【第62回】2024年8月試験(学科一般試験)問11(気候変動や地球温暖化)

問11

気候変動や地球温暖化について述べた次の文 (a) 〜 (d) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。

(a) 地表面状態の変化により地球のアルベドが大きくなると、全球平均気温が上昇する。

(b) 永久凍土が融解すると、永久凍土に閉じ込められている温室効果ガスのひとつであるメタンが大気中に放出され、温暖化が加速される。

(c) 大規模な火山噴火により対流圏に大量に放出された火山灰は2、3年程度対流圏に留まり、その間日射を散乱させて全球平均気温を低下させる。

(d) 成層圏でオゾンを破壊するフロンガスは、単位質量あたりの温室効果が二酸化炭素に比べて極めて高い。

   





解説

本問は、気候変動や地球温暖化に関する問題です。

本問の解説:(a) について

(問題)地表面状態の変化により地球のアルベドが大きくなると、全球平均気温が上昇する。

→ 答えは です。

アルベド とは、地表面や大気が太陽からの短波放射をどれだけ反射するかを示す指標であり、入射光に対する反射光の割合のことです。

アルベド

アルベドは数値が大きいほど、反射率が高いことを意味します。

例えば、アルベドがであれば、すべての放射を反射し、
アルベドがであれば、すべての放射を吸収することを意味します。

地球のアルベドは0.3です。

つまり、地球は太陽から受けた短波放射のうち、その30%が吸収されずに宇宙に反射されるということです。

地球のアルベドが大きくなると、反射される短波放射の量が増え、地表面が吸収するエネルギーが減少します。

その結果、地表面が冷却され、全球平均気温は下降します。

例えば、気温が低下して地表が雪や氷で覆われると、アルベドが大きくなります。

これにより、太陽からの放射エネルギーの吸収がさらに減少し、気温が一層低下するという正のフィードバックが働きます。

この現象を アイス・アルベド・フィードバック といいます。

(正のフィードバックとは、ある変化が起きた際に、その変化をさらに強める方向に作用する仕組みのことです。例えば、マイクに入った音がスピーカーから出て、その音がまたマイクに拾われると、どんどん大きな音になって「キーン」というハウリング音が起きる現象も、正のフィードバックです。)

したがって、地表面状態の変化により地球のアルベドが大きくなると、全球平均気温が「上昇」ではなく「下降」しますので、答えは となります。

本問の解説:(b) について

(問題)永久凍土が融解すると、永久凍土に閉じ込められている温室効果ガスのひとつであるメタンが大気中に放出され、温暖化が加速される。

→ 答えは です。

温室効果ガス とは、地表面から放出される赤外放射を吸収し、その一部を再び地表面に放射することで地表を暖める効果を持つガスのことです。

主要な温室効果ガスには、水蒸気 (H2O) 、二酸化炭素 (CO2) 、メタン (CH4) 、一酸化二窒素 (N2O) 、フロンガスなどがあります。

メタンによる温室効果は、同じ量の二酸化炭素と比較して約 25 倍の強さがあります。

ただし、大気中のメタンの量は二酸化炭素に比べて少ないため、通常は相対的に影響が小さいとされています。

永久凍土 とは、2年以上続けて地下の温度が0℃以下である土壌や地盤のことです。

この永久凍土には古い有機物が含まれており、その中には大量のメタンが閉じ込められています。

地球温暖化が進むと永久凍土が融解し、内部に閉じ込められていたメタンが大気中に放出されます。

メタンの放出量が増えると、大気中の温室効果が強まり、気温がさらに上昇します。

このような現象は正のフィードバックをもたらし、地球温暖化を加速させる要因となります。

したがって、永久凍土が融解すると、永久凍土に閉じ込められている温室効果ガスのひとつであるメタンが大気中に放出され、温暖化が加速されますので、答えは となります。

本問の解説:(c) について

(問題)大規模な火山噴火により対流圏に大量に放出された火山灰は2、3年程度対流圏に留まり、その間日射を散乱させて全球平均気温を低下させる。

→ 答えは です。

本問は、火山噴火による日傘効果に関する問題です。

日傘効果 とは、火山噴火や工場の排ガス、山火事の煙などで放出されるエアロゾル(浮遊微粒子)が雲を形成し、太陽光を散乱・反射することで地球の平均気温を下げる現象のことです。

火山噴火による日傘効果
画像:日本経済新聞「江戸の飢饉、巨大噴火の影」をもとに作成

大規模な火山噴火が起こると、大量の火山灰や二酸化硫黄 (SO2) を含む火山ガスが放出されます。

ただし、対流圏に滞留した火山灰は、降水によって約1週間で除去され、成層圏に達した火山灰も重力によって約1〜2か月で落下してしまいます。

このため、火山灰が長期間に渡って地球の気温に影響を及ぼすことはありません

一方、成層圏に吹き上げられた二酸化硫黄は、化学反応によって硫酸塩エアロゾルという非常に微細な粒子に変化します。

この硫酸塩エアロゾルは成層圏で約2〜3年間、時にはそれ以上の期間滞留し、太陽光を効果的に散乱させることで地表に到達する日射量を減少させ、全球平均気温の低下を引き起こします。

例えば、1991年6月にフィリピンのピナツボ火山で発生した大規模噴火では、放出された火山ガスから生成された硫酸塩エアロゾルが成層圏を長期間漂い、1992年の全球平均気温は、1990年代で最も低い値を記録しました。

また、1993年の日本では記録的な冷夏となり、米の不作を引き起こしたことで「平成の米騒動」と呼ばれる事態になりました。

「ピナツボ火山の大噴火」と「平成の米騒動」の関係について詳しく知りたい方は、下記記事を読んでみてください。

したがって、大規模な火山噴火により2〜3年程度、日射を散乱させて全球平均気温を低下させる原因は、「対流圏に留まる火山灰」ではなく「成層圏で二酸化硫黄が元になってできる硫酸塩エアロゾル」ですので、答えは となります。

本問の解説:(d) について

(問題)成層圏でオゾンを破壊するフロンガスは、単位質量あたりの温室効果が二酸化炭素に比べて極めて高い。

→ 答えは です。

フロンガス は、成層圏でオゾンを破壊するだけでなく、温室効果ガスとしても非常に強い影響を持つ物質です。

フロンガスの大気中濃度は、二酸化炭素に比べて約100万分の1と非常に少ないですが、単位質量あたりの温室効果は二酸化炭素と比較して数百倍から1万倍以上にもなります。

このため、わずかな量でも地球温暖化に大きな影響を及ぼします。

さらに、フロンガスは化学的・熱的に安定しており、大気中での寿命が長いという特性を持っています。

そのため、フロンガスが大気中に放出されると、その影響が長期間にわたって続きます。

なお、フロンガスはかつて冷蔵庫の冷媒や溶剤などとして広く使用されていましたが、オゾン層破壊や地球温暖化への影響が明らかになったため、現在ではその使用が厳しく規制されています。

このような規制は、地球環境保護の観点からも非常に重要な取り組みとされています。

したがって、成層圏でオゾンを破壊するフロンガスは、単位質量あたりの温室効果が二酸化炭素に比べて極めて高いため、答えは となります。

以上より、本問の解答は、(a) (b) (c) (d) とする となります。

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • (c)の問題文「大規模な火山噴火により対流圏に大量に放出された【水山灰】は2、3年程度対流圏に留まり、その間日射を散乱させて全球平均気温を低下させる。」
    誤植で「水山灰」となっています。そういう物があるのかと考え込んでしまいました。

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