問14解答速報アンケートの正答率 85.2%簡単
台⾵によって発⽣する災害に関連する事項について述べた次の⽂ (a) 〜 (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。
(a) 台⾵に伴う強い⾵により、海⽔の⾶沫が陸上の植物や送電施設に付着して塩害が発⽣することがある。このとき、⼀般に、降⽔量が多いほど塩害の被害も⼤きくなる。
(b) 気象庁では、⾼潮による災害が発⽣するおそれがある場合には、天⽂潮位からの偏差を発表基準として⾼潮警報・注意報を発表している。
(c) 台⾵が温帯低気圧に変わる過程では、中⼼から離れた地域で⾵が強くなったり、強⾵域が広がったりすることがある。
本問は、台風によって発生する災害に関連する事項についての問題です。
塩害、高潮警報・注意報、温帯低気圧化の過程といった、台風がもたらす様々な災害事象について問われています。
それでは、選択肢を1つずつ見ていきましょう。
本問の解説:(a) について
(問題)台⾵に伴う強い⾵により、海⽔の⾶沫が陸上の植物や送電施設に付着して塩害が発⽣することがある。このとき、⼀般に、降⽔量が多いほど塩害の被害も⼤きくなる。
→ 答えは 誤 です。
塩害(塩風害)とは、台風に伴う強い風によって海面で砕けた波から海水の飛沫が舞い上がり、それが風で陸上に運ばれて、植物や電線・がいし(電線を支える磁器製の絶縁体)などの送電施設に塩分が付着することで生じる気象災害のことです。

簡単にいうと、台風の風が海から塩を運んできて、植物を枯らしたり電気を流れにくくしたりしてしまう気象災害です。

ここで大事なのは、塩害の程度を左右するのは、付着した塩分が洗い流されるかどうかということです。
降水量が多い場合は、付着した塩分が雨で洗い流されるので、塩害の被害は小さくなります。
逆に、降水量が少ない場合は、塩分が長時間にわたって付着したままになるので、塩害の被害は大きくなります。
てるらん強い風がたくさんの塩を運んでくる方が、塩害もひどくなりそうな気がするんだけど・・・



気持ちはわかるよ!でも、塩害の大きさを決めるのは「運ばれてくる塩の量」だけじゃなくて、「付着した塩がそのまま残るかどうか」なんだよ!雨が少ないと洗い流されずに残ってしまうから、被害が大きくなるんだよ!


したがって、塩害の被害が大きくなるのは「降水量が多い」ときではなく「降水量が少ない」ときですので、答えは 誤 となります。
本問の解説:(b) について
(問題)気象庁では、⾼潮による災害が発⽣するおそれがある場合には、天⽂潮位からの偏差を発表基準として⾼潮警報・注意報を発表している。
→ 答えは 誤 です。
天文潮位とは、月や太陽の引力によってほぼ1日に1〜2回の割合で周期的に繰り返される、満潮と干潮の海面の高さのことです。
簡単にいうと、台風や低気圧がなくても自然に上下する、暦の上で前もって計算できる潮位のことです。
潮位偏差とは、実際の潮位と天文潮位の差のことで、台風や低気圧に伴う「吹き寄せ効果」や「吸い上げ効果」によって海面が押し上げられた分に相当します。
すなわち、実際の潮位は天文潮位と潮位偏差の和で表されます。
実際の潮位 = 天文潮位 + 潮位偏差
そして潮位を表すときの基準面には、全国共通の 東京湾平均海面(TP:Tokyo Peil) が用いられます。
これは標高(海抜)の基準と同じ基準面です。
高潮災害が発生するのは、実際の海面が防潮堤や防波堤を超える高さまで上昇したときです。
したがって、災害発生のおそれを判断する基準としては、潮位そのものが東京湾平均海面(TP)からどれだけの高さに達するかを用いる必要があります。
仮に「天文潮位からの偏差(=潮位偏差)」を発表基準にしてしまうと、同じ潮位偏差でも天文潮位が高い大潮の満潮時には実際の潮位が極めて高くなる一方、干潮時には実際には浸水のおそれが小さいことになり、災害発生のおそれを正しく表せません。



