【第63回】2025年1月試験(学科専門試験)問11(ダウンバースト)

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問11

ダウンバーストの⼀般的な特徴などについて述べた次の⽂ (a) 〜 (d) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1〜5の中から1つ選べ。

(a) ダウンバーストとは、 積乱雲から⽣じる強い下降気流が地表に達し、突⾵となって⽔平に吹き出し周囲に広がる現象である。ダウンバーストによる被害地域は円形あるいは楕円形など⾯的に広がる特徴がある。

(b) ダウンバーストに伴う地表⾯付近での突⾵の吹き出しの⽔平⽅向の広がりは、⼀般に数⼗mから数百m程度である。

(c) 積乱雲の雲底の下の⼤気が乾燥しているほど、 降⽔粒⼦が蒸発しやすいため、 ダウンバーストは発⽣しにくい。

(d) 気象庁では、ダウンバーストによる突⾵の強さ(⾵速)の評定に、⻯巻の強さの評定に⽤いている⽇本版改良藤⽥スケール(JEF スケール)を⽤いている。

   





解説

本問は、ダウンバーストの⼀般的な特徴などに関する問題です。

本問の解説:(a) について

(問題)ダウンバーストとは、 積乱雲から⽣じる強い下降気流が地表に達し、突⾵となって⽔平に吹き出し周囲に広がる現象である。ダウンバーストによる被害地域は円形あるいは楕円形など⾯的に広がる特徴がある。

→ 答えは です。

ダウンバースト とは、積乱雲から⽣じる強い下降気流が地表に達し、突⾵となって⽔平に吹き出し周囲に広がる現象のことです。

地表に達した下降気流は四方に発散するため、

被害地域は円形楕円形など面的に広がるのが特徴です。

したがって、ダウンバーストとは、 積乱雲から⽣じる強い下降気流が地表に達し、突⾵となって⽔平に吹き出し周囲に広がる現象で、ダウンバーストによる被害地域は円形あるいは楕円形など⾯的に広がる特徴がありますので、答えは となります。

本問の解説:(b) について

(問題)ダウンバーストに伴う地表⾯付近での突⾵の吹き出しの⽔平⽅向の広がりは、⼀般に数⼗mから数百m程度である。

→ 答えは です。

ダウンバーストに伴う地表⾯付近での突⾵の吹き出しの⽔平⽅向の広がりは、数百mから10km程度です。

なお、一般的にダウンバーストは、その水平的な広がりから マイクロバースト広がりが4km以内)と マクロバースト広がりが4km以上)に分類され、マイクロバーストの方が強い風を伴うことが多いと言われています。

したがって、ダウンバーストに伴う地表⾯付近での突⾵の吹き出しの⽔平⽅向の広がりは、⼀般に「数⼗mから数百m程度」ではなく「数百mから10km程度」ですので、答えは となります。

本問の解説:(c) について

(問題)積乱雲の雲底の下の⼤気が乾燥しているほど、 降⽔粒⼦が蒸発しやすいため、 ダウンバーストは発⽣しにくい。

→ 答えは です。

ダウンバーストが生じる原因は、積乱雲内の降水粒子が上昇気流に支えきれずに落下するときに、周囲の空気を一緒に引きずり下ろすためです。

また、雲底の下の空気が乾燥している場合には、降水粒子が蒸発・昇華することで空気が冷やされ、その冷たい空気が下降気流を強めます

したがって、積乱雲の雲底の下の⼤気が乾燥しているほど、 降⽔粒⼦が蒸発しやすいため、 ダウンバーストは「発⽣しにくい」ではなく「発生しやすい」ので、答えは となります。

本問の解説:(d) について

(問題)気象庁では、ダウンバーストによる突⾵の強さ(⾵速)の評定に、⻯巻の強さの評定に⽤いている⽇本版改良藤⽥スケール(JEF スケール)を⽤いている。

→ 答えは です。

竜巻やダウンバーストなどの突風は、現象の規模が小さく持続時間も短いため、風向風速計で直接観測できない場合が多いです。

その問題を解決すべく、1971年にシカゴ大学の藤田哲也博士が考案したのが、突風の被害状況から風速を評定できる 藤田スケール(Fスケール)です。

しかし、藤田スケールはアメリカで考案されたものであり、

・日本の建築物等の被害に対応していないこと

・評定に用いることのできる被害の指標が9種類と限られていること

・幅を持った大まかな風速しか評定できないこと

などの課題がありました。

そこで、気象庁では、この藤田スケールを改良し、より精度良く突風の風速を評定することができる 日本版改良藤田スケール(JEFスケール)を平成27年12月に策定し、平成28年4月より突風調査に使用しています。

