【第64回】2025年8月試験(学科専門試験)問4(パラメタリゼーション)

問4解答速報アンケートの正答率 59.3%普通

気象庁が現在運⽤している数値予報モデルのパラメタリゼーションについて述べた次の⽂ (a) 〜 (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。

(a) 全球モデルでは、積雲の効果をパラメタリゼーションにより取り込むことで、個々の積雲の発達、衰弱を予測している。

(b) メソモデルは全球モデルに⽐べ解像度が⾼いが、⼤気境界層中の様々な渦の振る舞いを⼗分表現することができないため、⼤気境界層過程のパラメタリゼーションを⽤いている。

(c) 局地モデルは⽔平格⼦間隔2km の⾮静⼒学モデルであり、個々の積乱雲の予測ができるため、積雲対流パラメタリゼーションは⽤いていない。

   





解説

本問は、気象庁の数値予報モデルにおけるパラメタリゼーションに関する問題です。

全球モデル」「メソモデル」「局地モデル」という気象庁の3つの数値予報モデルについて、それぞれが扱える現象のスケールと、パラメタリゼーションの使われ方が問われています。

モデルの解像度(格子間隔)現象のスケールの関係を正しく理解できているかが試されています。

それでは、選択肢を1つずつ見ていきましょう。

パラメタリゼーション(予備知識)

数値予報モデルは、大気を3次元の格子に区切って、それぞれの格子点で気温・風向・風速などの物理量を計算しています。

このとき、格子間隔より小さなスケールの現象(サブグリッドスケールの現象)は、格子点の物理量として直接表現することができません

簡単にいうと、格子間隔が5kmの場合、それより小さい数kmの積雲などは「格子の網目をすり抜けてしまう」ということです。

サブグリットスケールの現象の模式図
気象庁「令和7年度数値予報解説資料集」をもとに作成

しかし、こうした小さな現象も、大気の状態に重要な影響を与えています。

例えば、積乱雲の中では水蒸気が凝結して大量の潜熱が放出され、大気を加熱します。

また、地表面付近の乱流は熱や水蒸気を上空へ輸送する役割を担っています。

これらの効果を無視してしまうと、数値予報の精度は大きく低下してしまいます。

そこで、サブグリッドスケールの現象が格子点の物理量にもたらす効果を、格子点の値を用いて近似的に評価する手法が用いられています。

これを パラメタリゼーション といいます。

てるるん

サブグリッドスケールの現象を直接は計算できないけど、その「効果」だけを格子点の値に反映させる工夫だよ!

てるらん

小さな現象一つひとつは表現できないけど、その効果はちゃんとモデルに反映されてるんだね!

パラメタリゼーションでは、以下のような物理過程が扱われています。

数値予報モデルの物理過程の模式図
気象庁「令和元年度(2019年度)数値予報研修テキスト 第4章「数値予報モデル」」をもとに作成

下表は、上図に示されているパラメタリゼーションの物理過程を整理したものです。

物理過程内容
短波放射太陽放射の反射・吸収、エーロゾルによる散乱・吸収
長波放射地球放射の放出・吸収
積雲水の相変化(凝結・蒸発)に伴う潜熱の放出や、上昇流による熱・水蒸気・運動量の鉛直輸送
雲物理雲粒や雨粒、氷晶などの生成・成長・落下に関する過程
降水雨や雪などが地表面まで落下する過程
大気境界層乱流による熱・水蒸気・運動量の鉛直輸送
地表面地表面での放射収支、地表面と大気の間の顕熱・潜熱の交換
重力波抵抗山岳にぶつかった風が発生させる山岳波が上空の大気に与える影響

また、本問で問われている気象庁の数値予報モデルは以下の3つです。

モデル名水平格子間隔主な役割
全球モデル(GSM)約13km全世界の気象予測(1日4回実行)
メソモデル(MSM)5km日本及びその近海の詳細予測(1日8回実行)
局地モデル(LFM)2km日本周辺のさらに詳細な予測(1日24回実行)
気象庁の主な数値予報モデルの水平格子間隔

それでは、これらの予備知識をもとに各選択肢を見ていきましょう。

本問の解説:(a) について

(問題)全球モデルでは、積雲の効果をパラメタリゼーションにより取り込むことで、個々の積雲の発達、衰弱を予測している。

→ 答えは です。

全球モデルの水平格子間隔は 約13km ですが、積雲の水平スケールは 数km〜10km程度 です。

つまり、積雲は全球モデルの格子間隔よりも小さい現象であるため、個々の積雲を全球モデルで直接表現することはできません。

てるらん

13kmの格子の中に、数kmの積雲が複数収まってしまうから、1つひとつの積雲は格子の網目をすり抜けちゃうんだね・・・

そこで全球モデルでは、積雲対流パラメタリゼーション を導入することで、積雲対流に伴う熱・水蒸気・運動量の鉛直方向の再配分(凝結による潜熱放出や、上昇流に伴う水蒸気の輸送など)を、格子点の物理量に反映させています。

ただし、この手法はあくまで「積雲群が大気に及ぼす効果を統計的に取り込む」ものであって、個々の積雲の発生・発達・衰弱を予測するものではありません。

てるるん

パラメタリゼーションは「積雲のおおまかな影響をまとめて反映させる」仕組みであって、「積雲そのものを描き出す」ものではないんだよ!