「潮位偏差が大きい=高潮の影響が強い」って指標だから、それを発表基準にすればいいような気がするけど・・・



いい着眼点だよ!でも、災害が起こるかどうかを左右するのは「実際に海面がどれくらいの高さまで上がるか」なんだよ!だから気象庁は、東京湾平均海面(TP)を基準にした 絶対的な高さ(標高) で発表基準を決めているんだよ!
実際に、三大湾の高潮警報基準値は次のように、東京湾平均海面(TP)を基準とした標高(潮位)で定められています。
| 湾名(都府県) | 警報基準値(潮位:TP上) |
|---|---|
| 東京湾(東京都) | 4.0m(ただし、品川区・港区2.4m、大田区3.0m、江戸川区3.1m) |
| 伊勢湾(愛知県) | 1.8〜3.3m |
| 大阪湾(大阪府) | 2.2m |
上表のように、警報基準は 東京湾平均海面(TP)からの高さ として標高で示されており、「天文潮位からの偏差」ではないことが分かります。
下図は、平成30年(2018年)の台風21号が大阪湾で高潮をもたらしたときの潮位の変化を示したものです。


上図を見ると、9月4日14時頃に実際の 潮位(青線) が急上昇し、最高で約330cmに達しています。
これに対して 天文潮位(オレンジ線) はおよそ50cm程度で緩やかに推移しているのみで、潮位を大きく押し上げているのは台風による吹き寄せ効果や吸い上げ効果であることが分かります。
そして、高潮警報基準(赤い水平線:約220cm) や 高潮注意報基準(黄色い水平線:約150cm) は、いずれも東京湾平均海面(TP)を基準とした 絶対的な高さ(標高)として固定された水準で示されていることが読み取れます。
したがって、気象庁が発表する高潮警報・注意報の発表基準は、「天文潮位からの偏差」ではなく「東京湾平均海面(TP)を基準とした標高(潮位)」ですので、答えは 誤 となります。
本問の解説:(c) について
(問題)台⾵が温帯低気圧に変わる過程では、中⼼から離れた地域で⾵が強くなったり、強⾵域が広がったりすることがある。
→ 答えは 正 です。
台風と温帯低気圧では、エネルギー源と構造が大きく異なります。
台風は、暖かい海面から供給される水蒸気が凝結する際の潜熱をエネルギー源とするため、中心付近に風や雨が集中する 対称的な構造を持ちます。
中心付近で等圧線の間隔が最も狭くなり、強風域も中心付近に集中します。
これに対して、温帯低気圧は、寒気と暖気の温度差(位置エネルギー)をエネルギー源とするため、前線を伴う 非対称な構造を持ちます。
前線帯を挟む暖気と寒気のスケールは、単一気団からなる台風のスケールよりも大きいため、気圧分布や風分布は中心から離れた周辺領域にも広がります。





台風が温帯低気圧に変わるって聞くと、勢力が弱まって安心できるイメージがあるけど・・・



中心付近の最大風速は確かに小さくなるけど、強風域は逆に 中心から離れた周辺に広がっていく から、台風としての警戒が必要な範囲は決して狭まらないんだよ!
実際に、平成16年(2004年)の台風18号は、長崎に上陸したあとに勢力が弱まって暴風域は狭くなったものの、北海道の西で温帯低気圧に変わってから再発達し、札幌で最大瞬間風速50.2m/sを観測したほか、中心から離れた北海道東部の釧路地方でも強風が観測されました。
気象庁でも、台風から温帯低気圧に変わっても暴風を伴って災害をもたらすおそれがある場合には、台風並みの警戒を呼びかけるため、台風情報としての発表を継続することがあります。
詳しくは、気象庁の 台風情報の表示方法等の見直し案について のページで確認できます。
したがって、台風が温帯低気圧に変わる過程では、中心から離れた地域で風が強くなったり、強風域が広がったりすることがありますので、答えは 正 となります。
以上より、本問の解答は、(a) 誤 (b) 誤 (c) 正 とする 5 となります。
書いてある場所:ー
書いてある場所:ー
書いてある場所:P344〜347(気象災害)
書いてある場所:P443〜451(気象災害)
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。
また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。






コメント