【第64回】2025年8月試験(学科専門試験)問12(適中率、空振り率、見逃し率)

問12解答速報アンケートの正答率 55.6%普通

ある民間気象会社が「日最大1時間降水量が 20mm 以上となる強い雨」の発生を予測するための指標(日最大1時間降水量と正の相関がある)を作成した。図は、夏のある 10 日間における、翌日を対象とした指標の予測値と実況(●:対象となる強い雨が発生、×:対象となる強い雨の発生なし)の経過を示したものである。この図について述べた次の文章の下線部 (a) ~ (c) の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の1~5の中から1つ選べ。ただし、空振り率、見逃し率は、全予報数に対する割合とする。

図に示された 10 日間について、日最大1時間降水量が 20mm 以上となる強い雨が発生するか・しないかを、翌日を対象とした指標の予測値を判定に用いて予想することとし、判定基準を変更した場合の予想精度の変化について調べた。判定基準を指標の予測値 50 以上から 40 以上に変更した場合、変更前と比べて、スレットスコアは (a) 0.125 低くなり、空振り率は (b) 0.2 高くなる。また、見逃し率を下げることを期待するならば、判定基準を (c) 高くすればよい。

   





解説

本問は、予報精度の評価(スレットスコア・空振り率・見逃し率)に関する問題です。

予備知識:分割表と検証指標の定義

予報の精度を評価するときは、下図のように「予報あり/予報なし」×「実況あり/実況なし」 の4つの組み合わせで事例を分類した分割表を作ります。

分割表予報
ありなし
実況ありA(適中)B(見逃し)A+B
なしC(空振り)D(適中)C+D
A+CB+DN(全事例数)

この A・B・C・D を使うと、本問で問われている3つの指標は次のように定義されます。

スレットスコア

スレットスコア = A / (A + B + C)

スレットスコアは、「現象あり」に着目した適中率です。

適中率 (A+D)/N とよく似ていますが、スレットスコアは分子からも分母からも D(実況「なし」かつ予報「なし」)を除いているのが大きな特徴で、これにより出現頻度の低い現象(強雨・降雪・雷など)の予報精度を、「なし」のケースに引きずられずに評価できます。

てるるん

例えば1年に数回しか起こらない現象を「いつも『なし』」と予報し続けると、全体の適中率((A+D)/N)はとても高くなってしまうんだよ!でも、それでは予報としての価値がほとんどないんだよね。

てるらん

だからスレットスコアは「なし×なし」を分母から外して、「あり」を当てる力だけを評価しているんだね!

空振り率

空振り率 = C / N

空振り率は、全予報数のうち「予報あり・実況なし」の割合です。

「あり」と予報したのに実際には起こらなかったケースが、どれくらいの頻度であるかを示します。

見逃し率

見逃し率 = B / N

見逃し率は、全予報数のうち「予報なし・実況あり」の割合です。

「なし」と予報したのに実際には起こってしまった、いわば予報を出し損ねたケースの割合です。

なお、空振り率や見逃し率の分母は、全事例数 N とする定義と、「予報あり」の数や「実況あり」の数とする定義があります。

本問の問題文には「空振り率、見逃し率は、全予報数に対する割合とする。」というただし書きが添えられていますので、本問では分母を N(全事例数)とする定義を使います。

てるるん

定義の分母が違うと数値も変わってしまうから、問題文のただし書きは必ず確認するんだよ!

本問の分割表を作ってみよう

下図は、夏のある 10 日間における、翌日を対象とした「日最大1時間降水量が 20mm 以上となる強い雨」の発生を予測するための指標(日最大1時間降水量と正の相関がある)の予測値と実況(●:対象となる強い雨が発生、×:対象となる強い雨の発生なし)の経過を示したものです。

