問1
異なる3つの観測点A、B、Cで観測した湿度等の測定結果について述べた文 (a) ~ (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。ただし、測定時の気圧はすべて1013.25hPaとし、飽和水蒸気圧は表1を用い、アスマン通風乾湿計による湿度は表2を用いて求めよ。
地点A:電気式湿度計の測定結果が70%、気温が20℃。
地点B:露点計の測定結果が15℃、気温が25℃。
地点C:アスマン通風乾温計の湿球温度が15℃、乾球温度が20℃。
(a) 大気に含まれる単位体積あたりの水蒸気量が最も少ないのは、地点Cである。
(b) 大気に含まれる単位体積あたりの水蒸気量が最も多いのは、地点Aである。
(c) 大気の相対湿度が最も低いのは、地点Bである。
本問は、地点A、B、Cにおける湿度等の測定結果から水蒸気量や相対湿度を求め、
その大きさを比べる問題です。
問題文では水蒸気量を比較するように書かれていますが、
水蒸気量と水蒸気圧は比例しますので、水蒸気量=水蒸気圧だと思ってOKです。
水蒸気量と水蒸気圧が比例する理由
水蒸気も理想気体の状態方程式に従いますので、
水蒸気(分)圧を e、
単位体積の空気に含まれる水蒸気量(水蒸気密度)を ρ、
水素気に対する気体定数を R、
気温を T とすると、
e = ρRT
が成り立ちます。
以上より、水蒸気圧 e と、単位体積あたりの水蒸気量 ρ は比例することが分かります。
本問の解説:地点Aについて
(問題)地点A:電気式湿度計の測定結果が 70 %、気温が 20 ℃。
地点Aは、電気式湿度計の測定結果が 70 %なので、地点Aの相対湿度は 70 %です。
また、気温は 20 ℃なので、表1より飽和水蒸気圧は 23.4 hPaと分かります。
この飽和水蒸気圧 23.4 hPaは、湿度 100 %、つまり飽和している時の水蒸気圧ですので、
湿度 70 %の時の水蒸気圧は、飽和水蒸気圧の 70 %となります。
したがって、地点Aの水蒸気圧は
23.4 × 0.7 = 16.4 hPa
となります。
本問の解説:地点Bについて
(問題)地点B:露点計の測定結果が 15 ℃、気温が 25 ℃。
地点Bは、露点計の測定結果が 15 ℃なので、地点Bの露点温度は 15 ℃です。
露点温度とは、空気が飽和する時の温度(=湿度 100 %の時の温度)です。
つまり、気温 25 ℃からどんどん気温を下げていって、
気温が露点温度 15 ℃に達した時に湿度 100 %となり、水蒸気の凝結が始まります。
飽和するまでは、大気に含まれる単位体積あたりの水蒸気量は変わりませんので、
地点Bの水蒸気圧は、露点温度での飽和水蒸気圧に等しくなります。
したがって、表1より、地点Bの水蒸気圧は 17.1 hPaと分かります。
また、表1より、気温 25 ℃の飽和水蒸気圧は、31.7 hPaですので、
地点Bの相対湿度は
(17.1 ÷ 31.7) × 100 = 54%
となります。
本問の解説:地点Cについて
地点C:アスマン通風乾温計の湿球温度が 15 ℃、乾球温度が 20 ℃。
地点Cは、アスマン通風乾湿計の湿球温度が 15 ℃、乾球温度が 20 ℃なので、
乾球温度と湿球温度の温度差は 5 ℃です。
表2の乾球温度 20 ℃の行と温度差 5 ℃の列から、地点Cの相対湿度は 59 %と分かります。
また、表1より気温(乾球温度)20 ℃の飽和水蒸気圧は 23.4 hPaと分かります。
したがって、地点Cの水蒸気圧は
23.4 × 0.59 = 13.8 hPa
となります。
本問の解説:(a), (b), (c)について
これまで求めた地点A、B、Cの相対湿度、水蒸気圧を整理し、問題を解いてみましょう。
地点 | 相対湿度 [%] | 水蒸気圧 [hPa] |
---|---|---|
A | 70 | 16.4 |
B | 54 | 17.1 |
C | 59 | 13.8 |
(問題)(a) 大気に含まれる単位体積あたりの水蒸気量が最も少ないのは、地点Cである。
水蒸気量が最も少ない(水蒸気圧が最も低い)のは地点Cなので、答えは 正 となります。
(問題)(b) 大気に含まれる単位体積あたりの水蒸気量が最も多いのは、地点Aである。
水蒸気量が最も多いのは(水蒸気圧が最も高い)のは地点Bなので、答えは 誤 となります。
(問題)(c) 大気の相対湿度が最も低いのは、地点Bである。
相対湿度が最も低いのは地点Bなので、答えは 正 となります。
以上より、本問の解答は (a) 正 (b) 誤 (c) 正 とする 2 となります。
書いてある場所:P58(飽和水蒸気圧)、P60(相対湿度)、P62〜63(露点温度、湿球温度)
書いてある場所:P118〜122(水蒸気圧、飽和水蒸気圧)、P126〜131(相対湿度、乾球温度、湿球温度)、P132〜136(露点温度)
書いてある場所:P94〜97(飽和水蒸気圧、露点温度、相対湿度)
書いてある場所:P41〜44(気温、湿度の観測測器)
書いてある場所:P46〜50(待機中の水分量の表現方法(飽和水蒸気圧、露点温度など))
書いてある場所:P34〜36(相対湿度、水蒸気圧、露点温度の観測)
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
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