問3
空気塊を断熱的に持ち上げた際の温位と水蒸気の混合比の変化について述べた次の文章の空欄 (a) 〜 (c) に入る語句の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。ただし、空気塊が過飽和になることはないものとする。
地表面付近の未飽和の水蒸気を含む空気塊を周囲の大気と混合しないように断熱的に持ち上げる。このとき、高度の上昇にともなって、持ち上げ凝結高度以下では空気塊の温位は (a) 、水蒸気の混合比 (b) 。また、持ち上げ凝結高度より上では空気の温位は (c) 、水蒸気の混合比 (d) 。
本問は、地表近くにあった空気塊を持ち上げた際の、温位と混合比の保存に関する問題です。
本問の解説:(a)(b)について
(問題)地表面付近の未飽和の水蒸気を含む空気塊を周囲の大気と混合しないように断熱的に持ち上げる。このとき、高度の上昇にともなって、持ち上げ凝結高度以下では空気塊の温位は (a) 、水蒸気の混合比 (b) 。
→ 答えは (a) 変化せず、(b) も変化しない です。
温位 とは、空気塊を乾燥断熱的に1000hPaの高度まで移動させたときの絶対温度 [ K ]のことです。
(絶対温度とは、温度をケルビン [ K ] で表したものです。)
混合比 とは、湿潤空気に含まれる、水蒸気の質量と乾燥空気の質量の比のことです。
下図は、エマグラム上での温度Tの空気塊と乾燥断熱線、等飽和混合比線、持ち上げ凝結高度の関係を表したものです。
乾燥断熱線 とは、飽和に達していない空気塊の断熱減率(乾燥断熱減率)を表した線のことです。
等飽和混合比線 とは、空気塊の露点温度を通る等混合比線(=混合比が一定の線)のことです。
持ち上げ凝結高度 とは、乾燥断熱線と等飽和混合比線の交点のことで、この高度で空気塊は飽和します。
未飽和の空気塊を上昇させる場合、水蒸気が凝結して雲ができ始めるまでは、空気塊は
乾燥断熱線に沿って上昇します。
乾燥断熱変化では水蒸気は凝結しませんので、温位は常に保存されます。
つまり、持ち上げ凝結高度以下では空気塊の温位は変化しません。
また、水蒸気が凝結しないということは、水蒸気の質量も乾燥空気の質量も変化しないので、持ち上げ凝結高度以下では混合比も変化しません。
したがって、持ち上げ凝結高度以下では空気塊の温位は変化せず、水蒸気の混合比も変化しませんので、答えは (a) 変化せず、(b) も変化しない となります。
本問の解説:(c)(d)について
(問題)地表面付近の未飽和の水蒸気を含む空気塊を周囲の大気と混合しないように断熱的に持ち上げる。このとき、高度の上昇にともなって、持ち上げ凝結高度より上では空気の温位は (c) 、水蒸気の混合比 (d) 。
→ 答えは (c) 上昇し、(d) は減少する です。
持ち上げ凝結高度より上の高度では、水蒸気が凝結することによって潜熱が発生するため、空気塊は湿潤断熱線に沿って上昇します。
この潜熱によって、空気塊は暖められますので、温位は上昇します。
また、水蒸気の凝結によって、空気塊に含まれる水蒸気の質量は減少しますので、混合比は減少します。
したがって、持ち上げ凝結高度より上では空気塊の温位は上昇し、水蒸気の混合比は減少しますので、答えは (c) 上昇し、(d) は減少する となります。
以上より、本問の解答は、(a) 変化せず (b) も変化しない (c) 上昇し (d) は減少する とする 5 となります。
書いてある場所:P53〜57(乾燥断熱減率と温位)、P61〜62(混合比)、P65〜70(湿潤断熱減率、持ち上げ凝結高度、エマグラム上での熱力学)
書いてある場所:P84〜85(乾燥断熱減率)、P91〜95(湿潤断熱減率、乾燥断熱線と湿潤断熱線)、P96〜101(温位)、P123〜124(混合比)、P169〜172(持ち上げ凝結高度、エマグラム)
書いてある場所:P61〜62(乾燥断熱変化、湿潤断熱変化)、P84〜85(温位)、P97〜98(混合比)、P114〜119(エマグラム、持ち上げ凝結高度)
書いてある場所:P35〜36(混合比)、P41〜44(乾燥断熱減率、湿潤断熱減率、温位)、P45〜51(エマグラム、持ち上げ凝結高度)
書いてある場所:P48〜49(混合比)、P133〜134(乾燥断熱減率、湿潤断熱減率)、P139〜142(温位)、P147〜150(エマグラム、持ち上げ凝結高度)
試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。
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