問3
地点 \( \text{A}\)、\( \text{B}\)、\( \text{C}\) における地上(高度0m)から高度1000mまでの気層の気温の平均値がそれぞれ \( T_\text{A}\)、\( T_\text{B}\)、\( T_\text{C}\) 、混合比がそれぞれ \(q_\text{A}\)、\( q_\text{B}\)、\( q_\text{C}\) であり、また、\( T_\text{A}<T_\text{B}=T_\text{C} \) かつ \( q_\text{A}=q_\text{B}<q_\text{C} \) となっている。各地点の地上気圧が等しいとき、地点 \( \text{A} \)、\( \text{B} \)、\( \text{C} \) における高度1000mの気圧 \( P_\text{A} \)、\( P_\text{B} \)、\( P_\text{C} \) の大小関係として正しいものを下記の1〜5の中から1つ選べ。ただし、いずれの地点でも大気は静力学平衡の状態にあり、重力加速度は一定とする。
混合比(予備知識)
混合比(読:こんごうひ)とは湿潤空気に含まれる「水蒸気の質量」と「乾燥空気の質量」の比のことです。
簡単に言うと、水蒸気を含んでいる湿った空気の中で、乾燥空気と水蒸気が何:何の割合で存在しているかを表したものだよ!
式で書くとこうなります。
\(\text{混合比}=\displaystyle\frac{\text{水蒸気質量 [g]}}{\text{乾燥空気質量 [㎏]}}\)
乾燥空気は湿潤空気より重い(予備知識)
乾燥空気は湿潤空気より重い
上の図を見ながら一緒に考えてみよう!
乾燥空気は約78%が窒素N2(分子量28)で、約21%が酸素O2(分子量32)です。
ですので、乾燥空気の平均分子量は29(28 × 0.78 + 32 × 0.22)となります。
一方、水蒸気はH2Oなので分子量は18です。
アボガドロの法則(=すべての気体は同温・同圧のとき、同体積中に同数の分子を含んでいるという法則)より、乾燥空気塊であっても、湿潤空気塊であっても、同温・同圧・同体積の空気には、同じ数の分子が含まれます。
ここでは簡単のため、同温・同圧・同体積の空気塊に5個の分子が含まれているとしましょう。
このとき、乾燥空気塊の分子量は160(29 × 5)で、湿潤空気塊の分子量は123(29 × 3 + 18 × 2)なので、乾燥空気塊は湿潤空気塊より重くなります。
本問の解説:\( P_\text{A} \) と \( P_\text{B} \) の大小関係について
(問題)地点 \( \text{A}\)、\( \text{B}\) における地上(高度0m)から高度1000mまでの気層の気温の平均値がそれぞれ \( T_\text{A}\)、\( T_\text{B}\)、混合比がそれぞれ \(q_\text{A}\)、\( q_\text{B}\) であり、また、\( T_\text{A}<T_\text{B} \) かつ \( q_\text{A}=q_\text{B} \) となっている。各地点の地上気圧が等しいとき、地点 \( \text{A} \)、\( \text{B} \) における高度1000mの気圧 \( P_\text{A} \)、\( P_\text{B} \) の大小関係を求めよ。
→ 答えは \( P_\text{A} < P_\text{B} \) です。
気温差(\( T_\text{A} < T_\text{B} \))は、空気の膨らみによる気圧差を生じます。
混合比は同じ(\( q_\text{A} = q_\text{B} \))なので、空気分子の重さによる気圧差は生じません。
上図の例では、Aの混合比は \( \frac{4}{6} = \frac{2}{3} \) で、Bの混合比は \( \frac{2}{3} \) なので、混合比は同じです。
ですので、地点 \( \text{A} \) 、\( \text{B} \) 間では、空気の膨らみによる気圧の大小関係を求めます。
空気は暖められると膨張して軽くなるから、気圧は低くなるよ!
逆に、冷えると圧縮して重くなるから、気圧は高くなるよ!
