【第61回】2024年1月試験(学科一般試験)問2(放射平衡温度)

問2

放射平衡温度について述べた次の文章の空欄(a) 〜 (c)に入る数値及び式の組み合わせとして適切なものを、下記の1~5の中から1つ選べ。

地球が黒体放射していると仮定すると、地球から放出される長波放射エネルギーは放射平衡温度の (a) 乗に比例する。また、地球のアルベドをAとすると地球が吸収する短波放射エネルギーは (b) に比例する。放射平衡の状態ではこの2つのエネルギーが釣り合っている。これらの関係から、地球のアルベドが 0.3 から 0.35 に変化して放射平衡温度が T1 から T2 に変化したとすると、放射平衡温度 T2(c) × T1 となる。

   





解説

本問は、放射平衡温度に関する問題です。

本問の解説:(a)について

(問題)地球が黒体放射していると仮定すると、地球から放出される長波放射エネルギーは放射平衡温度の (a) 乗に比例する。

→ 答えは です。

問題(a)はステファン・ボルツマンの法則に関する基本的な問題です。

すべての物体は、その温度に応じた電磁波を放射しています。

同時に物体は入射してきた電磁波を吸収する性質も持ちます。

この入射してくる放射エネルギーをすべて余すことなく吸収する仮想的な物体
黒体(読:こくたい)といいます。

黒体は与えられた温度に応じた最大の放射エネルギーを放出します。

この放射のことを 黒体放射(読:こくたいほうしゃ)といいます。

黒体放射の全ての波長帯のエネルギーの総量は、黒体の絶対温度の4乗に比例します。

この法則を ステファン・ボルツマンの法則 といいます。

(1879年にステファンが実験的に、1884年にボルツマンが理論的にこの法則を導いたためにステファン・ボルツマンの法則とよばれています。)

ステファン・ボルツマンの法則

つまり、ある黒体の単位面積が単位時間あたりに放射するエネルギーを I [ Wm-2 ] 、黒体の絶対温度を T [ K ]、ステファン・ボルツマン定数をσ = 5.67×10-8 [ Wm-2 K-4 ] とすると、次の関係が成り立ちます。

I = σT 4

上式は、黒体の単位面積が単位時間あたりに放射するエネルギーですので、地球から(単位時間あたりに)放出される長波放射エネルギーは、地球の表面積(4πr2 ( r は地球の半径))を掛けて求めることができます。

以上より、地球から(単位時間あたりに)放出される長波放射エネルギーは

4πr 2 × σT 4

となります。

したがって、地球が黒体放射していると仮定すると、地球から放出される長波放射エネルギーは放射平衡温度の4乗に比例しますので、答えは となります。

本問の解説:(b)について

(問題)地球のアルベドをAとすると地球が吸収する短波放射エネルギーは (b) に比例する。

→ 答えは 1− A です。

アルベド とは、放射を受けたときの反射率のことです。

アルベド

アルベドがであれば、すべての放射を反射し、
アルベドがであれば、すべての放射を吸収することを意味します。

地球のアルベドは0.3です。

つまり、地球は宇宙から受けた放射のうち、その30%が吸収されずに宇宙に反射されるということです。

下表はさまざまな場所や状況によるアルベドの一覧です。

場所・状況アルベド
裸地※0.1〜0.25
砂、砂漠0.25〜0.4
森林地0.1〜0.2
新雪0.8〜0.95
海面(高度角25°以上)0.1以下
海面(高度角25°以下)0.1〜0.7
厚い雲0.8前後
地球平均0.3
金星平均0.78
火星平均0.16
※裸地:草木が1本も生えておらず、岩や土がむきだしになっている土地(地面や場所)のこと

アルベドは場所や状況によって変わりますが、一般的には、文字 A を使って表します。

つまり、太陽光の反射率がアルベド A なので、吸収率は残りの (1−A) となります。

(例えば、アルベドが 30% であれば、A = 0.3 で、吸収率は 1−A = 0.7 = 70% ということです。)

以上より、地球が吸収する短波放射エネルギーは、地球の半径を r [m] 、地球が1m2 あたりに受ける太陽放射強度を S [W m-2] とすると

(1−A) × πr2 × S

となります。

したがって、地球のアルベドをAとすると地球が吸収する短波放射エネルギーは (1−A) に比例しますので、答えは 1− A となります。

本問の解説:(c)について

(問題)放射平衡の状態では、長波放射エネルギーと短波放射エネルギーが釣り合っている。これらの関係から、地球のアルベドが 0.3 から 0.35 に変化して放射平衡温度が T1 から T2 に変化したとすると、放射平衡温度 T2 は (c) × T1 となる。

→ 答えは (0.65/0.7)1/4 です。

地球から放出される長波放射エネルギーは、問題(a)より

4πr 2 × σT 4

であり、地球が吸収する短波放射エネルギーは、問題(b)より

(1−A) × πr 2 × S

であることが分かりました。

放射平衡の状態では、地球が吸収する短波放射エネルギーと、地球から放出される長波放射エネルギーが釣り合っていますので、

(1−A) × πr 2 × S = 4πr 2 × σT 4

となります。

放射平衡

ここで、地球のアルベドが 0.3 と 0.35 のときの放射平衡温度をそれぞれ T1 、T2 とすると、これらに対する放射平衡の式は以下のようになります。

(1−0.3) × πr 2 × S = 4πr 2 × σT14

(1−0.35) × πr 2 × S = 4πr 2 × σT24

これらの式から、

( T2 / T1 ) 4 = 0.65 / 0.7

T2 = ( 0.65 / 0.7 )1/4 × T1

となります。

したがって、地球のアルベドが 0.3 から 0.35 に変化して放射平衡温度が T1 から T2 に変化したとすると、放射平衡温度 T2 は (0.65/0.7)1/4 × T1 となりますので、
答えは (0.65/0.7)1/4 となります。

以上より、本問の解答は、(a) (b) 1-A (c) (0.65/0.7)1/4 とする となります。

ここに書いてあるよ
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書いてある場所:P110(黒体、黒体放射)、P113〜114(アルベド、放射平衡)


書いてある場所:P256〜257(ステファン・ボルツマンの法則)、P259〜263(地球放射、太陽放射、アルベド)


書いてある場所:P170〜171、(ステファン・ボルツマンの法則)、P178〜184(放射平衡、アルベド)


書いてある場所:P80〜81(ステファン・ボルツマンの法則)、P86〜88(アルベド、放射平衡)


書いてある場所:P90〜92(ステファン・ボルツマンの法則、放射平衡、アルベド)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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