある場所:P124〜130(ガイダンス、系統的誤差、MOS、PPM、カルマンフィルタ、ニューラルネットワーク)
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
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