【第60回】2023年8月試験(学科一般試験)問3(気柱の地上気圧と温度との関係)

問3

図のように、同じ緯度で標高が等しい地点A、B、C、Dにおいて地上から大気上端までの気柱を考える。地点B、C、Dの気柱の温度は地点Aの気柱と以下の違いがあるが、これ以外の高度の温度は気柱Aと同じである。

地点B:高度2000mから上の厚さ1000mの層では、平均温度が1℃高い

地点C:高度10000mから上の厚さ1000mの層では、平均温度が1°C高い

地点D:高度2000mから上の厚さ1000mの層では、平均温度が1°C低い

このとき、地点A、B、C、Dのうち地上気圧が最も低いものを、下記の1~5の中から1つ選べ。なお、気柱内は平均温度に違いがある層の上下端付近を含めすべての場所で成層は安定で静力学平衡が成立しているものとする。

気象予報士試験_第60回_一般知識_問3
   





気象業務支援センターによる訂正

本問は、気柱の一部の空気を違う温度にしたとき、地上気圧の最も低いものを選択する問題でした。

この問題については、高さの低い(密度の高い)層の気温が1°C高い気柱Bを正解として公表していました。

しかし、気柱の一部に温度の違いを与えると、その高度の下では気圧が変化し、同時に密度もその高度と地上までの間で変化するため、地上気圧の違いは温度の違う高さから地上までの範囲の密度の変化を考慮する必要があります。

このため、正解を得るためには高度な数学的計算が必要となり、限られた時間内に正解を得ることは難しい問題となっていました。

実際に、この効果を考慮して計算すると、公表した解答例とは異なり、気柱Cの方が気Bよりも地上気圧が低くなります。

従いまして、本問については、全ての解答を正解として採点処理することとします。

受験者の皆様にはご迷惑をかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。

解説

本問の解説

(問題)図のように、同じ緯度で標高が等しい地点A、B、C、Dにおいて地上から大気上端までの気柱を考える。地点B、C、Dの気柱の温度は地点Aの気柱と以下の違いがあるが、これ以外の高度の温度は気柱Aと同じである。
地点B:高度2000mから上の厚さ1000mの層では、平均温度が1℃高い
地点C:高度10000mから上の厚さ1000mの層では、平均温度が1°C高い
地点D:高度2000mから上の厚さ1000mの層では、平均温度が1°C低い
このとき、地点A、B、C、Dのうち地上気圧が最も低いものを、下記の1~5の中から1つ選べ。なお、気柱内は平均温度に違いがある層の上下端付近を含めすべての場所で成層は安定で静力学平衡が成立しているものとする。

気象予報士試験_第60回_一般知識_問3

①:A
②:B
③:BとC
④:C
⑤:D

→ 答えは ②:B と言いたいところですが、全て正解 です。

本問は、気柱の地上気圧と温度との関係を考える問題です。

気象業務支援センターは当初、最も地上気圧が低くなるのは 地点B であると発表していました。
しかし、その後、設問自体が不適切だったとして、すべて正解 として採点したと訂正しました。

なお、本問のように静力学平衡が成立する場合の気圧と温度の関係を問う問題は、今後も頻繁に出題されることが予想されますので、正解を訂正した経緯も含めて簡単に解説します。

てるるん

まずは、空気の性質をおさらいしよう!

まず、本問を解く上で重要なポイントは以下の2つです。

ポイント

(1) ある高度の気圧は、それより上空にある空気の単位面積あたりの重さに等しい。

(2) 温度が高い空気は軽く低い空気は重い

(1)(2) より、気柱の温度が高いほど空気が軽く、地上気圧は低くなります。

つまり、地点B地点Cの気柱の温度は、地点A地点Dの気柱の温度より高いので、地点B地点Cの方が地上気圧は低くなります。

てるらん

空気は暖かいほど軽いから、気柱の温度が高い地点B地点Cが答えになりそうだね!

てるるん

その調子!
じゃあ、地点B地点Cでは、どっちの地上気圧が低くなるか考えてみよう!

空気は、上空に行くほど薄くなります。

つまり、下層(高度2000m)より、上層(高度10000m)の方が、空気の密度が小さく、軽いということです。

このため、同じ1℃の温度変化であっても、下層の温度が高い地点Bのほうが、上層の温度が高い地点Cより温度変化の影響、つまり気圧の変化は大きくなります。

したがって、地点Bの方が地点Cよりも、地上気圧の低下が大きくなるため、地上気圧が最も低いのは 地点B と考えることができます。

しかし、この説明では、温度変化のある上層(10000m~11000m)と下層(2000m~3000m)の差を比較したに過ぎず、それ以外の層については全く考慮されていません

たしかに、高度10000mにおいては、地点C地点Bに比べて、気圧が低く、密度は小さくなります。

この密度の違いは、それより下の全層に及び、地上気圧にも影響を与えます

このため、気象業務支援センターは「正解を得るためには高度な数学的計算が必要となり、限られた時間内に正解を得ることは難しい問題」として すべて正解 に訂正しました。

実際の計算には、気柱全体の温度分布を与える必要がありますが、一般的な大気の状態を考慮すると、地上気圧は地点Bではなく地点Cのほうが低くなるそうです。

てるるん

ただし、この問題の考え方は他の問題にも必ず役に立つから、しっかりマスターしておこうね!

ここに書いてあるよ
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書いてある場所:P44(静力学平衡)


書いてある場所:P127〜128(静力学平衡)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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