【第61回】2024年1月試験(学科一般試験)問7(各条件における地衡風の大小関係)

問7

次の (a) 〜 (d) の条件のもとで地衡風が吹いていたとき、各条件における地衡風の風速の大小関係を表す式として正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。ただし、空気の密度は (a) 〜 (d) のいずれの条件でも同じであり、sin30°=0.5、sin45°=0.7、cos30°=0.9、cos45°=0.7とする。

(a) 緯度 30 度、水平気圧傾度 2 hPa / 100 km

(b) 緯度 30 度、水平気圧傾度 3 hPa / 100 km

(c) 緯度 45 度、水平気圧傾度 2 hPa / 100 km

(d) 緯度 45 度、水平気圧傾度 3 hPa / 100 km

   





解説

本問は、緯度や気圧傾度から地衡風の大小関係を求める問題です。

地衡風 とは、気圧傾度力コリオリ力が釣り合って吹く風のことであり、中緯度の上層では水平風に対してこの地衡風の関係が十分に成り立っています。

気圧傾度力 とは、気圧の差(=気圧傾度によって生じる力のことです。

下図は水平方向の気圧傾度の模式図です。

気圧傾度

等圧線と等圧線の間にある、直方体の空気塊 を考えます。

このとき、低気圧側の気圧を p1 、高気圧側の気圧を p2 としたとき、その気圧差は Δp=p2 – p1 となります。

これを、p1 と p2 の等圧線間の距離 Δn で割ったものを、気圧傾度 といい、

気圧傾度の式

と表されます。

この気圧傾度によって生じる力気圧傾度力 といい、高気圧側低気圧側 へと力がはたらきます。

また、空気の密度を ρ とすると、水平方向の気圧傾度力は

気圧傾度力の式

と表されます。

てるるん

気圧傾度力の式にマイナス「ー」がついているのは、高気圧側から低気圧側に向かって風が吹いていることを示すための、数式処理上のものだよ!

コリオリ力 とは、地球の自転によって生じるみかけの力のことです。

単位質量の空気塊に働くコリオリ力は、風速を V 、コリオリパラメータを f とすると、

コリオリ力 = fV ・・・(1)

と表されます。ここで、f(コリオリ・パラメータ)は緯度 φ の関数であり、

f = 2Ωsinφ ・・・(2)

と表されます。(Ω:地球の自転角速度(Ω = 2π/1日 = 7.292 × 10-5 s-1))

したがって、(1)式、(2)式より、コリオリ力は

コリオリ力 = 2ΩVsinφ

となります。

地衡風は、気圧傾度力とコリオリ力が釣り合って吹くので、

気象予報士試験_第61回_一般知識_問7

であり、両辺を2Ωsinφで割ると、地衡風の風速 V は

気象予報士試験_第61回_一般知識_問7

となります。

問題文より、空気の密度 ρ は一定ですので、地衝風の風速 V は、気圧傾度 Δp/Δn に比例し(=気圧傾度が大きいほど風が強い)、sinφに反比例する(=低緯度ほど風が強い)ことが分かります。

本問では (a) ~ (d) の条件での地衡風の風速の大小関係を求めれば良いので、分かりやすいように定数部分を K とおくと、地衡風の風速 V は

気象予報士試験_第61回_一般知識_問7

と書くことができます。(K:-1/2Ωρ(=比例定数) 、水平気圧傾度:Δp/Δn 、φ:緯度)

以上を踏まえて、(a) ~ (d) の条件での地衡風の風速の大小関係を求めていきましょう。

また、地衡風の風速の大小を比較するだけなので、水平気圧傾度の単位(hPa/100km)は無視し、数値のみ比較すればOKです。

地衡風 (a) の風速

(問題)緯度 30 度(sin30°=0.5)、水平気圧傾度 2 hPa / 100 km

気象予報士試験_第61回_一般知識_問7

したがって、問題 (a) の地衡風は 4K となります。

地衡風 (b) の風速

(問題)緯度 30 度(sin30°=0.5)、水平気圧傾度 3 hPa / 100 km

気象予報士試験_第61回_一般知識_問7

したがって、問題 (b) の地衡風は 6K となります。

地衡風 (c) の風速

(問題)緯度 45 度(sin45°=0.7)、水平気圧傾度 2 hPa / 100 km

気象予報士試験_第61回_一般知識_問7

したがって、問題 (c) の地衡風は 2.9K となります。

地衡風 (d) の風速

(問題)緯度 45 度(sin45°=0.7)、水平気圧傾度 3 hPa / 100 km

気象予報士試験_第61回_一般知識_問7

したがって、問題 (d) の地衡風は 4.3K となります。

以上より、本問の解答は、(a) 4K (b) 6K (c) 2.9K (d) 4.3K なので、 (b) > (d) > (a) > (c) とする となります。

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書いてある場所:P132〜145(コリオリ力、気圧傾度力、地衡風)


書いてある場所:P309〜310(気圧傾度力)、P313〜315(コリオリ力)、P316〜320(地衡風)


書いてある場所:P198〜207(気圧傾度力)、P208〜215(コリオリ力)、P216〜225(地衡風)


書いてある場所:P95〜97(気圧傾度力、コリオリ力、地衡風)


書いてある場所:P164〜169(コリオリ力、気圧傾度力)、P171〜177(地衡風)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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