問12
気象庁が発表する特別警報、警報、注意報について述べた次の文 (a) ~ (c) の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。
(a) 台風等を要因とする特別警報の指標 (発表条件) は、全国一律で、「伊勢湾台風」級の中心気圧930hPa以下又は最大風速50m/s以上の台風や同程度の温帯低気圧が来襲する場合に、暴風・高潮・波浪の特別警報が発表される。
(b) 翌日の明け方に警報級の大雨が発生する可能性が高いと予想される場合には、夕方の時点で「明け方までに警報に切り替える可能性が高い」ことに言及した大雨注意報が発表される。
(c) 洪水警報の発表基準における「指定河川洪水予報による基準」は、洪水警報と指定河川洪水予報を整合させるためのもので、指定河川洪水予報の基準観測点で「氾濫警戒情報」以上の発表基準を満たしている場合に洪水警報を発表することを意味している。
本問は、気象庁が発表する特別警報、警報、注意報に関する問題です。
本問の解説:(a)について
(問題)台風等を要因とする特別警報の指標 (発表条件) は、全国一律で、「伊勢湾台風」級の中心気圧930hPa以下又は最大風速50m/s以上の台風や同程度の温帯低気圧が来襲する場合に、暴風・高潮・波浪の特別警報が発表される。
→ 答えは 誤 です。
気象等に関する特別警報は、以下の3つに大別されます。
・雨を要因とするもの(大雨)
・台風等を要因とするもの(暴風・高潮・波浪・暴風雪)
・雪を要因とするもの(大雪)
このうち、台風等を要因とする特別警報 とは、数十年に一度の強度の台風や、同程度の温帯低気圧により、暴風・高潮・波浪・暴風雪になると予想されるときに気象庁から発表される特別警報です。
具体的には「伊勢湾台風」級(中心気圧 930 hPa以下または最大風速 50 m/s以上)の台風や、同程度の温帯低気圧が来襲する場合が発表指標とされています。
ただし、沖縄地方、奄美地方及び小笠原諸島については、中心気圧 910 hPa以下または最大風速 60 m/s以上が発表指標となっています。
したがって、台風等を要因とする特別警報の指標 (発表条件) は、全国一律ではなく、沖縄地方、奄美地方及び小笠原諸島については基準が異なり、対象は暴風・高潮・波浪だけでなく暴風雪も含まれますので、答えは 誤 となります。
本問の解説:(b)について
(問題)翌日の明け方に警報級の大雨が発生する可能性が高いと予想される場合には、夕方の時点で「明け方までに警報に切り替える可能性が高い」ことに言及した大雨注意報が発表される。
→ 答えは 正 です。
警報は、重大な災害が発生するような警報級の現象が概ね3~6時間先に予想されるときに発表されます。
また、警報級の現象が概ね6時間以上先に予想されているときには、警報の発表に先立って、警報に切り替える可能性が高い注意報が発表されます。
下図は、警報に切り替わる可能性が高い注意報の例です。
上図を見ると、洪水の危険度は、夜のはじめ頃(18~21時)から注意報級、翌日の明け方(3~6時)から警報級が予想されていることが分かります。
この注意報を発表したのは夕方(16時30分)ですので、警報級の洪水が予想される明け方(3~6時)までは猶予時間(リードタイム)が6時間以上あります。
このような場合に、「明け方までに警報に切り替える可能性が高い」ことに言及した大雨注意報が発表されます。
(ちなみに、こうした猶予時間(リードタイム)は、気象警報・注意報が防災関係機関や住民に伝わり安全確保行動がとられるまでにかかる時間を考慮して設けられていますが、現象の予想が難しい場合には、リードタイムを確保できない場合もあります。)
したがって、翌日の明け方に警報級の大雨が発生する可能性が高いと予想される場合には、夕方の時点で「明け方までに警報に切り替える可能性が高い」ことに言及した大雨注意報が発表されますので、答えは 正 となります。
本問の解説:(c)について
(問題)洪水警報の発表基準における「指定河川洪水予報による基準」は、洪水警報と指定河川洪水予報を整合させるためのもので、指定河川洪水予報の基準観測点で「氾濫警戒情報」以上の発表基準を満たしている場合に洪水警報を発表することを意味している。
→ 答えは 正 です。
洪水警報・注意報の発表基準には、「流域雨量指数による基準」と「表面雨量指数、流域雨量指数を組み合わせた基準」、「指定河川洪水予報による基準」の3つが使用されています。
(流域雨量指数とは、河川の上流域に降った雨により、どれだけ下流の対象地点の洪水危険度が高まるかを把握するための指標です。
詳しくは気象庁ホームページ「流域雨量指数」をご覧ください。)
(表面雨量指数とは、短時間強雨による浸水危険度の高まりを把握するための指標です。
詳しくは気象庁ホームページ「表面雨量指数」をご覧ください。)
指定河川洪水予報 とは、河川の増水や氾濫などに対する水防活動の判断や住民の避難行動の参考となるように、気象庁が国土交通省または都道府県の機関と共同して、あらかじめ指定した河川について、区間を決めて水位または流量を示した洪水の予報のことです。
指定河川洪水予報の標題には、氾濫注意情報、氾濫警戒情報、氾濫危険情報、氾濫発生情報の4つがあり、河川名を付して「○○川氾濫注意情報」「△△川氾濫警戒情報」のように発表します。
下図は、指定河川洪水予報の発表基準と発表された場合にとるべき対応を表した図です。
指定河川洪水予報が発表された場合は、対象となる地域に対して洪水警報・注意報を整合させて発表されます。
警戒レベル2の「氾濫注意情報」が発表された場合には、洪水注意報が発表されます。
警戒レベル3以上の「氾濫警戒情報」、「氾濫危険情報」、「氾濫発生情報」が発表された場合には、洪水警報が発表されます。
したがって、洪水警報の発表基準における「指定河川洪水予報による基準」は、洪水警報と指定河川洪水予報を整合させるためのもので、指定河川洪水予報の基準観測点で「氾濫警戒情報」以上の発表基準を満たしている場合に洪水警報を発表することを意味していますので、答えは 正 となります。
以上より、本問の解答は、(a) 誤 (b) 正 (c) 正 とする 3 となります。
書いてある場所:ー
書いてある場所:ー
書いてある場所:P365〜357(洪水注意報・洪水警報)、P371〜372(特別警報)
書いてある場所:P419〜421(警報と注意報)、P431〜432(指定河川洪水予報)
書いてある場所:P269〜272(警報・注意報)
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。
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