下表は、図から読み取った 10 日間の指標の予測値と実況をまとめたものです。

日にち10
指標の
予測値
61422053417329446042
実況×××××

上表を見ると、10 日間のうち実況「あり」(●)が5日実況「なし」(×)が5日であることが分かります。

これは判定基準を変えても変わらない、実況側の事実です。

次に、判定基準を予測値 50 以上とした場合の分割表を作ります。

判定基準 50 以上ということは、指標の予測値が 50 以上の日は予報「あり」、50 未満の日は予報「なし」とすることです。

上表の予測値を見ると、
50 以上の日は 1日目(61)、4日目(53)、6日目(73)、9日目(60)の 4日
50 未満の日は 2日目、3日目、5日目、7日目、8日目、10日目の 6日 となります。

これを実況と組み合わせると、下表のようになります。

判定基準 50予報
ありなし
実況あり325
なし145
4610

同じように、判定基準を予測値 40 以上にした場合は、
40 以上の日が 1日目(61)、2日目(42)、4日目(53)、5日目(41)、6日目(73)、8日目(44)、9日目(60)、10日目(42)の 8日
40 未満の日が 3日目(20)、7日目(29)の 2日 となります。

実況と組み合わせた分割表は下表のとおりです。

判定基準 40予報
ありなし
実況あり505
なし325
8210
てるらん

判定基準を 50 から 40 に下げると、それまで「なし」と予報していた日が「あり」に変わるんだね!

てるるん

そのとおり!具体的には 2日目(42)、5日目(41)、8日目(44)、10日目(42)の4日が、「予報なし」から「予報あり」に移動するんだよ!それに合わせて、A・B・C・D の値も大きく変わるんだよ!

この2つの分割表を使って、(a)〜(c) を順番に検討していきましょう。

本問の解説:(a) について

(問題)判定基準を指標の予測値 50 以上から 40 以上に変更した場合、変更前と比べて、スレットスコアは (a) 0.125 低くなる

→ 答えは です。

スレットスコアの定義式(スレットスコア = A / (A + B + C))を使って、それぞれの値を計算します。

判定基準 50 のスレットスコア

判定基準 50予報
ありなし
実況あり325
なし145
4610

上表より、A=3、B=2、C=1 ですので、

スレットスコア50 = 3 / (3 + 2 + 1) = 3 / 6 = 0.5

判定基準 40 のスレットスコア

判定基準 40予報
ありなし
実況あり505
なし325
8210

上表より、A=5、B=0、C=3 ですので、

スレットスコア40 = 5 / (5 + 0 + 3) = 5 / 8 = 0.625

判定基準を 50 から 40 に変更した場合、スレットスコアは 0.5 → 0.625 と変化していますので、その差は 0.625 − 0.5 = 0.125 となり、0.125 高くなる ことが分かります。

てるらん

問題文の「0.125」という数字は合っているけど、上がるか下がるかがなんだね!

てるるん

そのとおり!判定基準を下げたことで「予報あり」と判断する日が増え、見逃し(B)が減って適中(A)が増えたから、スレットスコアは上がったんだよ!

したがって、判定基準を指標の予測値 50 以上から 40 以上に変更した場合、変更前と比べて、スレットスコアは「0.125 低くなる」ではなく「0.125 高くなる」が正しいので、答えは となります。

本問の解説:(b) について

(問題)判定基準を指標の予測値 50 以上から 40 以上に変更した場合、変更前と比べて、空振り率は (b) 0.2 高くなる

→ 答えは です。

空振り率の定義式は 空振り率 = C / N でしたので、それぞれ計算します。

判定基準 50 の空振り率

判定基準 50予報
ありなし
実況あり325
なし145
4610

上表より、C=1、N=10 ですので、

空振り率50 = 1 / 10 = 0.1

判定基準 40 の空振り率

判定基準 40予報
ありなし
実況あり505
なし325
8210

上表より、C=3、N=10 ですので、

空振り率40 = 3 / 10 = 0.3

判定基準を 50 から 40 に変更した場合、空振り率は 0.1 → 0.3 と変化しており、その差は 0.3 − 0.1 = 0.2 となり、確かに 0.2 高くなる ことが分かります。

てるらん

判定基準を下げると、「予報あり」と判断する日が増えるから、その分だけ外して「空振り」になる日も増えるんだね!