では具体的にどう変わったかというと、評定に用いることができる被害指標が、藤田スケールでは、住家、非住家、ビニールハウス、煙突、アンテナ、自動車、列車、数トンの物体、樹木9種類 に限られていました。

しかし、日本版改良藤田スケールでは住家や自動車等が種別ごとに細分されたとともに、日本でよく見られる自動販売機や墓石等を加えたことにより30種類に増加しました。

その後、最新の研究成果を踏まえ、令和6年4月から被害指標に船舶を追加し、31種類 になりました。

日本版改良藤田スケールの被害指標
木造の住宅又は店舗電柱
鉄骨系プレハブ住宅又は店舗地上広告板
鉄筋コンクリート造の集合住宅道路交通標識
仮設建築物カーポート
大規模な庇(ひさし)・独立上家の屋根
鉄骨造倉庫木製・樹脂製・アルミ製フェンス、メッシュフェンス
木造の非住家建築物道路の防風・防雪フェンス
園芸施設ネット(野球場・ゴルフ場等)
木造の畜産施設広葉樹
物置針葉樹
コンテナ墓石(棹石)
自動販売機路盤
軽自動車仮設足場(壁つなぎ材)
普通自動車ガントリークレーン
大型自動車船舶
鉄道車両

また、日本版改良藤田スケールにおける階級と風速の関係は下表の通りです。

階級風速の範囲(3秒平均)主な被害の状況(参考)
JEF025~38m/s・木造の住宅において、目視でわかる程度の被害、飛散物による窓ガラスの損壊が発生する。比較的狭い範囲の屋根ふき材が浮き上がったり、はく離する。
・園芸施設において、被覆材(ビニルなど)がはく離する。パイプハウスの鋼管が変形したり、倒壊する。
・物置が移動したり、横転する。
・自動販売機が横転する。
・コンクリートブロック塀(鉄筋なし)の一部が損壊したり、大部分が倒壊する。・樹木の枝(直径2cm~8cm)が折れたり、広葉樹(腐朽有り)の幹が折損する。
JEF139~52m/s・木造の住宅において、比較的広い範囲の屋根ふき材が浮き上がったり、はく離する。屋根の軒先又は野地板が破損したり、飛散する。
・園芸施設において、多くの地域でプラスチックハウスの構造部材が変形したり、倒壊する。
・軽自動車や普通自動車(コンパクトカー)が横転する。
・通常走行中の鉄道車両が転覆する。
・地上広告板の柱が傾斜したり、変形する。
・道路交通標識の支柱が傾倒したり、倒壊する。
・コンクリートブロック塀(鉄筋あり)が損壊したり、倒壊する。・樹木が根返りしたり、針葉樹の幹が折損する。
JEF253~66m/s・木造の住宅において、上部構造の変形に伴い壁が損傷(ゆがみ、ひび割れ等)する。また、小屋組の構成部材が損壊したり、飛散する。
・鉄骨造倉庫において、屋根ふき材が浮き上がったり、飛散する。
・普通自動車(ワンボックス)や大型自動車が横転する。
・鉄筋コンクリート製の電柱が折損する。
・カーポートの骨組が傾斜したり、倒壊する。
・コンクリートブロック塀(控壁のあるもの)の大部分が倒壊する。
・広葉樹の幹が折損する。・墓石の棹石が転倒したり、ずれたりする。
JEF367~80m/s・木造の住宅において、上部構造が著しく変形したり、倒壊する。
・鉄骨系プレハブ住宅において、屋根の軒先又は野地板が破損したり飛散する、もしくは外壁材が変形したり、浮き上がる。
・鉄筋コンクリート造の集合住宅において、風圧によってベランダ等の手すりが比較的広い範囲で変形する。
・工場や倉庫の大規模な庇において、比較的狭い範囲で屋根ふき材がはく離したり、脱落する。
・鉄骨造倉庫において、外壁材が浮き上がったり、飛散する。・アスファルトがはく離・飛散する。
JEF481~94m/s・工場や倉庫の大規模な庇において、比較的広い範囲で屋根ふき材がはく離したり、脱落する。
JEF595m/s~・鉄骨系プレハブ住宅や鉄骨造の倉庫において、上部構造が著しく変形したり、倒壊する。
・鉄筋コンクリート造の集合住宅において、風圧によってベランダ等の手すりが著しく変形したり、脱落する。

したがって、気象庁では、ダウンバーストによる突⾵の強さ(⾵速)の評定に、⻯巻の強さの評定に⽤いている⽇本版改良藤⽥スケール(JEF スケール)を⽤いていますので、答えは となります。

以上より、本問の解答は、(a) (b) (c) (d) とする となります。

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福岡管区気象台ホームページ「ダウンバーストのはなし


気象庁ホームページ「日本版改良藤田(JEF)スケールとは


気象庁ホームページ「藤田(F)スケールとは

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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