【第61回】2024年1月試験(学科一般試験)問4(山脈の斜面に沿って下降する空気の相対湿度の変化)

第62回_気象予報士試験_解答速報(予告)

問4

ある山脈の斜面に沿って上昇した空気塊が標高1000mの山脈の最高点を通過し、標高0mのふもとまで下降してきたとき、温度30℃、相対湿度40%の状態となっていた。空気塊が山脈の最高点にあった時の空気の相対湿度として適切なものを、下記の1~5の中から1つ選べ。ただし、標高0mの気圧は1000hPa、標高1000mの気圧は900hPaとし、乾燥断熱減率は10℃/km、湿潤断熱減率は5℃/km、空気塊は周囲の大気と混合せずに断熱的に移動したものとする。また温度と飽和水蒸気圧の関係は表のとおりとし、水蒸気の混合比は次の式で近似できるものとする。

気象予報士試験_第61回_一般知識_問4
   





解説

本問は、山脈の斜面に沿って下降する空気の相対湿度の変化を計算する問題です。

(問題)ある山脈の斜面に沿って上昇した空気塊が標高1000mの山脈の最高点を通過し、標高0mのふもとまで下降してきたとき、温度30℃、相対湿度40%の状態となっていた。空気塊が山脈の最高点にあった時の空気の相対湿度として適切なものを、下記の1~5の中から1つ選べ。ただし、標高0mの気圧は1000hPa、標高1000mの気圧は900hPaとし、乾燥断熱減率は10℃/km、湿潤断熱減率は5℃/km、空気塊は周囲の大気と混合せずに断熱的に移動したものとする。また温度と飽和水蒸気圧の関係は表のとおりとし、水蒸気の混合比は次の式で近似できるものとする。

気象予報士試験_第61回_一般知識_問4

→ 答えは 66% です。

本問は以下の手順で考えます。

➀ 下降後(標高0m)の空気塊の水蒸気圧を求める。

➁ 上昇後(標高1000m)の空気塊の水蒸気圧を求める。

➂ 上昇後(標高1000m)の空気塊の相対湿度を求める。

➀ 下降後(標高0m)の空気塊の水蒸気圧 e1000 を求める。

下降後(標高0m、気圧1000hPa、ふもと)の空気塊は、問題文の条件より、温度 30℃ 、相対湿度 40% です。

温度 30℃ の空気塊の飽和水蒸気圧は、問題の表から 42hPa だと分かります。

気象予報士試験_第61回_一般知識_問4

これは、相対湿度が 100% の時の水蒸気圧が 42hPa という意味ですので、

相対湿度が 40% の時の水蒸気圧 e1000

e1000 = 42 (hPa) × 0.4 = 16.8 (hPa)

となります。

➁ 上昇後(標高1000m)の空気塊の水蒸気圧 e900 を求める。

まず、上昇後(標高1000m、気圧900hPa、山脈の最高点)の空気塊が飽和していないと仮定して、その時の温度を求めてみます。

この場合、空気塊が下降するときは、その温度は乾燥断熱減率10°C/kmにしたがって変化します。

空気塊がふもとにあるときの温度は 30°C、山脈の最高点とふもとの高度差は 1000m ですので、空気塊が山脈の最高点にあったときの温度は

30°C − (10°C/km × 1000m) = 20°C

となります。

温度 20℃ の空気塊の飽和水蒸気圧は、問題の表から 23hPa だと分かります。

気象予報士試験_第61回_一般知識_問4

①で求めたように、下降後(標高0m)の空気塊の水蒸気圧 e1000 は 16.8hPa ですので、

この空気塊を山脈の最高点(標高1000m)まで持ち上げても(=20℃まで冷やしても)飽和しないことが分かります。

空気塊の水蒸気圧

したがって、上昇後の空気塊が飽和していないという仮定は正しいということが分かります。

空気塊が飽和していないということは、上昇後と下降後の混合比が保存されますので、この関係から上昇後(標高1000m)の空気塊の水蒸気圧 e900 を求めます。

気象予報士試験_第61回_一般知識_問4

上式を使うと、

上昇後の混合比 = 620 × 16.8 / 1000

下降後の混合比 = 620 × e900 / 900

となり、これらが等しいので

620 × 16.8 / 1000 = 620 × e900 / 900

e900 = 16.8 × 900 / 1000 = 15.1 (hPa)

となります。

➂ 上昇後(標高1000m)の空気塊の相対湿度 RH1000 を求める。

②より、上昇後(標高1000m)の空気塊の水蒸気圧 e90015.1hPa であり、

上昇後(標高1000m)の空気塊の飽和水蒸気圧は 23hPa であることが分かりました。

したがって、山頂での相対湿度 R900

R900 = (15.1 / 23) × 100 = 65.65 (%)

となります。

以上より、本問の解答は、66% とする となります。

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書いてある場所:P58〜60(飽和水蒸気圧)、P61〜62(混合比)


書いてある場所:P119〜120(飽和水蒸気圧)、P123〜124(混合比)


書いてある場所:P94〜95(飽和水蒸気圧)、P97〜98(混合比)


書いてある場所:P33〜34(飽和水蒸気圧)、P35〜36(混合比)


書いてある場所:P47〜48(飽和水蒸気圧)、P48〜49(混合比)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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