てるるん

そのとおり!「予報あり」のハードルを下げると、当たる日も増えるけれど、外す日も増えてしまうんだよ!

したがって、判定基準を指標の予測値 50 以上から 40 以上に変更した場合、変更前と比べて、空振り率は「0.2 高くなります」ので、答えは となります。

本問の解説:(c) について

(問題)判定基準を指標の予測値 50 以上から 40 以上に変更した場合、変更前と比べて、スレットスコアは 0.125 高くなり、空振り率は 0.2 高くなる。また、見逃し率を下げることを期待するならば、判定基準を (c) 高くすればよい。

→ 答えは です。

分割表予報
ありなし
実況ありA(適中)B(見逃し)A+B
なしC(空振り)D(適中)C+D
A+CB+DN(全事例数)

見逃し率の定義式は「見逃し率 = B / N」です。

ここで B は「予報なし・実況あり」、つまり「『なし』と予報したのに実際には起こってしまった」ケースの数です。

見逃し率を下げるには、この B の値を小さくすればよい ということになります。

B が小さくなるためには、「予報なし」と判断する日が減ればよい、すなわち「予報あり」と判断する日を増やすこと、判定基準を低く(緩く)することが効果的です。

実際に、本問の数値で確かめてみましょう。

判定基準 50 の見逃し率

判定基準 50予報
ありなし
実況あり325
なし145
4610

参考表3より、B=2、N=10 ですので、

見逃し率50 = 2 / 10 = 0.2

判定基準 40 の見逃し率

判定基準 40予報
ありなし
実況あり505
なし325
8210

参考表4より、B=0、N=10 ですので、

見逃し率40 = 0 / 10 = 0

判定基準を50 から 40 に下げたことで、見逃し率は 0.2 → 0下がっていることが分かります。

逆にいえば、判定基準を高くすると「予報あり」と判断する日が減るので、見逃し(B)が増えてしまい、見逃し率は上がってしまいます。

てるらん

「あり」のハードルを上げると、ちょっと怪しい日は「なし」と予報しちゃうから、本当は起こる日まで取りこぼしてしまうんだね!

てるるん

そのとおり!見逃し率を下げたいなら、「あり」のハードルは低くして、少しでも怪しい日は「あり」と予報する戦略になるんだよ!

【補足】空振り率と見逃し率はトレードオフの関係

ここで、問題 (b) と問題 (c) の結果を見比べると、面白い関係に気づきます。

判定基準を 50 → 40 に下げたとき、

  • 空振り率:0.1 → 0.3 と 上昇
  • 見逃し率:0.2 → 0 と 低下

このように、判定基準を緩めると見逃しは減るけれど空振りが増え、判定基準を厳しくすると空振りは減るけれど見逃しが増えるという、トレードオフの関係 があります。

てるらん

見逃しを減らしたい」と「空振りを減らしたい」の両方を同時には実現できないんだね!

てるるん

そのとおり!だから実際の予報業務では、その現象が「見逃したらどれくらい困るか」と「空振りしたらどれくらい困るか」のバランスを考えて、判定基準を決めるんだよ!例えば災害につながる強い雨の予報なら、多少空振りしてでも見逃しを減らす方向にする、というように使い分けるんだよ!

したがって、見逃し率を下げるためには判定基準を「高く」ではなく「低く」すればよいので、答えは となります。

以上より、本問の解答は、(a) (b) (c) とする となります。

ここに書いてあるよ
¥3,080 (2025/02/22 07:10時点 | Amazon調べ)

書いてある場所:ー


書いてある場所:ー


書いてある場所:P304〜320(予報精度評価)


書いてある場所:P452〜463(予報精度の評価)

備考

試験問題は「一般財団法人 気象業務支援センター」様の許可を得て掲載しています。

当記事の解説は「一般財団法人 気象業務支援センター」様とは無関係ですので、情報の誤りや不適切な表現があった場合には、お問い合わせからご連絡ください。

また、当記事に掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

本問と同じ分野の問題

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次