【第60回】2023年8月試験(学科一般試験)問1(高度80km以下の地球大気の成分)

問1

高度80km以下の地球大気の成分について述べた次の文 (a) ~ (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。なお、水蒸気を除いた大気を乾燥大気という。

(a) 乾燥大気における酸素の容積比は30%を超える程度であり、残りのほとんどを窒素が占めている。

(b) 乾燥大気において、窒素と酸素に次いで大きな容積比を占めるのは、二酸化炭素である。

(c) オゾンは低緯度の成層圏で多く生成されており、オゾン全量は年間を通じて赤道を中心とした低緯度で最も多くなっている。

   





解説

本問の解説:(a) について

(問題)乾燥大気における酸素の容積比は30%を超える程度であり、残りのほとんどを窒素が占めている。

→ 答えは です。

水は、気体・液体・固体と変化するので、時間的にも空間的にもその変動は大きいですが、水蒸気を除いた乾燥空気の化学組成は様々な空気の運動による混合により、中間圏界面付近 (高度約80km) まではほぼ一定となっています。

下表の地表付近の大気組成によると、酸素分子 (O2) の容積比は 20% を超える程度 です。

地表付近の大気組成
小倉義光『一般気象学 第2版補訂版』東京大学出版会, 2016, P13

したがって、酸素の容積比は20%を超える程度ですので、答えは となります。

本問の解説:(b) について

(問題)乾燥大気において、窒素と酸素に次いで大きな容積比を占めるのは、二酸化炭素である。

→ 答えは です。

ここでも「地表付近の大気組成」の表を見てみましょう。

地表付近の大気組成
小倉義光『一般気象学 第2版補訂版』東京大学出版会, 2016, P13

乾燥空気の成分の容積比は大きい順に、

1:窒素(78.088%)

2:酸素(20.949%)

3:アルゴン(0.93%)

4:二酸化炭素 (0.03%)

となっています。

したがって、窒素と酸素に次いで大きな容積比を占めるのは、二酸化炭素ではなく、アルゴンですので、答えは となります。

本問の解説:(c) について

(問題)オゾンは低緯度の成層圏で多く生成されており、オゾン全量は年間を通じて赤道を中心とした低緯度で最も多くなっている。

→ 答えは です。

オゾンは、太陽紫外線による光化学反応によって生成されるため、太陽光が最も強い低緯度の成層圏が主な生成場所となっています。

一方で、成層圏には低緯度から両極の中高緯度に向かう大規模な循環(ブリューワー・ドブソン循環)が存在し、これにより低緯度で生成されたオゾンは中高緯度に運ばれ、下降します。

オゾンを含む空気は下部成層圏で圧縮されるため、中高緯度の下部成層圏でオゾン量が多くなります。

このようなオゾンの輸送は冬季に最も活発になるので、冬季から春季にかけて中高緯度の成層圏にオゾンが蓄積され、オゾン全量(地表面から大気上端までの気柱に含まれるオゾンの総量)が多くなります。

下図はオゾン全量の季節変動を示した図です。

値が大きいほど、オゾン全量が多いことを表しています。

これによると、オゾン全量は低緯度で少なく、中高緯度の冬季から春季(北半球の12月・1~5月。南半球の6~11月)にかけて多くなっていることが分かります。

帯状平均した月平均オゾン全量累年平均値(1997~2006年平均)の季節変化
帯状平均した月平均オゾン全量累年平均値(1997~2006年平均)の季節変化(気象庁HPより)
等値線間隔は15m atm-cm。
白色の部分は衛星によるオゾン全量観測ができない領域。
米国航空宇宙局(NASA)提供の衛星データから作成。

したがって、オゾンは低緯度の成層圏で多く生成されていますが、オゾン全量は冬季から春季にかけて中高緯度で最も多くなっているので、答えは となります。

以上より、本問の解答は (a) (b) (c) とする となります。

ここに書いてあるよ
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書いてある場所:P13(地表付近の大気組成)、P25〜30(オゾン層とオゾンホール)


書いてある場所:P21〜22(地球の大気の特徴)、P28〜29(オゾンの生成域と生成のメカニズム、成層圏のオゾンの輸送)、P31(地球の大気組成の比率)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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