問2
気象庁のウィンドプロファイラは、真上および真上から東西南北に10°程度傾けた、5つの方向に電波を発射し、散乱されて戻ってくる電波のドップラー効果を利用して上空の風向・風速を測定している。
表は、晴れた日の時刻 A および時刻 B において、ある高度で測定された各方向のドップラー速度を示したものである。この表に基づき、時刻 A および時刻 B それぞれにおける風向と、時刻 A の風速 VA と時刻 B の風速 VB の大小関係を示した式の組み合わせとして、適切なものを下記の1〜5の中から1つ選べ。ただし、ドップラー速度は観測点から遠ざかる方向を正とし、真上から東西南北に傾けた電波の発射角度は4方向とも10°とする。また、 \( \scriptsize \sqrt{2} \) = 1.4、sin10°= 0.17 とする。

本問は、ウィンドプロファイラのデータから風向・風速を推定する問題です。
ウィンドプロファイラ とは、上空の風向・風速を測定する装置のことです。

具体的には、地上から上空に向かって5つの方向(鉛直方向と東西南北)に電波を発射します。
発射された電波は、大気の乱れや降水粒子など(=散乱体)に当たって散乱されますが、その際、これらの散乱体が風に流されているため、ドップラー効果により、戻ってくる電波の周波数がわずかに変化します。
この周波数の変化を利用して、風向・風速を測定します。
(ちなみに、ウィンドプロファイラとは「ウィンド(風)のプロファイル(横顔・側面図)を描くもの」という意味です。)
本問の解説:時刻Aの風向について
(問題)表は、晴れた日の時刻 A および時刻 B において、ある高度で測定された各方向のドップラー速度を示したものである。この表に基づき、時刻 A の風向を求めよ。ただし、ドップラー速度は観測点から遠ざかる方向を正とし、真上から東西南北に傾けた電波の発射角度は4方向とも10°とする。また、 \( \scriptsize \sqrt{2} \) = 1.4、sin10°= 0.17 とする。

→ 答えは 南東 です。
ドップラー速度の向きは、ビームの方向(傾き=10°)なので、本来は鉛直成分を含んでいます。
しかし、真上方向のドップラー速度は表から0m/sなので、鉛直成分について考える必要はありません。
このため、風速の水平成分は下図のように V/sin10°で求めることができます。

つまり、ウィンドプロファイラから遠ざかる風の成分を正、近づく風の成分を負とすると、時刻Aにおける風向は下図のようになります。

そうすると、北向きに 4/sin10°[m/s]、西向きに 4/sin10°[m/s]を観測していますので、合成すると VA は南東風になります。
したがって、時刻Aの風向は 南東 となります。
本問の解説:時刻Bの風向について
(問題)表は、晴れた日の時刻 A および時刻 B において、ある高度で測定された各方向のドップラー速度を示したものである。この表に基づき、時刻 B の風向を求めよ。ただし、ドップラー速度は観測点から遠ざかる方向を正とし、真上から東西南北に傾けた電波の発射角度は4方向とも10°とする。また、 \( \scriptsize \sqrt{2} \) = 1.4、sin10°= 0.17 とする。

→ 答えは 南 です。
時刻Aの風向を求めた時と同様に、風の成分を描くと下図のようになります。

時刻Bでは、東西成分がなく、北向きに5/sin10°[m/s]を観測していますので、VB は南風になります。
したがって、時刻Bの風向は 南 となります。
本問の解説:時刻Aと時刻Bの風速の大小関係
(問題)表は、晴れた日の時刻 A および時刻 B において、ある高度で測定された各方向のドップラー速度を示したものである。この表に基づき、時刻 A の風速 VA と時刻 B の風速 VB の大小関係を求めよ。ただし、ドップラー速度は観測点から遠ざかる方向を正とし、真上から東西南北に傾けた電波の発射角度は4方向とも10°とする。また、 ( \scriptsize \sqrt{2} ) = 1.4、sin10°= 0.17 とする。

→ 答えは VA > VB です。
時刻Aの風速 VA と、時刻Bの風速 VB をそれぞれ求めると、下図のようになります。

したがって、VA の方が VB より風速が大きいので、答えは VA > VB となります。
以上より、本問の解答は、(時刻Aの風向) 南東 (時刻Bの風向) 南 (時刻Aと時刻Bの風速の大小関係) VA > VB とする 1 となります。
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