問6
気象庁が作成している解析雨量と降水短時間予報について述べた次の文 (a) ~ (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。
(a) 解析雨量は、気象レーダーと雨量計の観測データを組み合わせて作成しているので、解析される降水量は一般に、陸上よりも海上で誤差が大きい。
(b) 1~6時間先の降水短時間予報では、降水域の移動の予測には数値予報モデルで予測された風のみを用いている。
(c) 7~15時間先の降水短時間予報は、メソモデルの降水予測の結果だけでなく、局地モデルや全球モデルの降水予測の結果も組み合わせて作成している。
本問は、気象庁が作成している解析雨量と降水短時間予報に関する問題です。
本問の解説:(a)について
(問題)解析雨量は、気象レーダーと雨量計の観測データを組み合わせて作成しているので、解析される降水量は一般に、陸上よりも海上で誤差が大きい。
→ 答えは 正 です。
解析雨量 とは、簡単にいうと、気象レーダーと、アメダスなどの雨量計を足し合わせた降水量のことです。
気象レーダーと雨量計はどちらも降水量を観測していますが、
気象レーダーは電波により降水量を推定し、
雨量計は実際に降水量を観測します。
それぞれのメリット、デメリットとしては、
気象レーダーは、海上など遠く離れた場所の降水を推定できますが、推定値なので誤差が出ることがあります。
一方、雨量計は、実測値なので正確な降水量を観測できますが、設置している場所の雨量しか観測できません。
これらのメリットの部分を組み合わせて、遠く離れた場所でも誤差の少ない雨量を解析したものが、解析雨量というわけです。
具体的には、気象レーダーで推定した降水量(推定値)を、その付近にある雨量計の観測値(実測値)で補正しています。
解析雨量は気象庁ホームページの「今後の雨(降水短時間予報)のページ」で確認できます。
時間を表すバーの灰色の時間帯が解析雨量の表示で、最新のデータのみ速報版解析雨量を表示しています。
下図は、気象庁が配置している気象レーダーの地図です。
気象レーダーは陸上に設置されており、気象レーダーからの距離が遠いほど、推定する降水量の誤差が大きくなります。
また、海上には雨量計がありませんので、解析される降水量は一般に、陸上よりも海上で誤差が大きくなります。
したがって、解析雨量は、気象レーダーと雨量計の観測データを組み合わせて作成しており、解析される降水量は一般に、陸上よりも海上で誤差が大きいので、答えは 正 となります。
本問の解説:(b)について
(問題)1~6時間先の降水短時間予報では、降水域の移動の予測には数値予報モデルで予測された風のみを用いている。
→ 答えは 誤 です。
降水短時間予報 とは、この先15時間の降水域や降水量を予想するものです。
この予報は、15時間先までの予報ですが、6時間先までと、7〜15時間先までとで発表間隔や予測手法が異なります。
6時間先までは10分間隔で発表され、各1時間降水量を1km四方の細かさで予報します。
7〜15時間先までは1時間間隔で発表され、各1時間降水量を5km四方の細かさで予報します。
6時間先までの予報は、解析雨量により得られた1時間降水量分布の移動方向と速さを利用して作成しています。
具体的には、解析雨量により得られた降水域を追跡し、それぞれの場所の降水域の移動速度を求め、この移動速度を使って直前の降水分布を移動させることで、6時間先までの降水量分布を作成しています。
(このように、時間の異なる2つの分布図の一方を少しずつ移動させて、他方に重ね合わせながら類似度を計算して、最も類似度の高い状態のときを、2つの時刻間の移動速度や移動方向(=移動ベクトル)にする手法を パターンマッチング といいます。)
また、単純に降水域を移動させるだけでなく、直前の降水の強弱などの変化や、地形の効果も照らし合わせて、今後の雨の強弱を予想しています。
(このように、過去の降水域の動きから、今後の降水域の動向を予測する手法のことを 補外予測 といいます。)
また、予報が先になるにつれて、降水域の位置や雨の強さなど、予報のずれが生じてしまうため、予報時間の後半には、コンピュータによって将来を予測する「数値予報」の結果を加味して予報を作成します。
したがって、1~6時間先の降水短時間予報では、降水域の移動の予測には数値予報モデルの予測値だけでなく、解析雨量から得られる降水域の移動速度も用いていますので、答えは 誤 となります。
本問の解説:(c)について
(問題)7~15時間先の降水短時間予報は、メソモデルの降水予測の結果だけでなく、局地モデルや全球モデルの降水予測の結果も組み合わせて作成している。
→ 答えは 誤 です。
7〜15時間先までの予報は、メソモデル (MSM) と 局地モデル (LFM) の予測結果を利用して作成しています。
6時間先までの予報は補外予測により、降水域の動きから降水の分布、地形効果から降水の強さなどを予測できますが、新たな降水域の発生や、地形効果以外の降水の強さなどは予測することができません。
また、7〜15時間先になると、補外予測の精度も落ちるため、メソモデル (MSM) と 局地モデル (LFM) の予測結果を利用することで、新たな降水域の発生や地形効果以外の降水の強さなども予測できるようになります。
また、7〜15時間先までの予報は5km四方の細かさで予報しますので、格子間隔が約13kmの全球モデル (GSM) は降水短時間予報には適しません。
(ちなみに、メソモデル (MSM) の格子間隔は約5km、局地モデル (LFM) の格子間隔は約2kmです。)
降水短時間予報は気象庁ホームページの「今後の雨(降水短時間予報)のページ」で確認できます。
時間を表すバーの青色の時間帯が降水短時間予報です。
したがって、7~15時間先の降水短時間予報は、メソモデルと局地モデルの降水予測の結果を組み合わせて作成しており、全球モデルの降水予測の結果は使用していませんので、答えは 誤 となります。
以上より、本問の解答は、(a) 正 (b) 誤 (c) 誤 とする 3 となります。
書いてある場所:P192〜194(解析雨量)、P198〜204(降水短時間予報)
書いてある場所:P145〜148(解析雨量、降水短時間予報)
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。
また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
コメント