【第60回】2023年8月試験(学科一般試験)問5(大気放射)

問5

大気放射について述べた次の文 (a) ~ (d) の正誤について、下記の1~5の中から正しいものを1つ選べ。

(a) 地球大気は、太陽放射に対して近似的に黒体とみなせることから、その吸収量の計算にはプランクの法則を適用できる。

(b) 波長0.3μm以下の紫外線がほとんど地表面に到達していないのは、成層圏界面に達する前に、酸素分子及びオゾンによってほぼ吸収されるからである。

(c) 地球大気において地球放射を最も多く吸収している気体は二酸化炭素で、次がメタンである。

(d) 大気上端で放射平衡が成り立っている場合、大気上端における上向き地球放射量は、入射太陽放射量とアルベドの積に等しい。

   





解説

本問の解説:(a) について

(問題)地球大気は、太陽放射に対して近似的に黒体とみなせることから、その吸収量の計算にはプランクの法則を適用できる。

→ 答えは です。

黒体放射と地球大気

黒体(読:こくたい)とは、入射した電磁波をすべて完全に吸収する仮想的な物体です。

もちろん可視光線も完全に吸収するので、自分から可視光線を出さない限り、外から目で見て観測することはできません。

てるらん

でも、地球は宇宙から見えるよね

てるるん

その通り!
地球が宇宙から見えるのは、地球が太陽の可視光線を反射しているからだよ!

太陽は可視光線を中心として、紫外線・赤外線・X線など、さまざまな波長の電磁波を放射しています。

これを 太陽放射 といいます。

地球大気において、太陽放射の一部は大気中に含まれる水蒸気や二酸化炭素などにより吸収されますが、可視光線領域はほとんど吸収されません。

もちろん、地球が恒星のように自ら光を発しているわけでもありません。

したがって、地球大気は太陽放射を完全に吸収しているとは言えないので、地球大気を近似的にも黒体とみなすことはできません

なお、プランクの法則 とは、黒体からの放射エネルギーを黒体の温度と電磁波の波長の関数として表す物理法則です。

黒体が放射するエネルギー量を計算するのであって、吸収するエネルギー量を計算する法則ではありません

したがって、地球大気は、太陽放射に対して近似的にも黒体とみなすことはできず、黒体の吸収量の計算にプランクの法則は適用できないので、答えは となります。

本問の解説:(b) について

(問題)波長0.3μm以下の紫外線がほとんど地表面に到達していないのは、成層圏界面に達する前に、酸素分子及びオゾンによってほぼ吸収されるからである。

→ 答えは です。

大気の鉛直構造とオゾン層

オゾンは、酸素分子が波長0.24μm以下の紫外線による光解離で酸素原子となり、酸素分子と結合することによって生成されます。

また、太陽放射のうち波長0.3μm以下の紫外線は酸素分子やオゾンによって吸収されます。

この酸素分子やオゾンが比較的たくさんある層を オゾン層 といい、成層圏内 高度約20km〜25km付近に位置しています。

したがって、太陽放射のうち波長が0.3μm以下の紫外線は、成層圏界面ではなく、対流圏界面に到達するまでに酸素分子やオゾンによってほぼ吸収されてしまい、ほとんど地表面には到達していないので、答えは となります。

本問の解説:(c) について

(問題)地球大気において地球放射を最も多く吸収している気体は二酸化炭素で、次がメタンである。

→ 答えは です。

地球放射(=赤外線)を吸収するH2OCO2などの気体は温室効果をもたらすことから 温室効果ガス とも呼ばれます。

温室効果ガスの寄与率
地表(青線)および大気上端(赤線)における赤外線スペクトル(単位波長・面積・時間あたりの上向きのエネルギー流出量)。青線が地表から逃げる熱エネルギー、赤線が大気上端から逃げる熱エネルギーを示す。また、青線と赤線の差が、大気による赤外線の吸収、すなわち温室効果の強度を表す。図中のH2O、CO2、O3は、それらの分子による赤外線吸収が起こる波長領域を示す。右の円グラフは、晴天時(雲がない場合)での温室効果への寄与。
Kiehl and Trenberth (1997) Earth’s Annual Global Mean Energy Budget. Bulletin of the American Meteorological Society, 78, 197-208. (c)Copyright 2007 American Meteorological Society (AMS)

上図は、現在の大気中の各温室効果ガスがもつ温室効果の強さを示しています。

地球から放出される赤外線(=グラフの青線)が、大気上端ではH2OやCO2などによって吸収され、エネルギー流出量が減少している(=グラフの赤線)ことがわかります。

上図を見ると、水蒸気広い波長域で赤外線を吸収しているため、温室効果への寄与率はもっとも高く、約48% となります。

次いで、温室効果の寄与率が高いのは CO2 で、15μm付近の赤外線をよく吸収しており、温室効果への寄与は 約21% となります。

また、その他5%の温室効果ガスには、メタン一酸化二窒素フロンなどのハロカーボン類があげられます。

したがって、最も地球放射を吸収している気体は二酸化炭素ではなく水蒸気ですので、答えは となります。

本問の解説:(d) について

(問題)大気上端で放射平衡が成り立っている場合、大気上端における上向き地球放射量は、入射太陽放射量とアルベドの積に等しい。

→ 答えは です。

放射平衡の式

放射平衡が成り立っている場合、大気上端では、

下向きの放射量である 入射する太陽放射量(X)

上向きの放射量である 反射される太陽放射量(Y)上向きの地球放射量(Z)が釣り合っています。

(文字X、Y、Zは式変形の時に分かりやすいように振っているだけで、文字自体に意味はありません。)

これを式の形で表すと、

入射する太陽放射量(X)反射される太陽放射量(Y)上向きの地球放射量(Z) ・・・(1)

となります。

アルベド

一方、アルベドとは、入射した太陽放射が雲やエーロゾル、地表面などで反射され、宇宙空間に戻される割合(およそ3割)のことで、これを A とすれば、

反射される太陽放射量(Y)A × 入射する太陽放射量(X) ・・・(2)

と表すことができる。

したがって、(2)を(1)に代入すると、放射平衡の式は

上向きの地球放射量(Z)=(1 - A)× 入射する太陽放射量(X)

と変形することができます。

したがって、大気上端で放射平衡が減り立っている場合、大気上端における 上向きの地球放射量(Z)は、入射する太陽放射量(X)アルベド(A)との積ではなく、入射する太陽放射量(X)と(1 - A)との積に等しいので、答えは となります。

以上より、本問の解答は、すべて誤り とする となります。

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書いてある場所:P25(オゾン)、P110〜113(黒体、プランクの法則)、P113〜114(アルベド、放射平衡)、P116〜120(地球大気による太陽放射と地球放射の吸収)


書いてある場所:P28(オゾン)、P91〜92(アルベド、放射平衡、プランクの法則)、P97〜98(地球大気の熱収支)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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