したがって、問題文のうち「個々の積雲の発達、衰弱を予測している」の部分は誤りで、正しくは「個々の積雲の発達、衰弱は予測できない」となりますので、答えは となります。

本問の解説:(b) について

(問題)メソモデルは全球モデルに⽐べ解像度が⾼いが、⼤気境界層中の様々な渦の振る舞いを⼗分表現することができないため、⼤気境界層過程のパラメタリゼーションを⽤いている。

→ 答えは です。

大気境界層 とは、地表面の影響(摩擦や熱)を直接受ける高度約1km以下の大気層のことです。

簡単にいうと、地表面と「自由大気」の間にある、地面の影響を受けやすい層のことです。

大気境界層と自由大気

この大気境界層の中では、地表面の摩擦や日射加熱の影響で 乱流 が活発に発生しており、乱流の渦が 熱・水蒸気・運動量 を鉛直方向に輸送しています。

ここで重要なのが、乱流の渦の水平スケールは 数cm〜数百m 程度 と非常に小さいことです。

メソモデルの水平格子間隔は5km ですので、全球モデル(約13km)よりも解像度は高いものの、乱流の渦よりは依然としてはるかに大きく、渦の振る舞いを直接表現することはできません。

てるらん

解像度が高いといっても、5kmの格子の中で起こっている数百mの渦は、やっぱり格子の網目をすり抜けちゃうんだね!

そこで、メソモデルを含む気象庁の数値予報モデルでは、大気境界層過程のパラメタリゼーション を用いて、乱流による熱・水蒸気・運動量の鉛直輸送量を計算し、格子点の物理量に反映させています。

(なお、これは局地モデル(格子間隔2km)でも同様で、格子間隔が小さくなっても乱流の渦のスケールはそれよりさらに小さいため、大気境界層過程のパラメタリゼーションは必要となります。)

てるるん

解像度が高くても「足りない」ことがある、というのが大事なポイントだよ!

したがって、メソモデルは全球モデルに⽐べ解像度が⾼いですが、⼤気境界層中の様々な渦の振る舞いを⼗分表現することができないため、⼤気境界層過程のパラメタリゼーションを⽤いていますので、答えは となります。

本問の解説:(c) について

(問題)局地モデルは⽔平格⼦間隔2km の⾮静⼒学モデルであり、個々の積乱雲の予測ができるため、積雲対流パラメタリゼーションは⽤いていない。

→ 答えは です。

局地モデル(LFM)水平格子間隔2kmの非静力学モデルですので、問題文の前半は正しいです。

問題は、「個々の積乱雲の予測ができる」「積雲対流パラメタリゼーションは用いていない」 という後半の部分です。

ここでカギになるのが、実効解像度 という考え方です。

数値予報モデルでは、格子点の値はその格子内の平均的な状態を表しているため、モデルが精度よく表現できる現象のスケール(実効解像度)は、格子間隔そのものではなく、格子間隔の5〜8倍程度 とされています。

つまり、局地モデル(格子間隔2km)の場合、精度よく表現できるのは「2km × 5〜8 = 10〜16km以上のスケール」の現象に限られます。

一方、個々の積乱雲のスケールは数km程度 で、局地モデルの実効解像度よりも小さいため、局地モデルでも個々の積乱雲を直接予測することはできません。

てるらん

格子間隔が2kmだから数kmの積乱雲も表現できそうな気がするけど、実際にちゃんと表現できるのは10km以上のスケールなんだね!

そのため、局地モデルでも、メソモデルと同様に積雲対流パラメタリゼーション が用いられています。

てるるん

技術の進歩でモデルの解像度が上がっても「個々の積乱雲を直接予測する」レベルにはまだ届かないから、現時点ではまだパラメタリゼーションが必要なんだよ!

したがって、問題文のうち「個々の積乱雲の予測ができるため、積雲対流パラメタリゼーションは⽤いていない」の部分は誤りで、正しくは「個々の積乱雲の予測はできず、積雲対流パラメタリゼーションを用いている」となりますので、答えは となります。

以上より、本問の解答は、(a) (b) (c) とする となります。

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書いてある場所:P199〜202(数値予報)


書いてある場所:ー


書いてある場所:P270〜276(パラメタリゼーション)


書いてある場所:P318〜321(パラメタリゼーション)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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