したがって、\( T_\text{A} < T_\text{B} \) より、地点 \( \text{B} \) の空気の方が膨張して軽くなっているので、\( P_\text{A} < P_\text{B} \) となります。
本問の解説:\( P_\text{B} \) と \( P_\text{C} \) の大小関係について
(問題)地点 \( \text{B}\)、\( \text{C}\) における地上(高度0m)から高度1000mまでの気層の気温の平均値がそれぞれ \( T_\text{B}\)、\( T_\text{C}\)、混合比がそれぞれ \(q_\text{B}\)、\( q_\text{C}\) であり、また、\( T_\text{B}=T_\text{C} \) かつ \( q_\text{B}<q_\text{C} \) となっている。各地点の地上気圧が等しいとき、地点 \( \text{B} \)、\( \text{C} \) における高度1000mの気圧 \( P_\text{B} \)、\( P_\text{C} \) の大小関係を求めよ。
→ 答えは \( P_\text{B} < P_\text{C} \) です。
気温は同じ(\( T_\text{B} = T_\text{C} \))なので、空気の膨らみによる気圧差は生じません。
混合比差(\( q_\text{B} < q_\text{C} \))は、空気分子の重さによる気圧差を生じます。
ですので、地点 \( \text{B} \) 、\( \text{C} \) 間では、空気分子の重さによる気圧の大小関係を求めます。
混合比が大きいということは、水蒸気を多く含んでいるということだから、空気は軽くなるよ!
逆に、混合比が小さいと、乾燥空気の方が多くなるから、空気は重くなるよ!
上図の例では、空気塊bの混合比 \( q_\text{B} \) は \( \frac{4}{3} \) で、空気塊cの混合比 \( q_\text{C} \) は \( \frac{6}{1} \) なので、空気塊cの混合比 \( q_\text{C} \) の方が大きく、空気塊bより軽いです。
次に、計算を簡単にするため、乾燥空気の分子量を2、水蒸気の分子量を1として考えてみましょう。
すると、地上〜分子量8の位置(地点Bは 1 × 2 + 2 × 3 = 8、地点Cは 1 × 6 + 2 × 1 = 8)で等圧線を引くと、地点 \( \text{C} \) の方が等圧線の高度が高くなります。
言い換えると、空気塊cの方が軽いので、同じ高度でみた時に気圧が高くなります。
したがって、\( q_\text{B} < q_\text{C} \) より、地点 \( \text{C} \) の空気の方が軽いので、\( P_\text{B} < P_\text{C} \) となります。
以上より、\( P_\text{A} < P_\text{B} \) かつ \( P_\text{B} < P_\text{C} \) であるため、答えは \( P_\text{A} < P_\text{B} < P_\text{C} \) となります。
質問をもらったので追加で解説したよ!
下のリンクから補足の解説を見てみてね!
気柱の重さが一番軽い\( P_\text{C} \)が、気圧が1000mで一番高いというところが、理解できません。
気圧は空気の重さと考えていますが、混乱します。
↓回答はこちらをチェック↓
書いてある場所:P61(混合比)
書いてある場所:P48〜49(混合比)
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コメント
コメント一覧 (2件)
私は資格勉強中の者です。
分からないところがあったので失礼します。
私は、BとCの比較の時に、
混合比qBよりqCの方が大きいため、空気塊Cの方が密度が小さくなり、気圧の比較も、PC<PBだと考えました。
本当に同じ高度で比べると、気圧が高くなるのは、密度の小さいCの空気塊なのでしょうか?P=ρRTとは別の考え方があるのでしょうか?
恐れいりますが、教えて頂けると幸いです。
はる様
コメントありがとうございます。
本問では、高度1000mでの気圧PA、PB、PCの大小関係を求めます。
また、地上(高度0m)から高度1000mまでの混合比はqC>qBなので、
地上(高度0m)から高度1000mまでの空気の密度は
(空気塊Cの密度)<(空気塊Bの密度)となります。
密度が小さいということは、空気が軽いということですので、
地上(高度0m)から高度1000mまでの空気の重さは
(空気塊Cの重さ)<(空気塊Bの重さ)となります。
気圧=空気の重さなので、単純に考えると
気圧もPC<PBとなりそうですよね。
しかし、地上気圧が同じという点に着目します。
地上気圧が同じということは、地上からはるか上空(例えば、高度数十kmくらい)までの
空気の重さが同じということです。
先ほど求めたように(空気塊Cの重さ)<(空気塊Bの重さ)ですので
地上(高度0m)から高度1000mまでの気圧をそれぞれPC’、PB’とすると、
PC’<PB’となります。
仮に、地上気圧を1000hPa、PC’=50hPa、PB’=100hPaとして考えてみましょう。
PB、PCは、高度1000mでの気圧(つまり、高度1000mからはるか上空までの空気の重さ)ですので、
PB=地上気圧 – PB’
=1000hPa – 100hPa
=900hPa
PC=地上気圧 – PC’
=1000hPa – 50hPa
=950hPa
となり、PB < PC となります。